社説:中韓との防衛交流 ぎくしゃくは残念だ
毎日新聞 2012年05月23日 02時32分
今月13日の日中首脳会談では、温家宝中国首相が新疆ウイグル自治区と尖閣諸島を取り上げ「中国の核心的利益と重大な関心を尊重」するよう発言した。「核心的利益」とは中国が台湾やチベットなどに言及する場合の表現である。ウイグルは「核心的利益」、尖閣は「重大な関心」と使い分けたという見方があるが、野田佳彦首相が「中国の海洋活動が日本国民の感情を刺激している」とクギを刺したのは当然だ。
中国はまた、亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」代表大会が東京で開催されたことに強く反発している。こうした意見対立が国防当局者の訪日中止の理由だとしたら行きすぎではないか。対立の芽を摘むためにも両国は対話によって互いの立場に理解を深めるべきだ。
韓国の場合は、いわゆる従軍慰安婦問題など過去の歴史に照らし日本との防衛交流に抵抗感のある世論への配慮があったとみられている。歴史認識問題というトゲを完全に抜くことは難しいが、それを乗り越えて日韓が安全保障での協力を進めることは、両国だけでなく東アジア全体の平和と安全にとって必要だろう。
そのためにも、日本は中韓との国防政策の透明化や信頼醸成を国家戦略の重要な柱の一つに据えるべきである。摩擦が生じるたび対話が閉ざされる現実はいびつだ。中国や韓国もそれを自覚してほしい。