第180回国会 国民生活・経済・社会保障に関する調査会 第2号
平成二十四年二月二十二日(水曜日)
   午後一時開会
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   委員の異動
 二月十六日
    辞任         補欠選任
     田城  郁君     尾立 源幸君
 二月二十二日
    辞任         補欠選任
     小西 洋之君     斎藤 嘉隆君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         鴻池 祥肇君
    理 事
                金子 洋一君
                西村まさみ君
                関口 昌一君
                義家 弘介君
                秋野 公造君
                寺田 典城君
    委 員
                梅村  聡君
                尾立 源幸君
                小西 洋之君
                小林 正夫君
                斎藤 嘉隆君
                高橋 千秋君
                広田  一君
                牧山ひろえ君
                安井美沙子君
                吉川 沙織君
                石井 準一君
                岸  宏一君
                中原 八一君
                牧野たかお君
               三原じゅん子君
                山崎  力君
                竹谷とし子君
                川田 龍平君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        近藤 俊之君
   参考人
       京都大学大学院
       工学研究科教授  藤井  聡君
       株式会社ニッセ
       イ基礎研究所研
       究理事・チーフ
       エコノミスト   櫨  浩一君
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  本日の会議に付した案件
○国民生活・経済・社会保障に関する調査
 (「持続可能な経済社会と社会保障の在り方」
 のうち、内需主導の経済成長と外需(輸出)も
 含めた経済成長について)
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○会長(鴻池祥肇君) ただいまから国民生活・経済・社会保障に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十六日、田城郁君が委員を辞任され、その補欠として尾立源幸君が選任されました。
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○会長(鴻池祥肇君) 国民生活・経済・社会保障に関する調査を議題とし、「持続可能な経済社会と社会保障の在り方」のうち、内需主導の経済成長と外需(輸出)も含めた経済成長について参考人の方々から御意見を聴取いたします。
 本日は、京都大学大学院工学研究科教授藤井聡君及び株式会社ニッセイ基礎研究所研究理事・チーフエコノミスト櫨浩一君に御出席をいただいております。
 この際、一言、参考人の先生に御挨拶申し上げます。
 御多用のところ御出席をいただき、誠にありがとうございました。
 本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
 議事の進め方でございますが、まず藤井参考人、櫨参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、各委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず藤井参考人にお願いをいたします。
