(朝鮮日報日本語版) 【コラム】独房で幸せに暮らす韓国の凶悪犯たち
朝鮮日報日本語版 5月20日(日)6時43分配信
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(写真:朝鮮日報日本語版) |
警察署に連行されて来た至尊派の一味と出くわしたのは、社会部1年目の駆け出しのころだった。ボロボロの下着とジャージ姿に手錠がはめられており、顔は隠していなかった。犯人の一人となったキム・ヒョニャンの横に立った時、彼の頭と体からは何とも言えない異臭が漂ってきたのを今でも覚えている。
これらの容疑者が記者らの前に連行されて来た時のことだ。ある記者が突然飛び掛かり、犯人の後頭部を殴り付けた。「ボカッ」という音がした。その記者は「それでも貴様は人間か、この××野郎!」と叫び声を上げた。天使と悪魔に同時に会ったとしても、中立を守り抜かなければならないという現在のマスコミ観を持ってしては、決して受け入れることができない行為だったが、その当時は記者も被害者の立場から共に抑えられない怒りに燃えていた。こうした様子は紙面でも見受けられた。当時送稿された1面トップ記事には「人間にこんなことができるとは…」という見出しが付けられた。
記者たちの質問はすべてぞんざいな言い回しで行われた。もし当時、誰かが尊敬語に執着する最近の習慣をベースに「なぜそんなことをしたんですか」と質問していたら、きっとその記者はばか者扱いされていただろう。不意を付かれ、汚い言葉を吐き捨てられた至尊派は、まるで毒蛇が毒でも吐き掛けるかのように騒ぎ立てた。「金持ってる奴ら、金がない奴らを無視して回る奴ら、狎鴎亭洞のヤタ族(親に買ってもらった高級車で女性をナンパする男性)! 今ごろ俺の手にさえ掛かっていれば…」
こう吐き捨てた至尊派は、地方の町を通行中の20代女性、京畿道に住むナイトクラブのバンドマスター、両親の墓地の雑草を刈っていた中小企業の社長夫婦を拉致し、殺害した。その上、死体の一部を食べ、残った遺体は自分で作った隠れ家の焼却炉で焼いた。韓国社会の「犯罪」が行くところまで行ってしまったことを如実に物語った凶悪事件だった。
至尊派6人の死刑は翌年11月に執行された。検挙から判決、刑の執行まで1年2カ月とかからなかった。当時は死刑執行の不当さについては議論されなかった。犯人のつまらない肖像権についても持ち出す者など一人もいなかった。至尊派に殴り掛かり、毒舌を浴びせた記者をとがめる人間もいなかった。虚しく死んでいった被害者の憎しみ、遺族の怒り、「もし自分の家族が被害者だったら…」という悲痛なコンセンサスを中心に社会全体が動いていたからだ。
実際、至尊派の生まれた時代が悪かった。犯行があと数年遅く実行されていたら、「顔を隠しなさい」と帽子やマスク、雨具などを警察に渡されていたはずで、殴り掛かろうとする記者は警察に蹴り飛ばされていただろう。判事が死刑を100回宣告しても、政府は決して執行には踏み切れなかっただろう。一生を独房で暮らしながら、人権を重視する聖職者たちと悔い改めの手紙を何通も交換することになっただろう。こうしたいい時代を迎え、贅沢を極める「幸せな悪魔」たちが、現在の韓国の刑務所には、うようよしている。
先日発生した「水原に住む20代女性殺害事件」は、再びこの世の不条理について考えさせられるきっかけを提示した。家族たちが被害者の壮絶な肉声を聞きながら胸を打ち鳴らす時、犯人のオ・ウォンチュンは拘置所の独房で三食を取りながら、聖書を拝読する。警察はオ・ウォンチュンについて「心が安定し、よく眠れるようだ」と伝えた。殺人鬼、ユ・ヨンチョル(20人殺害)、カン・ホスン(7人殺害)も、今ごろはそうやって暮らしていることだろう。
国家の基本は治安だ。国家は「暴力の独占と正当な行使」を前提に成立する。基本もなっていないくせに何が凶悪犯の人権か。被害者からの通報にも曖昧な対応しかできない国が「死刑廃止国」という看板だけは一丁前に掲げ、あたかも善行を繰り返しているかのように決め込んでいる。どう考えても、「悪魔」に対する韓国社会の対応は、18年前の方が正しかった。時代が逆行する方が、時には正しいこともあるようだ。
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最終更新:5月20日(日)8時50分
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