人工衛星と称する北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射実験は、またもあえなく失敗に終わった。しかし、日本はこれからも注意しなくてはならないと大前研一氏は指摘する。以下は、大前氏の解説である。
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北朝鮮の立場から見れば、韓国やアメリカを攻撃するのは、やはり怖い。800発くらい保有しているといわれている短距離ミサイルをソウルに撃ち込んだら、韓国も先日発表した巡航ミサイルなどを使って即座に反撃に出て全面戦争になる。
アメリカに対しては届くミサイルが完成していないし、もし攻撃できたとしてもアッという間に何百倍もの反撃を受けて崩壊させられる。中国とロシアは、まだ友好国だとみなしている。
となると、残るのは日本だけである。北朝鮮は中距離ミサイルも300発ほど持っているといわれているが、その射程で狙える国というのも日本しかない。ところが、それに対して日本は何も備えていないのだ。
自衛隊法第76条は「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。
この場合においては、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律第9条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない」と定めている。
つまり、首相が自衛隊に防衛出動を命じて反撃する場合も、前述の武力攻撃事態対処法に基づいて「国会の承認」を得なければならないのだ。この原則自体は正しいと思うが、北朝鮮が問答無用でミサイル300発を撃ち込んでくるという時にのんびり国会を開いていたら、国会議事堂が消滅してしまうだろう。
※週刊ポスト2012年5月25日号