○参考人(藤井聡君) それでは、京都大学の藤井聡でございます。本日はかような機会をちょうだいいたしまして、誠にありがとうございます。
 本日ちょうだいいたしましたタイトルが内需主導の経済成長と外需(輸出)も含めた経済成長についてということで、二十分ほどお話しさせていただきたいと思います。(資料映写)
 まず最初に、このスライドを御覧いただきたいと思います。こちらにはパターンA、パターンBと書かせていただいてございますが、これは成長論の二つのパターンでございます。
 パターンAを御覧いただきますと、読ませていただきます。日本は貿易立国で、少子高齢化で内需の拡大はもう望めないと、だからもう外に打って出るしか経済成長はできないと。また、公共事業の効果は既に小さく、また借金で日本政府はもう破綻寸前であると。だから、デフレ脱却のためにも構造改革と自由貿易推進による成長戦略が必要であると。これがパターンAでございます。タイトルとしては、改革・貿易成長論と、まあそんなふうに言えるかと思います。
 これとはまた趣の違ったパターンBの成長論がございます。読ませていただきます。デフレの原因は需要不足であり、これを埋めるためにも日銀による金融緩和と政府による財政出動のワンセットの取組が不可欠であると。一方、日本の国債は大半が国内で消化され、かつ全て円建てなので、国債の発行に大きな支障はない、それほど大きな支障はないと。だから、国債による資金調達で大規模な財政出動を行うと同時に、大規模な金融政策を実施し、デフレ脱却、そして財政健全化を果たすべきであるというパターンでございます。これは要するに、財出と金融緩和をやって、それを通じて成長しましょうというパターンでございます。
 経済理論をよく御存じの方はこのパターンAの議論とパターンBの議論があるということは御存じだと思いますが、このパターンAとパターンB、どちらのパターンを皆さん支持されるかということを考えますと、多くの国民を含めまして、恐らくはパターンAを支持するという状況にあるのじゃないかなと思います。
 これはなぜかというと、これは過去一年間の新聞の社説の中で経済を取り扱った八百五十一本、大手五紙でありますけれども、分析したところ、パターンAとパターンBが占める割合はもう九割を超えていると。それ以外のパターンというのはほとんど見られないんですね。それ以外のパターンというのは、要するに、エネルギー問題をどうせなあかんとか雇用を確保せなあかんとか何か一般的な話であって、大体、こうせなあかん、ああせなあかんとかという、パターンA、パターンBが大半を占めて、それが九割なんですが、御覧のように、八八・三%がパターンAでございます。
 要するに、構造改革をやって自由貿易を推進したら日本の経済良うなりまんねやという話がこの八八%を占めていて、何とパターンBの、経済理論では当然ながらある理論なんですけれども、このパターンBの理論はたった一・七%、一年間掛けて十五本しかないという、ほとんどギャグのような差がございまして、こういうような世論環境、マスコミ環境でございますから、多くの心ある国民も含めて、パターンAを支持することは致し方ないというふうに思います。
 しかしながら、これは当然でございますけれども、多くの人々がどちらを支持するかということと、それと真実はどちらにあるのかということは別であります。世論あるいは学界の定説も含めて、そういう世論と真実は一致しているとは限らないというか、おおよそ京都大学では真実は少数派に宿るという教えをいろんな先生方から伺ってございますので、余り八八%もの人が同じようなことを全体主義的に言っていると、ちょっと何かおかしいんちゃうかというふうに思うというのが、これ我々学者といいましょうか、真実を追求する人間の態度でございます。
 ということで、パターンA、パターンBというのを考えますと、パターンAがとにかくよく支持されているわけでありますけれども、どちらが正しいかということを少し考えたいというお話を今からいたしたいと思います。
 どちらが正しいかということを考えるときに当たって、事実とパターンA、パターンB、どちらが整合しているのかということを考えることが全ての出発点であります。それを考えたところ、残念ながらパターンAには基本的な極めて深刻な過ち、誤認、誤謬というものが、誤った認識というものが存在しているということを私どものいろいろなデータ分析から明らかになっておりますので、それをまず御紹介したいと思います。
