2月11日より、フランス・パリにある欧州最大の国立現代美術館ポンピドゥー・センターで「Planète Manga!」(「マンガの惑星」)と題したイベントが開催されている。「Planète Manga!」は、アジアのマンガ文化を紹介するというコンセプトのもと、ワークショップとアニメーション映画の上映を中心とするイベントだ。日本の京都精華大学や女子美術大学などの協力の下、「4コママンガ制作」や「同人誌制作」といったマンガに関連したものから、「殺陣の実演」や「紙芝居体験」など、日本文化を体験するワークショップが行われ、春休みや修学旅行中の小中学生を中心に楽しませた。また、萩尾望都、竹宮惠子、こうの史代といった3人の大物女性マンガ家たちそれぞれの講演も開催されるなど、盛り上がりを見せている。そんなフランスにおける “日本ブーム”を、マンガを中心とした文化的な側面から感じることができる当イベントを訪れ、今回のイベント開催の意図について関係者に話を聞いてみた。
ポンピドゥー・センターは、近現代美術作品およそ6万点を所蔵するほか、映画館や図書館なども併設し、世界中のアートファンの注目を集める文化芸術の総合施設。2007年には「BD REPORTERS」と題した企画展を行い、フランスのマンガであるバンド・デシネ(B.D.)の持つオリジナリティをアメリカンコミックや日本マンガと対比して展示した。
「今回の『Planète Manga! 』は、前回の企画展をさらに深化させ、アジアのマンガにフォーカスを当てたもの」と、企画責任者のBoris Tissot氏は語る。
「3人の女性マンガ家を講演に招聘したのは、日本マンガ界における女性マンガ家の多さを示すことが目的でした。フランスにもB.D.が古くから存在しますが、B.D.作家のほとんどが男性です。女性向けの作品が多く登場し、作家のすそ野が広い日本のマンガは、我々フランス人の目から見るととても興味深いのです」
さらに、Boris氏に、彼らから見たアジアマンガ、とくに日本マンガの特徴を尋ねると、「映像化作品の豊富さ」を挙げた。
「『絵』の連続であるB.D.に対して、マンガは映像の絵画化である」(Boris氏)と語るように、日本人にとってマンガ作品のアニメ化や映画化は当たり前のものとなっているが、これはB.D.にはあまり見られない特徴のようだ。同イベントでは、手塚治虫以前の無声アニメーションから『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』など、往年の名作や最新の話題作に至るまで、日本のアニメ映画を硬軟取り混ぜて幅広く紹介している。上映されるアニメーション映画のチョイスについて、Boris氏はこう話す。
「今まで自分が見てきたアニメーション映画の中から、子どもから大人まで楽しめる作品を中心に選びました。上映プログラムは、週ごとに『ロボット・サイボーグ』や『妖怪』といった日本文化を象徴するテーマを設定して上映しています。フランスでのマンガ・アニメブームはロボット作品から起こったという背景があり、ロボットアニメは今でも根強い人気です。また『妖怪』は、ジブリ映画などの作品の影響で、フランスでも『Yokai』として一般的になりつつあります。西洋の『お化け』と比べ、より“人間的”な日本の妖怪は我々フランス人にとってとても興味深いのです」
それを証明するように、同美術館内最大のスクリーンを使って上映された『もののけ姫』は、上映終了後スタンディングオベーションが起こるほどの盛況ぶりだったという。
また、ポンピドゥー・センター併設の公共情報図書館(BPI)では「Planète Manga!」をきっかけに2,500冊のマンガを収集し、イベント期間中に一般公開がなされた。これまでパリ有数の図書館であるにも関わらず、BPIにはB.D.やマンガの収蔵作品はほとんどなく、例外的に欧州最大級のマンガフェスティバルである「アングレーム国際マンガ祭」の受賞作を収蔵するにとどまっていた。今回のイベントをきっかけに、初めて本格的なマンガの所蔵に取り組んだBPIであるが、司書のGislaine Zanos氏の話によると、まだマンガに詳しい司書がおらず、今後の収集や公開については未定とのことだ。
収蔵作品の選定に協力したフランス唯一のマンガ喫茶である「Manga Café」の店長に、フランスのマンガ事情について尋ねてみると、
「フランスでの日本マンガの流行は、ほとんどが少年マンガ、しかも冒険ものに限られています。しかし、最近では青年マンガや少女マンガの出版も盛んになってきています。そこで、BPIでは、多様なマンガの存在を伝えることができるようなマンガを選びました」(Manga Café店長)
陳列の仕方についても工夫が施され、「フランスの書店では、日本マンガは作品名のアルファベット順に並べられていることが多いのですが、これでは同じジャンルや同じ作者のマンガでも離れた位置に並んでしまい、コアなファンでないと目的の作品を見つけることが難しかった。そこで、BPIでは、日本マンガを独自に『冒険』『スポーツ』『日常』など8つのジャンルに分類し、そのジャンルごとに棚を構成しました。こうすることによって、既存のマンガファンだけでなく、日常的にマンガを読まない図書館利用者にも手に取ってもらいやすくしました」(前出のZanos氏)。
その甲斐あってか、期間限定で設置されているBPIのマンガコーナーでは、若者を中心に、親子連れやカップルでマンガに夢中になっている姿が見られた。
毎年1,000タイトル以上のマンガが出版されるフランスは、日本に次いで世界で2番目のマンガ消費国だ。フランスで本格的にマンガの出版が始まり、およそ20年。日本のマンガは市場でもますます重要な位置を占めるようになり、公共図書館でも収蔵が始まるなど、さらなる社会への浸透を見せている。フランスへ渡航の予定がある方は、足を運んで現地のマンガ熱を感じてみるのはいかがだろうか。
(取材・文=坂井拓也)
●「Planète Manga!」
会期 :2012年2月11日〜5月27日
会場:フランス パリ4区 ポンピドゥー・センター
欧州最大の近代美術館「ポンピドゥー・センター」にて行われている「マンガ」をテーマにしたイベント。日本のマンガ紹介とともに、アジアのアニメーション上映にマンガのワークショップ、著名な制作者の講演が企画されるなど、多様な楽しみ方でアジアカルチャーを知ることができる。
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