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【社会】

保安院、安全委に表明要求 「耐震 旧指針でも問題なし」

 経済産業省原子力安全・保安院が二〇〇六年四月、原子力安全委員会に対し、古い耐震指針に基づき建設された原発でも、安全性に問題はないと表明するよう要求していたことが分かった。直前に北陸電力志賀原発(石川県)の運転差し止め訴訟で、旧指針の不備を理由に北陸電が敗訴しており、悪影響が全国の原発に広がるのを避けようとしたとみられる。

 金沢地裁は〇六年三月二十四日、「旧指針は実際に起きた地震の観測結果と合わない」と志賀原発2号機の運転差し止めを命令した。保安院によると、直後の四月、A4判二枚分の文書を安全委員会に出した。当時の訴訟担当課長が作り、上司には報告していなかったという。

 文書は「旧指針でも耐震性に問題はない」との見解を表明するよう安全委に要求。表明がないと、立地自治体やマスコミの批判が激しくなる▽国会でも原発建設を認めた責任を追及される−などとし、「安全委の有識者はたびたび証人出廷を強いられる」と、安全委を半ば脅すような文言もあった。

 安全委は同年九月に新指針を決定。その際に「指針が改定されたからといって、既設施設の設置許可は無効にならない。安全審査をやり直す必要はない」との見解を示した。

 その後の〇七年十月二十六日、中部電力浜岡原発の運転差し止め訴訟で静岡地裁は「旧指針は信頼できる」と住民側の訴えを退けた。志賀原発訴訟は二審で北陸電力が逆転勝訴し、最高裁で確定した。

 保安院の森山善範原子力災害対策監は「中立でないと誤解される記述はあるが、訴訟と文書は無関係だ」と強調した。

 安全委の担当者は「保安院は志賀原発訴訟のことも考えていたのではないか。委員会としては、保安院の要求とは関係なく見解をまとめた」と述べた。

 

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