 まず、構造改革・自由貿易推進で経済成長を論に見る誤った認識のその一でありますが、よく言われますのが、少子高齢化で内需の拡大は望めないということは、もうそんじょそこらといいましょうか、そこらじゅうで、居酒屋であろうが喫茶店であろうが、どこに行ってもこんな話はもう、電車に乗っていてもいつもこんな話ばっかりよく聞くんですけれども、これもうめちゃめちゃ間違いであります。
 どういうふうに間違いかというと、まず、ドイツとかロシアというのは少子高齢化しているんですが、残念ながら経済成長してはるんですね。ですから、少子高齢化やったら経済成長できないというのはそもそも事実と反しています。しかも、理屈で考えましても、仮に人口が一%とか二%とか過激に減っていったとしても、一人当たりのGDPが三、四%伸びればそれでもうチャラで経済成長できると。一人当たりのGDPが伸びるということは、ふだんいつもギョーザ食べてはる人がもうちょっとええもん食べるようになったら、それだけで一人当たりのGDPって伸びるわけであります。どんどんどんどん安いものばっかり食べるようになっているさかいに一人当たりのGDPが下がっていくということもあって、それでデフレになっているというような話ですから、少子高齢化をすればデフレになるという圧力は存在するということを僕は否定はしないですが、だからといって経済成長は望めないというのは真っ赤な、真っ赤なうそであるということをまず第一点指摘しておきたいと思います。
 第二でありますけれども、日本が経済成長するには外に打って出るしかない、もう去年一年間の新聞さんざん分析してさんざん何度も読み返しましたですけれども、こればっかり言われておりますけれども、これも完全な事実誤認であるということをまず御紹介したいと思います。
 そもそもでありますけれども、日本の貿易依存度、輸出依存度は諸外国の中でも取り立てて低く、典型的な内需主導経済であります。これは後ほどデータ等お示ししますが、九割近くが内需であります。しかも、とはいいながら、一割強の輸出の部分があるんですが、それが伸びることを通じて経済が成長することだって当然ながらあり得るんですが、それは二〇〇八年までのリーマン・ショックまでならばそれは容易であったかもしれませんけれども、現在、リーマン・ショックで、しかもヨーロッパもえらいことになっていますし、中国のバブルもいつ崩壊するか分からぬような状況になっていますから、その我々の作ったものを買ってくれはる大金持ちが外国にぎょうさんいるとは到底考えられないという状況に二〇〇八年以降なっているということであります。しかも、しかも、しかも、しかも、今強烈な円高でございますから、もうこの状況で外に売って稼ぐということは、不可能とは言いませんけれども、極めて厳しいということは火を見るよりも明らかであります。
 この一点目の内需主導型の経済という部分でありますけれども、これも統計を見ますと、内需と外需の棒グラフを見ると一目瞭然でございます。もう七倍の開きがあります。逆に言いますと、外需が不要とは言いませんけれども、仮に外需がゼロになったとしても、内需が一割程度、一割強伸びればその部分はもう補償できるわけであります。逆に言いますと、外需が倍になったところでGDP全体は一・数割ぐらいしか伸びない、一〇%とか一一%しか、二〇%も伸びないわけであります。ところが、内需が二倍になったらGDPはほとんど二倍になるということであって、効率的に経済成長を果たすということを考えるならば、どう考えても、どう考えても内需主導でやるということが効率的であるということを申し上げたいと思います。
 国際比較でありますけれども、これはTPP関係十か国の比較でありますけれども、御覧のように輸出依存度というのはもう世界最低水準でありますから、このような内需主導の国の国家の経済の成長を考えるに当たって、外需ばかりを言うというのは完全な誤謬、誤りであるということをまず皆様に御理解いただきたいというふうに思います。
 三つ目、これもまたよく言われます、日本政府の破綻はそこまで来ていると。これ、破綻することはないとは私は申し上げませんけれども、危ない、危ないと。それはもう外を歩いていたら、それは何か飛行機が降ってくるかもしれませんし、大きな隕石か何かで死ぬかもしれませんから安全なことなんかないので、何が起こるか分からないんですけれども、そこまで心配するものかどうかという点は冷静に考える必要があると。
