都会の景色から田舎の景色に移り変わっていくにつれ、どういうわけかテンションが下がっていく。
おかしい、チーはこの絶景を見てなんとも思わないのか。
僕はめちゃくちゃ楽しい気分だぞ。
すると、ほどなくして原因が解明された。
チーは生まれついての田舎育ちのため、こういう景色には逆に慣れており、心がまったく躍らないのだ。
高校卒業まで大阪で育ち、以降も東京で15年以上生活している僕とは日常の心象風景が大きく違う。
アスファルトの道路や高層ビル、街にひしめく人混みばかりを見て育った僕と、美しい山々や湖、牧歌的な田園風景ばかり見て育ったチー。
田舎の景色に新鮮さを覚えるのは、当然僕のほうだ。
しかもチーは田舎の退屈さに辟易して、東京に出てきた女性である。
そう考えると、富士五湖の周辺はチーにとって退屈だった時代を思い出させる、言わばマイナス要因にもなりえる。
少なくとも癒されることはないだろう。
僕の独善的な勘違いだったのだ。
それは河口湖畔に到着してからもしかりだった。
昔からなぜか水辺が好きな僕は、ポンポンを連れて大はしゃぎするのだが、チーのテンションは依然として低いままだ。
「見て見て、いい景色だよ! 」。
僕がそう促しても、チーは「普通じゃない? 」と一蹴する。
なんでも子供のころから自然に慣れ親しんできたため、多少の絶景では驚かないらしい。
こうして僕らは、微妙な消化不良を感じながら河口湖をあとにした。
もしかしたらチーとのドライブは東京都内で良かったのかもしれない。
それを証拠に、夜に東京に戻って以降のチーは、渋谷や六本木を車で走りたいと一転して目を輝かせたのだ。
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