初診: 9ヵ月 男児

生後3ヵ月時より湿疹がありましたが、ずっとステロイドなしの治療を受けていましたのでよくなることなく、9ヵ月のときに特に悪化して来院されました。
母親にアトピー性皮膚炎の既往ありとのことでしたが今はほぼありません。

症例4
検査経過
  H22.5月  H22.6月 H22.9月  H22.12月  
  9ヵ月 10ヵ月 1歳1ヵ月 1歳4ヵ月 
 ヒトTARC定量(pg/ml) 7499 5098  4475 2571  
IgE(RIST)(IU/ml 3879   4595 3811  
 好酸球数( /μl) 5227 2031 583 316  
 白血球数(/μl)  29700 15500 11000 10200  
平成22年5月 初診時 (生後9ヵ月)
   
 写真のように顔面全体に潮紅と糜爛があり、体の前後に貨幣状の赤い滲出性の局面がありました。またしゃぶったり、引っ掻いたりするので手にも糜爛性の紅色丘疹がみられました。かゆみによる引っ掻きが強く一層の悪化が見込まれたので相談の上、介入を決め最弱ステロイドによる治療を開始しました。
 
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合併する食物アレルギー

初診時の問診で、うどん、ソーメン、パン、とうもろこしを食して吐いたことがあるということでした。米、豆腐、大豆、タラ、サケ、鶏肉などは食べても反応がなし。卵、牛乳、マグロ、サバはまだ摂取していませんでした。のちのプリックテストで牛乳と小麦には強い反応を起こしていました。
1歳時に食パン(卵なし)を小さじ1杯食して1時間後に吐いています。1歳5ヵ月時には全卵クッキーを食して6時間後に吐きました。
食物アレルギーは最新の診察時点でもまだ残っています。アトピー性皮膚炎の皮疹はほとんど治癒していますので、食物アレルギーは別病と考えられます。

まとめ

乳児アトピー性皮膚炎は一定経過のもとに良くなっていくものですが、かゆみが強い場合には、引っ掻きによって自然治癒が大幅に遅れるばかりでなく、多種類のアレルギーが現れる危険性があります。このお子さんのように極端に悪くなると、いろいろな二次感染の危険もありますので、自然の成り行きにまかせず介入すなわち治療をすべきであると思います。

院長ページ

口演

論文

3. 無ステロイド治療で重症化した乳児アトピー性皮膚炎

初期治療から1週間  初期治療から1ヵ月 初期治療から3ヵ月