 残念ながらこれも誤った深刻な誤謬であって、まず第一点でありますけれども、日本国債は全て円建ててあるという点から考えますと、ギリシャと全然違うわけです。ギリシャと日本とどう違うかというと、ギリシャが借金してはるのはあれはユーロでありますから、ギリシャ政府は残念ながらユーロを刷る権限を持たないんですが、日本政府は、まあ日本政府といいましょうか日本国家はそれを持っているという点であります。その点において、ギリシャと似ているのは実は夕張なんですね。夕張は経済が破綻するときに、中央銀行を持たないので、それを耳をそろえて返すときに金融政策を打つことができないのであります。ところが、日本政府は金融政策を打つことは不可能では絶対にないという点で全くギリシャと違うということを多くの国民は看過、見過ごしております。
 第二点目でありますけれども、よく言われるのが、この一点目のことを御存じの方もよく言われるのが、投売りがあったとき日本経済は大混乱に陥ると、こう言うわけでありますけれども、当然ながら、東電があの事故があったときに株が投売りになってそれで暴落したということはあるんですけれども、東電には残念ながらアコードをするような中央銀行は付いていないんですが、日本政府の場合は中央銀行というものが存在しているという点が全然違います。したがって、一つのオペレーションとして投売りがあったとしても、その投売りされたものを日銀が買い支えるということは決して不可能ではありません。これをするかどうかは別でありますけれども、不可能ではないと。しかもそれは、するようにすることは、これはもう国家として常識であります。FRBだってどこだってそれは当然ながらやるのであります。
 しかも、そのときに、深刻な投売りでそれを日銀が全部買ったらハイパーインフレになるということをぎょうさん言わはるんですけれども、何言うてはるんやろと僕は思います。そもそも一千兆円しかないわけであります。一千兆円の全てが売りに出されるということはありません。私の友人といいますか、私の知り合いの証券会社の方から実はアンケートを取って、最大何割投売りされると思いますかと聞いたときに、一人だけ一〇〇%という何かよう分からぬ人いましたけれども、九九%の方は二割か三割というのが関の山だとおっしゃっています。二割か三割ということは二百兆か三百兆であります。二百兆か三百兆の金融緩和というのは、実はFRBがやっている金融緩和とほとんど一緒なんですね。あれは、アメリカというのは意図的にXデーをもう呼び込んだようなものであって、実はそれであのデフレ脱却の一つの重要な契機になるということすら考えられるわけであります。
 いずれにしても、今深刻なデフレでありますから、仮に投売りがあってそれを日銀が全て買い支えたとしても、深刻なインフレになるとはどう考えても考えられないというのがこれ市場の判断であります。
 しかも、九割以上が日本国内の投資家であって、しかもその九割以上の投資家の中の半分、半分とまでは言いませんけれども、多くの割合が政府系金融機関でありますから、そもそもが投売りのリスクはさして高くないわけであります。投売りのリスクがゼロだと言っているわけではないですけれども、高くないということであります。だから、市場の判断は国債の金利というものは非常に低い水準をずっと漂っているということであります。したがって、日本政府の破綻がそこまで来ているというのは、全くデータを知らないか、経済理論を知らないか、あるいは知っていてうそをついているか、その三つのうちのどれかであります。
 さて、四つ目の誤認でありますけれども、公共事業は無駄であって景気対策としての効果は薄いと。これもまた二十年ぐらいさんざん言われているんですが、めちゃめちゃこれも間違えています。
 第一に、皆さん冷静になって考えてください。首都直下型地震が来るかもしれないと言われていて、しかも東海・南海・東南海地震が来るかもしれないと言われていて、しかもインフラの老朽化が激しいと言われているとき、どう考えても、首都の防衛とか国土の防衛のために、それは無駄な公共事業がないとは僕は言いませんけれども、必要な公共事業は山のようにあるわけであります。必要な公共事業、無駄な公共事業をやるんじゃなくて、必要な公共事業を選んでやればいいというだけの話なんです。これが第一点。
