日本麻酔科学会員の麻酔科医が国内外の専門誌に発表した論文に捏造(ねつぞう)の疑いがあるとして、学会が調査していることが23日、わかった。対象は共著のものを含め23の学術誌に掲載された193の論文。この医師が准教授として在籍していた東邦大学は2月、8本の論文に関する研究について倫理規範違反があったとして、諭旨退職処分にした。
学会が調査しているのは、元東邦大学准教授の藤井善隆医師の論文。海外の複数の専門誌が「データに捏造の疑いがある」との論説を掲載したことを受け、学会が3月に調査特別委員会を設置。藤井医師が1991年以降に在籍した医療機関に聞き、論文の根拠となった症例が実在したか調べている。藤井医師は不正を否定しているという。
捏造の疑いを2月に指摘した英国の専門家の論説によると、藤井医師が91〜2011年7月に発表した麻酔薬の投与量などに関する論文の169の試験データを統計的に分析したところ、対象者の体重や年齢、身長、血圧などの数値が特定の範囲に偏っていた。通常起こりうる分布と大きく異なっていた。
東邦大学も藤井医師が在籍中に発表した9本の論文について調査。うち8本で、義務づけられている病院内の倫理委員会の承認を得ていなかった。藤井医師は事実を認め、8本の論文については撤回している。