新潟県庁からほど近い、信濃川沿いの広大な駐車場跡地約1万5000平方メートル(新潟市中央区新光町)が、昨年12月、駐新潟中国総領事館の移転・拡大計画のために買収された。
道を隔てて隣接する、ゴルフ練習場の管理運営会社支社長は「12月のある日、東北電力とNTTが来て、駐車場跡地の電柱を敷地の外に移転する工事を行った。予告すらなくウチの敷地内へも業者が来て、作業を始めたのには驚いた。今から考えると、新しい持ち主による要望だったのでしょう」と淡々と語る。
東京ドームのグラウンドより広い敷地には、業務棟や領事公邸、100人の宿泊が可能な宿舎が建つ計画という。電柱を外に追い出してまでこだわる“総領事館の青写真”は、とっくに準備されていたと推測できる。
件の土地の、売却までの動きもうさん臭い。登記簿上には、経営実態が不明瞭ながら「中国との関係が深い」企業の名前もある。が、中国への売買に関係したとされる企業の口は一様に重い。
新潟市も当然知っていた(水面下でおぜん立てした?)はずながら、「移転計画の是非については、最終的に国の判断に任せる」と、市長は責任逃れの答弁に終始している。
中国の総領事館移転・拡大計画に関して、小学校跡地が候補になった前回と異なり、県民や市民の反応はなぜか鈍い。新潟はそもそも、日中国交正常化を実現させた田中角栄元首相のおひざ元である。新潟県日中友好協会の名誉会長が県知事(2期目)で、地元財界関係者の多くが「中国との交流深化で経済を浮上させる」と、前のめり状態らしい。
「地方活性化、地域対策事業」との旗印のもと、北東アジア−中国・韓国・ロシア・北朝鮮に開放し、積極的に外国人を受け入れることで発展を目指すという「新潟州・新潟特区構想」は、地方分権を提唱する新潟県知事&新潟市長の共通する政策だという。県と駐新潟中国総領事館は、日本海横断航路の開通についても話を進めている。
が、対岸は中国が借地する北朝鮮の羅津港で、中国軍も駐留する。何より、中国は北朝鮮の金正恩体制−先軍政治を支持し続け、ミサイル発射予告に対する日米韓3国の反応に警戒すら示し、拉致被害者の奪還に協力することもなく、金正恩氏が朝鮮労働党第1書記に就任した際も「祝電」を送った友好国なのだ。
新潟、そして新潟港は近い将来、脱北者や闇労働者、工作員、覚醒剤、偽ブランドなどが入り込む拠点=中国の港となり、腐敗する道をたどっていくのだろうか。=おわり
■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。主な著書は「中国人の世界乗っ取り計画」「豹変した中国人がアメリカをボロボロにした」(産経新聞出版)など。