 第二点。乗数効果は低い低いと言う人が多いんですけれども、インフレのときは低くなる可能性はあります。なぜならば、政府がいろいろやるとそれで民業圧迫というのが起こるというのがあって、これはクラウディングアウトというんですけれども、それが起こって公共事業の経済刺激効果って低くなるかもしれないんですが、今デフレーションなので、クラウディングアウトすなわち民業圧迫が起こらないので、政府が幾ら仕事をやってもそれで民間の仕事が減るという効果はほとんど、まあほとんどというか非常に低いわけであります。クラウディングアウトというものに関しては、経済理論、経済学界の中でもよく議論されるんですけれども、それは海外においてはないということがもうほぼ定説になっております。
 しかも、しかもですね、二〇〇八年を迎えたアメリカの、スティグリッツとかクルーグマンとかアメリカの経済学者は、それまではマネタリストで、とにかく金融緩和だけやったらデフレ脱却できると言っていた人ですら、二〇〇八年以後は、いや、済んまへん、間違えてましたと、やっぱりがんがん公共投資、財出をやらへんかったらデフレ脱却できまへんねんということを、まあ関西弁ちゃうと思いますけれども、スティグリッツですが、スティグリッツとかクルーグマンとか言うておるわけであります。その助言に従ってアメリカは何と、まあまあ為替レートの変換の仕方にもよりますけど、四百兆の政府の支出の拡大を行っているのであります。それがあってようやく今のアメリカの景気の底支えがなっている一方で、日本はそれをやらないといけないところでコンクリートから人へで削っているんですから、そんなもの景気が良うなるはずないのになと学者として思います。
 三番目でありますが、デフレの今、公共投資はデフレ脱却の切り札であるということは後でまた御紹介したいと思います。
 この五つ目。これも是非、国会の先生方、日本国民の皆さん含めて、是非この五つ目の誤認も解いてください、今日から。この瞬間から、皆さんこの勘違いをやめてください。規制緩和で経済成長、規制緩和で経済成長することはありますけれども、しないこともある、あるいは経済が停滞するということもあるということをお話をしたいと思います。
 最も深刻な誤った誤認であって、今はデフレであります。デフレとは何かというと、供給過剰であります。需要と供給があって、供給が多いからデフレになっていると、これはもう常識であります。規制緩和というのは、供給を増やすことです。一番典型なのはタクシーです。タクシーの業界というのは、需給バランスをちゃんと保つために規制を緩和していなくて規制があったんですけれども、規制がなくなってしまってタクシーの台数がごっつう増えてしまって、今もうドライバーさん一人当たりの給料、物すごい減っているんです。もうデフレが一番激しい沖縄なんというのは、ドライバーさん一人当たりの給料、これはほんまですよ、九十万円を切っているんです、年間所得が。それぐらいまでに、それぐらいまでにデフレーションが深刻化になって、しかも給料が、国民所得が下がっているのは、規制緩和をやったからなんです、このデフレの状況下で。
 インフレのときには、規制緩和ということをやってインフレ不況を抑えるということは必要なんですが、その真逆のデフレの状況においては、規制緩和は絶対やってはいけなかった。にもかかわらず、過去十五年間やり倒したわけであります。それが日本のデフレーションの重要な原因であるということを全員の国会議員の皆様方に是非理解していただきたいと思います。
 もう少しデフレについて御紹介したいと思います。
 デフレというのは、今御紹介しましたように需要と供給のインバランスであって、御覧のように供給の方が多いと。供給の方が多いということは、要するに牛丼屋さんで、昔は吉野家しかなかったところ、松屋とかなんとかが増えてきて、ぎょうさんお店が増えたら値段が下がりまんねんという話であります。そうなると、値段が下がると各企業の収益が下がります。各企業の収益が下がると、各企業が投資しようという意欲も下がりますし、更に所得も減るわけであります。したがって、お金がなくなっていくので、みんなお金使わなくなります。みんなお金使わなくなるので、結局需要が更に減ります。そして需要が更に減って、それを通じてデフレギャップが更に広がります。ここまで来ると、いや、もうこんなん商売やっていても、何かもう先行き不安やからえらいこっちゃわということをみんな思います。