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夏の電力需給対策 節電覚悟、関西に問いたい

(2012年5月23日午前7時12分)

 今夏の電力不足に備え、政府は企業や家庭に約3カ月間の節電を求める電力需給対策を決めた。関西電力管内は2010年度比で15%と厳しい節電目標を設定。供給余力のある北陸電力管内でも、節電で浮いた分を関電などに融通するため5%の節電を求めている。関西電力大飯原発3、4号機が再稼働の有無にかかわらず、関西圏の電力需給はぎりぎりの状態であり、真剣に節電・省エネ対策を進める必要がある。

 関西の電気の半分をまかなってきた県内の原発は2月ですべて停止した。再稼働しなければ夏場は深刻な電力不足に陥ることは早くから分かっていた。しかし、政府は再稼働に向けた取り組みでは腰が定まらず、需給対策の具体化も後回しになってきた。

 危機感に欠ける点では、電力消費地である関西圏の動きも同じではないか。関西広域連合や大阪府市本部は政府や関電が示す需給見通しに異を唱え、自ら検証したものの、圧縮できるという説得力ある根拠は示せなかった。脱原発依存のかけ声ばかりで、現実的、具体的な代替エネルギー確保や需要抑制策は進んでいない。全国で最も原発に依存する地域だったという自覚に乏しかったのではないか。

 節電を促すメニューとして関電は、企業向けには節電分を入札で買い取る「ネガワット取引」、家庭向けではピーク時の電力料金を高くする新プランなどを導入する。関西広域連合も住民や企業に節電への協力を呼びかける方針だ。しかし、15%という高い目標達成を危ぶむ声もある。

 昨夏の節電の実績をみると、東京電力管内では15%を上回る節電が行われたが、関電管内では10%以上の目標に対して企業が9%、家庭は4%にとどまった。電力使用制限令が出ていたか、事業者からの要請にとどまったかという違いはあるにしろ、関西に節電意識が定着しているとは言いがたい。

 大阪市の橋下徹市長は電力需給が逼迫(ひっぱく)する時期だけ大飯原発3、4号機を再稼働する案を示したが、安全性を疑問視する姿勢と矛盾するし、あまりにご都合主義だ。潜在的なリスクを抱えながら長年にわたり関西へ電力を供給し、今まさに再稼働問題で揺れ動く原発立地の自治体、住民からは、消費地のエゴとしか映らないだろう。

 節電・省エネの知恵と工夫を発揮して今夏を乗り切るだけでなく、中長期的なエネルギー構成のあり方を多くの人が考える機会にしてほしい。

 停電の可能性があるということ自体が企業活動にとっては大きなリスクで、生産拠点を移す動きがある。火力発電での代替が続けばコストがかさみ、再生可能エネルギーへの転換にも多額の投資が必要だ。社会としてどこまで受容できるのか、冷静で幅広い議論をすることが、今後の原発のあり方を問い直すことにもつながる。

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