1年4カ月余かけてグリーンランドからカナダ、アラスカと北極海沿いに約1万2千キロの単独犬ぞり旅行に挑んでいた冒険家植村直己さん(35)は、目的地であるベーリング海峡沿いの町コツビューに5月8日(現地時間)無事ゴールインした。
植村さんは登山家で日本山岳会員。1966年のアルプス・モンブランを皮切りに、アフリカのキリマンジャロ、アンデスのアコンカグア、アラスカのマッキンレーを次々に単独登頂、日本山岳隊員としてエベレストにも登頂しており、世界初の五大陸最高峰征服の記録も持っている。
74年12月28日、グリーンランド西岸、北緯70度地点のゲゲルターク村を犬12匹とともに出発、零下50度という極限状況と闘いながら、オーロラの下をひとりぼっちの旅を続けた。昨年6月12日、カナダのエスキモー村ケンブリッジベイに着き約半年間夏を過ごした。同年12月15日旅を再開、犬の死や食糧不足などの危機を乗り越え、ついに「冒険野郎」の業績に新しい1ページを加えた。
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現地での生活は完全なエスキモー式。アザラシ、雷鳥、カモなどの生肉をかじった。「日本の食べ物より、生肉の方がずっと栄養価が高い」という植村さんは、出発前60キロだった体重がいま65キロ。「生きてアラスカにたどりつけるとは思っていなかった。零下51度の時もあった。自分でもよくやったと思う」。旅を振り返りながら、そこは世界五大陸の最高峰を全部登った山男だ。白クマが近づいてきたときは、引き金に指をあてたライフルを左手に、8ミリカメラを右手に持って「対決」したこともあるという。
セルフタイマーで釣りをしている姿を自作自演で撮影したフィルムなどの整理や、原稿書きなど、これからはホテルの「かん詰め生活」が待っている。
「これで自信がついた。次は、念願の南極単独横断を狙いたい。みなさんのご支援をお願いします」。この山男が、平凡な家庭生活に戻る日はまだである。
16日には1年半ぶりに帰国。ほおは凍傷で真っ黒。アラスカまで出迎えた公子夫人と一緒に元気いっぱいタラップを降りた。
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