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【教育動向】高専の「意外」な実力 就職だけでなく進学も
2012(平成24)年4月に開かれた政府の国家戦略会議では、大学の統廃合の推進や、小・中・高校の「6・3・3制」の見直しなど、民間議員などから大胆な提案が出され、マスコミなどでも話題となりました。そのなかで、大学とは逆に増設の必要性が強調されたのが、高等専門学校(高専)です。しかし高専は、学校数や学生数の規模が小さいこともあり、その存在や教育内容について一般的にはあまり広く知られていないのが実情です。大学以上の評価を集めた高専とは、どんな学校なのでしょうか。
高専は、名前だけを見ると「専門学校の一種」と思われるかたもいるでしょうが、まったく違う教育機関です。中学校卒業者を対象に5年間の一貫教育を行う学校で、技術者養成を目的にして「ものづくり」に特化した実践的教育を行うのが特徴です。中堅技術者の養成という産業界の要望を受けて1962(昭和37)年度にスタートし、2011(平成23)年度は全国で57校(国立51校、公立3校、私立3校)が設置されています。いわば高校と短期大学を併せたような教育機関であり、卒業すると「準学士」の称号が得られます。
社会的にはあまり知られていない高専ですが、その大きなポイントは何と言っても就職率の高さでしょう。今春卒業者の就職内定率(2012<平成24>年2月1日現在)も大学の80.5%に対し、高専は98.0%。長引く不況のなかでもほぼ100%に近い就職率を誇ってきており、就職関係者の間では、以前から高専は「不況知らず」と言われてきました。実習や実験を中心にした5年間一貫の実践的教育を行う高専に対する企業の評価が大きいことがうかがえます。
しかし、高専の魅力は就職だけではありません。もう一つのポイントは、大学(学部)への編入者や大学院進学者が増加傾向にあることです。高専を卒業すると、大学3年生へ編入できます。また、高専5年間の課程に加えて専攻科(2年間)を修了すると、大学院への進学が可能になります。2011(平成23)年度には高専卒業者の42.2%が大学や専攻科に進学しており、進学者の多くが国公立大学の工学部などに進んでいます。大学院関係者の間でも、高専の専攻科修了者に対する評価は非常に高いと言われています。
このように就職だけでなく、大学・大学院への進学という面でもメリットがある高専ですが、高専関係者の間では、中堅技術者養成という伝統を踏まえて、大学・大学院進学に批判的な意見もあるようです。しかし多くの高専が、少子化による学生減少への対策として専攻科の充実、英語など語学教育の強化などを図っており、大学編入学・大学院進学にも力を入れています。
ただ、中学校卒業時に技術者教育を受けるという進路選択を迫られること、高専の多くが原則として寮制(寄宿舎)を基本としているため、中学校を卒業してすぐに家族と離れなければならないことなどを課題に挙げる声もあり、最近では学生のメンタルヘルスの充実を図る高専も増えています。
(提供:Benesse教育情報サイト)
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