そうなると、どんどんどんどん投資をしなくなります。先行き不安でどんどんどんどん投資をしなくなる。そのうち何が起こるかというと、これだけデフレギャップがあると、もう余っている店がいっぱいあるということですから、店が潰れていくんです。企業が潰れていくんです。企業がこうやって潰れていくと、要するに供給量が減っていきます。企業が潰れると失業者が出ます。失業者が出ますと、彼らは余りお金を使うことができません。投資もできません。したがって、更に需要が減ります。こうやって物すごいえげつないスパイラルがどんどんどんどん回って、日本のGDPがどんどん下がっていくわけであります。
 頑張って今からまた話しますけれども。
 このデフレギャップを、要するにデフレギャップが存在しているがゆえにデフレになっているということは、これはもう教科書どおりのお話であります。これを防ぐにはもう一つしか方法がありません。これ以外何の方法もありません。デフレギャップを埋めるんです。需要と供給のバランスを保つんです。これをすると、皆さんの、国民の所得が守られ、各企業の収益が守られるんです。給料も下がらへんし、ちゃんと収益もちゃんとあったら、経済というのは成長していくんです。したがって、次の年に履かさないといけないげたの高さは低くなります。これをちゃんとげたを履かせて所得を守っておくと、どんどんどんどん経済が、三年ないしは五年ぐらいでちゃんと回復すると。これがデフレ脱却の唯一の方法であります。
 ということで、逆に言うと、そうやるとデフレから脱却できるんですが、とある三つのことをやるとデフレが悪化するということが理論的に演繹されます。一つ目、規制緩和。これ、先ほど申し上げたとおり、需要と供給でデフレギャップを埋めなあかんのに供給が増えて、更にデフレギャップが広がるわけです。二つ目、せっかくげたを履かすために公共投資やっているのが、これが公共投資を削減したらげたがなくなってデフレギャップが広がるんです。これが二つ目。三つ目、そもそもの需要というものがあるんですが、消費税掛けると、これ更に縮むんです。
 したがって、この三つを同時にやればデフレギャップは更に広まって、どんな立派な国民経済、どんな立派な国民がいたとしても、その国は完全なデフレに陥ります。これら全てを九〇年代後半からこの国はやり倒しよったわけであります。やり倒したのでもうデフレが悪化しないわけがないのであって、しかも現政権下においてもこれを更に更に続けようとしているわけであって、もうこれ、殺す気かという話であります。何してくれてんねんというのが私の主張でございます。
 これ、一点だけでございますけれども、例えばもう御覧のように全ての国がもうみんなインフレで、普通の国が公共投資を二倍とか三倍に膨らませている中で、日本だけは半分にしているのであります。デフレの国でこれだけ減らして、それはデフレになるわさという話でございます。
 この大間抜けな経済政策の三連チャンが何をこの我が国にもたらしたかというと、二千兆円から四千兆円規模の大大大損害であります。どういうことか。これが名目GDPの推移なんですけれども、御覧のように日本以外は全部経済成長しています。中国だけでなくヨーロッパまでも全部経済成長しているんですが、九七年の構造改革、いろんな規制改革等々をやったときから日本は増税等々してもデフレになりました。
 御覧のように、日本だけ経済成長できなくなって、この間はもう公共事業は削るわ構造改革はやるわコンクリから人へは言うわ、もうめちゃめちゃやっているわけであります。こんなめちゃめちゃなことをやったら、そんなのもう経済成長するはずあるかいなという話であります。そんなあほなことせんと、ちゃんと普通の大人の国家としての経済政策を行っていたら、これぐらい行っていたはずなんです。
 これ、どういうことかというと、経済成長の世界平均、日本を除く世界平均で推移したら、何と日本は一千二百兆円ぐらいのGDPになっているんです。当然ながら、多くの論者は、いやいや、日本は成熟社会だからそこまで行かないよという人もいるでしょうから、まあまあ渋々三分の一しか成長率がなかった場合というのも計算しましたけれども、七百兆か八百兆ぐらいのGDPにもなるんですよ。とすると、普通にやっておけばもう四百何十兆という話じゃなくて、もう普通で、どんだけぼちぼちやっていても七百兆か八百兆ぐらいのGDPがあったはずなんです。
