トップページWEB特集

WEB特集 記事一覧

  • 読み込み中

RSS

WEB特集

“景気回復”ってホントかな?

5月17日 23時10分

竹之下茂記者

「消費が景気を押し上げ?」「そんなに消費が良くなってきているのか?」と首をかしげたくなる人も多いと思います。
しかし、今、消費の現場では、ちょっとした変化が起きているのです。
ことし1月から3月のGDP=国内総生産の伸び率が年率に換算してプラス4.1%と、3期連続のプラスとなりました。個人消費がGDPを押し上げています。
日本経済は本当に回復に向かっているのか、景気の動きや民間企業の取材経験が豊富な経済部の竹之下茂記者が解説します。

消費が景気を押し上げ?

今回、年率で4%を超える高い成長率となったGDP。
およそ6割を占める個人消費が1.1%の増加で4期連続のプラスとなり、全体を押し上げました。

ニュース画像

大きく貢献したのが自動車販売です。燃費などの基準を満たしたエコカーに対する補助金制度が復活した効果などで、乗用車の販売台数が大幅に伸びました。
また、去年の東日本大震災のあとの自粛ムードの反動もあり、旅行やスポーツといったサービス関連への支出が増えたことも下支えしました。
では、消費者の財布のひもは緩んでいるのか?。スーパーやデパートなどの経営者に話を聞いてみますと、「いや、決して緩んでいない」というのが大方の見方です。
所得が伸びないなかで、無駄な支出を抑えて低価格の商品を求める「節約志向」は依然として根強いといいます。
ただ、そういうなかでも消費の現場では、ちょっと明るい動きが出ているというのです。

プチぜいたく

東京・池袋にあるデパートの食品売り場、「デパ地下」を取材しました。
私のような40歳近いサラリーマンの男性にはちょっと高いと感じる、1000円を超える弁当がよく売れているというのです。
これまでは800円前後の商品が売れ筋でしたが、今は高級和牛などを使った高級弁当に人気が集まっているといいます。

ニュース画像

先月1か月間で1000円を超える価格の弁当の売り上げは、前の年の同じ月と比べて10%近く増加。購入した女性は「普段は節約しているが、きょうは自分へのご褒美のつもりで1260円の弁当を奮発して買った」と話していました。
なぜ、少し高めの商品の人気が高まっているのか。
訪れた客にインタビューすると、たまにはちょっとしたぜいたくを味わいたいという声が聞かれました。

ニュース画像

西武池袋本店の竹内直之さんは「震災以来、客の自粛ムードが続いていたが年明けから客の買う単価が上がってきている。月に一度、週に一度のぜいたくをしようという人が増えていると感じている」と話していました。
ふだんは節約していても、たまにはちょっとしたぜいたくを味わう「プチぜいたく派」が増えているようです。

スポーツカーが売れている!

今回、消費を押し上げた自動車販売。
もちろんエコカー補助金の効果が大きく販売につながりました。しかし、エコカー補助金の対象外の車も売れているのです。
その一つがスポーツカー。
トヨタ自動車が富士重工業と共同開発してこの春に売り出した新型のスポーツカーに予想を大きく上回る注文が寄せられています。

ニュース画像

注文の多くは300万円近くする最上級グレード。今、注文しても納車はことし10月以降と、半年待たないと手に入りません。
メーカーは「走り」と「デザイン」にこだわったといいます。
スポーツカーといえば、若者のイメージを持つ方もいると思いますが、この車は若者から比較的年配の人たちまで幅広い年齢層で人気を集めています。
特に若い頃にスポーツカー人気に触れ、今、比較的お金に余裕ができた中高年の購入者が多いといいます。

ニュース画像

こうした現象は、趣味などの好きなものにはお金を惜しまない「こだわり消費」と言われています。
こうした「こだわり消費」は、海外の高級腕時計や高級紳士靴などの販売の好調さにも表れています。
震災後の自粛ムードなどで購入を我慢していた人も、震災から1年がたち、消費意欲が戻ってきているようです。
デパートの担当者は「日常の生活のなかで、自分のこだわりであるとか、より豊かにしたいというようなところに積極的にお金を投じる傾向が強くなっている」と分析しています。

エコ意識も貢献

もう一つ消費を押し上げているのが、電力不足への懸念を背景にした「エコ」意識の高まりです。
家電量販店を取材しますと、節電や節水など「エコ」機能が優れた家電が売れているというのです。

ニュース画像

特にこのところ好調なのが、リビングなどの天井に取り付ける「LEDシーリングライト」と呼ばれる照明です。
価格は従来の蛍光灯に比べ3倍程度高いということですが、消費電力を抑えることができるうえ、長期間交換せずに使用することができる経済性、それに明るさや光の色合いをリモコン一つで自由に調整できる便利さなどがうけているといいます。
市場調査会社「GfKジャパン」が全国の家電量販店を対象に行った調査によりますと、シーリングライト全体のことし1月から3月の販売金額は、前の年の同じ時期に比べておよそ2.1倍に拡大。5万円を超える高額な商品もよく売れているということです。

ニュース画像

本格的な回復に向かうか

消費の現場を取材すると、これまでのように節約一辺倒ではなく、質の良いものやこだわりがあるものには、お金を使うという人たちが増えてきていることが分かります。
でも、消費の拡大が続き、日本経済は本格的な回復に向かうのでしょうか?。
日本経済を取り巻く環境は厳しさを増しています。ギリシャの政局混乱で再びヨーロッパの信用不安の拡大が懸念されています。去年のよう歴史的な円高に再び見舞われるリスクも低くありません。取材したあるエコノミストは「あちこちに地雷が埋まっている感じだ」と話していました。
震災からの復興需要も今年度の後半にもピークに達するという見方もあります。その効果が持続しているうちに、確実な景気回復につなげることができるのか。まだまだ日本経済は予断を許さない状況が続くと見たほうがいいようです。