社説:ホテル火災 実効性ある行政指導を
毎日新聞 2012年05月22日 02時30分
地元自治体と消防がホテルのずさんな防火管理を認識していながら、長年にわたって危険性をなくす手立てを講じなかったことが被害の拡大をもたらした。広島県福山市で7人が死亡したホテル火災は、その後の調査でそんな実態が明らかになってきた。行政指導を実効性あるものにしなければ惨事はなくならない。
広島県警は21日、業務上過失致死傷容疑で経営者宅を捜索した。出火原因とともに、責任の所在を明らかにしてもらいたい。
ホテルは60年代に完成した二つの建物をつなぎ合わせたものだ。避難訓練や消火訓練をした記録はなく、消火設備の点検結果も30年以上報告していない。客室の窓はベニヤ板でふさがれ、煙が充満したことが消火活動の妨げにもなった。ホテルは格安料金を売り物に客を集め、犠牲者の中には職業技術を学ぶため来日した中国人実習生もいた。業界の低料金競争は激しいが、不特定多数の人命を預かる以上、安全投資をおろそかにすることは許されない。