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海の魚 セシウム濃度の差なぜ? 餌と生息環境、影響も

産経新聞 5月20日(日)7時55分配信

海の魚 セシウム濃度の差なぜ? 餌と生息環境、影響も
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(写真:産経新聞)
 東京電力福島第1原発事故から1年以上が経過。放射性物質を含んだ汚染水の新たな流出は限定的とされているが、海は有効な除染技術が確立されているとは言えず、海の汚染状況についてはいまだ見えないところも多い。これまでの検査では、放射性セシウムの濃度が低くなった海水魚がある一方、4月から適用された食品中の放射性セシウムの新基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超え、出荷停止の指示を受ける海水魚も相次いでいる。こうした濃度の差はなぜ起こるのか。(油原聡子)

【表で見る】 海の魚の出荷自粛状況

 茨城県は18日、約1年にわたり、出荷販売の自粛を要請していた県央部海域のコウナゴ(イカナゴの稚魚)について、自粛を解除したと発表した。検査した結果、最大で6・7ベクレルだったという。

 同県では、昨年4月に北茨城市沖で採取したコウナゴから当時の暫定基準値(1キロ当たり500ベクレル)を上回る526ベクレルを検出。今年も漁期を迎えたため、各海域で検査を実施しており、すでに北部海域は4月17日に自粛を解除している。

 残る南部海域でも、検査で安全が確認されれば順次解除する方針だ。

 水産庁の担当者は「コウナゴは海の表層に生息する魚。放射性物質は時間とともに、下の泥に吸着するため、表層の海水の濃度が薄まったのが影響しているのではないか」と話す。ほかにマイワシなど表層の魚は低下傾向にあるという。

 一方で、放射性物質の濃度が低下傾向にない海水魚もある。4月以降、新基準値を上回り、政府の出荷停止の指示を受けたのは、宮城や茨城のスズキ、茨城のヒラメやシロメバルなど。5月以降も、岩手や宮城のマダラなどが出荷停止となった。

 放射線医学総合研究所の青野辰雄調査役(放射生態学)は「水産庁の調査結果を見ると、放射性セシウム濃度が低下する傾向にない魚類は、原発に近い福島、茨城や宮城周辺の海域のスズキやヒラメ。海中には放射性セシウムが堆積しやすい場所がある」と話す。

 日本近海は、かつての核実験などの影響で、もともと海水や海底土中に微量の放射性セシウムが含まれている。原発周辺海域の現在の放射性セシウム濃度は事故直後に比べ低下したが、海水で1リットル当たり数ミリベクレルから数十ミリベクレル、海底土で1キロ当たり数ベクレルから数百ベクレルと、事故前と比較すると数倍から数百倍になった。魚の餌となるプランクトンなどからも放射性セシウムが検出されているという。

 水産総合研究センターの森永健司・研究開発コーディネーターは、魚の放射性物質の濃度について「浅い所の底に比較的定着する魚や、魚食の魚のほうが高い傾向にある。また、汚染されていない遠くまで回遊するような魚は低い」と説明する。

 さらに、「スズキは、川の水と海の水が混ざる所で餌をとるため、分布域が汚染の高い所と重なっているのではないか」と指摘。「ヒラメは海の底に生息し、上を通った魚を食べるので高くなるのではないか」と話している。

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最終更新:5月21日(月)10時30分

産経新聞

 

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