亀岡事故1ヵ月 遺族ら法改正求め連携
京都府亀岡市で集団登校中の児童らが軽乗用車にはねられ、10人が死傷した事故は23日、発生から1カ月を迎える。被害者の全6家族は、今も癒えない心の傷を抱えながら、真相を究明し、無免許運転による重大事故に危険運転致死傷罪を適用する法改正を訴えるため、手を携え始めている。
■交流サイトで「痛み」つづる 署名や陳情検討
「そあらはげんきになったよ はやくままにあいたいよ」。事故で命を絶たれた松村幸姫さん(26)に向けて、負傷した長女で小学1年の蒼愛(そあら)さん(6)がつづった手紙が画面に映る。
幸姫さんの兄中江龍生さん(28)が作成した会員制交流サイト「フェイスブック」のページ。京都地検が開いた説明会の感想や幸姫さん一家の写真を公開している。ネットを通じて被害者の痛みを伝え、法整備への弾みをつけるためだ。
「今回の無免許運転は誰が見ても『危険運転』だ」。運転していた少年に危険運転致死傷罪を適用せず、自動車運転過失致死傷容疑などで家裁送致した地検の決定に異論を唱える書き込みを見て、父親の美則さん(48)は励まされた。
事故以来、取材や警察の事情聴取で睡眠さえままならない。家業の建設業は滞り、預金を取り崩す毎日。「生活は180度変わった。でも、誰でも被害者になりうる。これ以上、同じ思いをする人を増やしたくない」
3年の横山奈緒さん(8)を亡くした父親の博史さん(37)も「遺族ばかり苦しい思いをするのは納得できない」と声を振り絞る。
被害者家族は、危険運転致死傷罪の適用拡大を目指し法改正を求めており、今後の活動として、署名集めや国会議員への陳情を話し合っている。今後、家裁が検察官送致(逆送)した場合、少年に対し危険運転致死傷罪での起訴を求める署名活動も検討中だ。
2年の小谷真緒さん(7)を亡くした父親の真樹さん(29)は、娘の最期の様子を知るため、搬送先病院の医師と会い、近隣の住民宅を訪ね歩いて情報を集めている。事故で負った生々しい傷さえ、つぶさに聞き取った。「娘がどんな風に必死に生きようとしたか知ることが、僕の務めだと思う」
被害者の全6家族は20日夜、事故状況を正確に把握したいという願いから、現場近くの集会所に集まり、近隣住民と対面した。懸命に救助に当たってくれた住民に感謝を伝え、「助けてもらっている時の状況は」「どんなささいなことでも教えてほしい」と問いかけた。住民は「けが人の意識が遠のき、手をたたき続けた」などと記憶をたぐった。
自ら動き、社会に声をあげ始めた家族たち。一方、小谷さんは遺族としての複雑な心境を語る。「法整備で今後の事故抑止につなげたい思いは、もちろんある。だが、今は正直、加害少年の罰が少しでも重くなることに心が向く」
【 2012年05月23日 09時01分 】