「生命とは存在し続けるがために多様化し、破局に備える。だが、死なず、老いず、ありとあらゆる生命の能力を持ち合わせ凌駕し、戦闘力に置いて比類無く、いかなる状況に置いても生き延びる知恵を持った者が存在するのならば、それもまた進化の一つの形と言えるだろう」
「それは異常だ。種の規範から外れている」 「だがこれも一つの結末だ。受け入れるしかない」 「しかしそれではあまりに…我々は踏み台に過ぎないと言うことになる」 「仕方あるまい。何故恐竜は滅んだ。隕石の激突が真の原因ではないよ。あれは種としての寿命が来ていたのだ。時代の覇者はただ一種しか存在できない。それが掟だ」 「それを認めることは出来ない。それを認めたら、我らは滅ぶしかない。最早猶予はない。奴は種ではない。ただの変異体だ。それは存在してはいけないものとして、処分するしかない」 「まだ彼がそうだと決まったわけではない。時間は未だ可塑性に満ち、不可逆でもあり得ない。彼が進化者だというのは、可能性の一つに過ぎない。現に彼以上の進化者の確率を持つ者も多数存在する」 「それでもそれは予想される最悪の未来だ。私はそれを許すわけには行かない」 「警告だけはしておこう。止めておきたまえ。存在を否定すれば、君は歪んでしまう。堕天する事になる」 「大丈夫だ。神は常に我らと共にある…」 「…人の存在が業を生むのか、業があるから人なのか。どちらにせよ、救いがたいな…」
Legi-on File12X
Cosmic seed
見たまえ。宇宙の終焉という一大イベントだ。宇宙が閉じるぞ。 宇宙が閉じていく? ビッグバンによって始まった宇宙も、やがて自らの重さに引かれて、中心部に向けて落ちていく。 星星が…砕けていく…。あ、あの恒星、爆縮を起こしましたよ。 寿命の尽きかけた赤色巨星が、重力波の影響を受けたんだ。あの大きさだと、自重に引かれて無限化するぞ。 あ…光が吸い込まれて…時間まで? ブラックホール…。 密度によって無限化した重力場…ブラックホールの中心部では、その密度によって時間軸も収束される。今あの中に吸い込まれたら、脱出するときには既に宇宙は閉じてしまいかねない。そうなったらいくら私でも助からないし助けられない。気を付けろ。 はい。…あ、あっちにも、こっちにも? ブラックホールの連鎖だ。これが第一の見物だ。 すごい。いくつものブラックホールが連なって…あ、二つのブラックホールが、弾きあって…くっついた!? 普通は重力場に弾かれあうブラックホールも、こうまで密度が上がってくると互いのシュバルツシルト半径が崩壊し、特異点融合を起こす。そしていったん特異点融合を起こしたブラックホールは、超巨大ブラックホールとなり、辺りの物質全てを吸い込みながら、宇宙の中心に向かって落ちていく。 無くなっていく。なにも…。 そして見ろ。宇宙のあちこちで同様の現象が起こっている。いくつもの超巨大ブラックホール。それが雪崩を打って落ちて来るぞ。 ん…先生、今、声が… 声? はい。確かにこっちの方で…。 そちらは宇宙の辺境だ。熱量が少ないため死んだままになっていたはずだが。 でも確かに。行ってみましょう。 ふむ…。まあいい。次の見せ場まで、絶対単位でまだ8光芒少しある。
これは、基本原始生命誕生構造水型…命の海が出来てますよ、先生。 4光輝程先の銀河崩壊の重力波で、恒星に火がついたんだな。しかし…もう遅すぎる。水型生命では、進化に時間がかかりすぎる。 …ですよね。 どのみち後10光芒…この惑星が後25億公転程すれば、宇宙は終わる。 間に合わない、ですか? そうだ。 …先生。少しだけ、手を貸して上げてもよろしいですか? …………。 まだ8光芒あります。 …ふむ。君も水型生命からの進化者だったな。まあ好きにしたまえ。 ありがとうございます。 しかし、覚えておきたまえ。最低でも命を昇華させたまえ。間に合わないと思ったら知的生命体はつくらぬ事だ。無駄に負の想念を増せば、次の宇宙にも悪影響を与える。 はい、先生。では、行きます。 …あの子の訓練には、丁度いいかもな。
…先生。 見ていたよ。まあまあだったね。 …私は、上手くやれたでしょうか。 仕方ないさ。寿命だったんだ。よく15億公転で水棲固体生命まで進化させたものだ。先に恒星の寿命が来てしまったがね。 …はい。 そろそろ時間だ。次のイベントが始まるよ。
宇宙の中心が、燃えている? 超重力が発生しているのだよ。本来ならそのまま特異点と化して終わるのだが、あまりの質量の集中に、シュバルツシルト半径近辺で核融合が起きている。いまや銀河の中心は超巨大な恒星といえる。 凄いですね。あ、ブラックホールが…半径面を突き抜けて中心に…また融合した。 …そろそろだな。よく見ていたまえ。命の精算が始まるよ。 精算? シュバルツシルト半径から飛び出した素粒子…あれがそうだ。命の源と言っていい。 はい。 0から1への接点だ。見せて上げよう。2つ前の宇宙の終焉の様を。
これは…巨大な蛇が…黒い蛇が、宇宙を食らいつくす!? 負の想念が巨大すぎたのだ。全ての命の誕生を拒む蛇が、ああして宇宙を食らいつくす。最後には自身をすら。
今回は、大丈夫のようだ。あの蛇が誕生するほどに宇宙の汚染が進むと、次の宇宙はその想念を引きずったまま、未熟な段階で終焉を迎えてしまう。もっとも、その時点で負の想念はよりしろを失い、消えてしまうのだけどね。 そして宇宙はまた始まる…。 そうだ。今回は、蛇は誕生できないようだ。素粒子同士が融合し…そして重力に引かれていく。0に戻っていくのだ。 綺麗…。 因縁も残念も全て消え去る。命の精算だ。
…これで、全ての物質が宇宙中心核に集まったことになる。飛び出している素粒子も、結合しては引かれて落ちていく…もはや時間の概念の意味もない。くるぞ。 あ! …ビッグバン…。 5光芒もすれば再び命が生まれる。また繰り返されるのだ。 …私、行きます。再び、命の種を蒔きに。 私はここで見守っていよう。いつかこの宇宙が終わるとき、再び会おう。その時にはよい報告が聞けると信じているよ。 我らの、新たな仲間が生まれることを…。
貴方は、何処へ行くのですか?
Legi-on File12X Cosmic seed 後書き
こんな夢を見た。
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