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(11)「警察に訴えられないようセックスで調教しようとした」身勝手な論理を展開

いくらセキュリティーが高いマンションに住んでいても隣人に強引に襲われれれば、ひとたまりもないことを印象づけた事件。なぜ東城瑠理香さんはターゲットにされたのか。検察官の星島貴徳被告への追及は続いた。

検察官「(空き部屋を挟んだ隣室の居住者が)どういう女性だと思っていましたか?」

星島被告「普通のOLだと思っていました。9階なので学生とは考え辛いですし」

検察官「9階だと、どうしてOLなんですか?」

星島被告「(最上階で)家賃が高く、私のような角部屋だと親の援助を受けているような人ではなく、金銭的にある程度余裕のある人だと思いました」

検察官「(初めて隣室の居住者の)女性を見た際は、女性はどこにいましたか?」

星島被告「916号室の扉の前にいらっしゃいました」

検察官「916号室は何人暮らしだと思っていましたか?」

星島被告「1人だと思っていました」

検察官「なぜ1人暮らしだと思ったのですか?」

星島被告「先ほども言いましたが、2人暮らしするような金銭的に節約されている方なら9階に住むのではないと…。女性で安全面を考えても7階や6階、5階でも十分だったので(1人暮らしだと思った)」

検察官「2人で住むことも可能なことは知っていましたか。賃貸契約書には2人暮らしは『可』になっているが…」

星島被告「私は2人で住むつもりはなかったので気にしていませんでした」

星島被告と東城瑠理香さんを結ぶ接点は、このほかになかったのだろうか。

検察官「3月中旬から4月の事件までの間、女性に会ったことはありましたか?」

星島被告「ないと思います」

検察官「女性について他に知っていることはありますか?」

星島被告「ありません」

検察官「名前や職業、年齢については知っていますか?」

星島被告「いいえ」

検察官「経歴や性格、家族構成については」

星島被告「知りません」

検察官「友人関係や趣味については…」

星島被告「いいえ。知りませんでした」

星島被告は単に手近な女性というだけで、瑠理香さんをターゲットにしていたことを検察官は印象づけようとしているようだ。安全面を考慮して選んだ最上階で、隣人にねらわれたという恐怖。傍聴席に座っていた瑠理香さんの遺族もうつむき、怒りに肩を震わせる。

検察官「その女性をどうしようと思ったのですか?」

星島被告「自分の部屋に連れてきて、性的快楽を与え続け、自分の思うようにしようとしました。自分ならできると思いました」

検察官「(東城さんを)何にしようと思ったのですか?」

星島被告「『性奴隷』です」

検察官「『性奴隷』とは何ですか」

星島被告「私とのセックスに依存し、私を必要に思うような女性です」

検察官「そのためには何をするつもりでしたか」

星島被告「セックスをして調教しようとしました」

検察官「どうやってセックスしようと思ったのですか」

星島被告「女性を自分の部屋に連れて行き、長い時間かけて調教しようとしました」

女性との交際経験のない星島被告は、アダルトビデオや成人漫画などから女性を本当に調教できると信じていたという。

検察官「どうやって自分の部屋に連れてこようとしたのですか?」

星島被告「女性の部屋に押し入って脅し、自分の部屋に連れてこようと考えました。それができると思っていました」

検察官「その(部屋に連れて行き、性奴隷にした)先は、どうなると思っていましたか?」

星島被告「恋人のようになれると考えていました。それ以上は深く考えていませんでした」

検察官「警察に訴えられるとは思わなかったのですか」

星島被告「思っていませんでした。そうならないように調教しようとしていました」

検察官は『星島被告がなぜ東城さんをねらったのか』という核心部分の追及に入る。

検察官「(調教する対象は)どのような女性が良かったのですか?」

星島被告「年齢が極端に高かったり、体格的に太ってられる人でなければ…」

検察官「だれでも良かったということですか?」

星島被告「はい」

検察官「では、なぜ916号室の女性をねらったのですか?」

星島被告「自分の部屋に一番近くて、1人暮らしだと思っていたので、自分の部屋に連れてくるのは難しくないと思いました」

検察官「他に理由はありますか」

星島被告「ありません」

結局は、手近な女性なら「だれでも良かった」と平然と答える星島被告。感情を必死で抑えているかのようにか細い声での受け答えが続く。

検察官「916号室の女性にねらいを定めたのはいつごろですか?」

星島被告「犯行の1週間前です」

検察官「何をしているときに決めたのですか?」

星島被告「マスターベーションをしているとき、仕事のイライラなどを考えて思い詰めるようになりました」

決意してから1週間が経過した4月18日の金曜日に犯行に及んだ星島被告。なぜ、この日だったのか…。

星島被告「普通のOLなら金曜日(の夜)から土曜日、日曜日と休みになり、3日間で調教ができるだろうと思った」

検察官「3日間で何をしようとしたのですか?」

星島被告「セックス」

検察官「(女性の)意思に反してでも(乱暴しようとしたのか)」

星島被告「そうです。乱暴して調教しようと思いました」

検察官「月曜日までだれにも気づかれないと思ったのですか?」

星島被告「1人暮らしと思っていたので(気づかれないと思った)」

検察官「失敗は考えなかったのですか」

星島被告「考えていなかったです。考えが欠落していたと思います。頭がおかしかったと思います」

脅し、連れ去り、乱暴…。3つの流れの中で星島被告は「連れ去り」が最もハードルの高いものと考えていたという。室内に入り込む方法は、大胆な手法を選択した。

検察官「(東城さんの)部屋に入り込む方法はいろいろ考えましたね」

星島被告「はい。ベランダから侵入しようと思いました」

検察官「他には」

星島被告「玄関から押し入るという考え方を思いつき、結局、それ以外考えませんでした」

検察官「実際にどのように玄関から入ろうと考えたのですか」

星島被告「女性が帰った瞬間をねらって入ろうと思いました。一番確実な方法だと考えました」

星島被告は、女性の帰宅を知る方法として9階の「エレベーターホール」や非常階段での待ち伏せも考えたという。だが、実際は自室の玄関内でドアに耳をあて、足音を聞いて確認していた。なぜ、外での待ち伏せは選択しなかったのか。

星島被告は「当日は雨で寒かった」

自分勝手な理由を延々と並べる星島被告に、傍聴席からは時折、ため息が漏れ、裁判官もあっけにとられ、呆然(ぼうぜん)と被告の顔をみつめていた。

⇒(12)ドアに飛びつき開けた瞬間「トウジョウ・ルリカが立っていた」