 問題は、この斜線部分であります。この斜線部分は一体何かというと、へんてこりんな経済政策やってしもうたことによって我が日本国民がどんだけ損したかという話であります。これ、全部計算すると、二〇〇八年だけで二千兆円損していると。これ、もう平均シナリオの場合は四千兆円損していると。これ、二〇一一年ですから、これもう五千兆円行っているぐらいの話であります。こんなことをやっていると、五千兆円あれば借金は返すことができるわ、リニアなんて二、三本造ることができるかもしれませんし、場合によっては社会保障だって物すごいいい病院とか造ることができるかもしれませんし、しかも、その一千二百兆円の国やったら、そんなのアジアとかアメリカとかソ連とかに、いや、あの国ちょっとやばいなと思われるでしょう。四百七十五兆なら、ちょっとしょぼなりよったなと思われることがあって、要するに国際的な地位が凋落しているわけであります。
 それを一言で言いますと、つまり、デフレは日本経済力の凋落とか失業、国民所得の減少の直接的原因であるのみならず、財政悪化と、これまた後ほど申し上げます円高の原因にもなっておるし、外交力の低下にもなっているし、必要な公共政策の未実施、防災、国防、教育、社会保障等々の必要な公共政策の未実施につながっているわけであります。しかも、こんだけデフレやったら子供つくらなくなります、国民は。人口減少、元々人口減少傾向があったのが更にドライブさせられてあって、しかも社会保障費も増加しているわけであります、失業者が増えておりますから。
 ということで、今、国会の先生方がいろいろと御議論されている全てと言ってもいいぐらいのほとんどの問題の背後にデフレというものがあるんです。だから、デフレの脱却こそが日本を救うための最大の政治課題であるということを先生方に御理解いただきたいと思います。
 今までのお話をちょっとまとめますと、公共事業無駄やとか、規制緩和で経済成長せえとか、そんなことばっかり言うとるわけで、しかも、それは大手新聞社の八八%が毎日毎日それを言っているわけであります。そうしたら、国民が、ああ、そうなんかなと思うようになるわけであります。したがって、今の日本のデフレというものは、国民総勘違いデフレ不況なんですね。全員が国民が勘違いして、何かもうやったらあかんことを、火事にもう油はまくわ、もう傷に塩塗るわ、そんなことをやって、もう勘違いして、それがあったらええとか思ってこんなことになってしもうとるわけです。もう是非この勘違いを是正いただきたいというのが、私の強い願いでございます。
 ただし、最後の前のスライドでございますが、私が今申し上げたように、構造改革が駄目だとか公共事業が必要だと言っていますけれども、私が申し上げているのは、構造改革が常にバツで公共事業が常にマルだということではありません。絶対そういうことはありません。それは、構造改革が常にマルやとか公共事業が常にバツやとか、今の日本がやっていることとほとんどというか全く同じほどに愚かしいことであります。重要なのは、どのタイミングで何をやるかということであります。
 重要なポイントは、インフレ期とデフレ期でやるべき対策というものを分けるべきだということです。インフレというのは、そもそも需要が多くて経済があっちい、あっちい、あっつうみたいな感じになっておるときでありますので、そういうときはあっつうとなっているので冷ましたらいいんです。逆に、デフレのときというのは需要が少なくて何かもう冷たくなっているので、温めるような、経済を温める対策が必要なんです。だから、インフレのときには冷ます必要ですから緊縮財政が必要なんです。一方で、デフレのときには積極財政が必要なんです。
 もうちょっと細かく言うと、インフレのときは政府支出を削ったり公務員を削ったりするのがいいんですけれども、デフレのときには政府支出を拡大したり公共の公的な雇用を拡大する必要があります。さらに、インフレのときには増税が必要ですけれども、デフレのときにはもう投資減税なんかが必要になるんです。さらに、インフレのときには規制緩和というものが必要になりますけれども、デフレのときにはそれは絶対やっちゃ駄目で、実は逆に雇用の保護なんかが必要なんです。さらに、貿易でいうと、インフレのときには自由貿易を更に推進して、それで舶来物とかいっぱい輸入することが必要になってくるんですけれども、デフレのときにそれをやってしまったらデフレが更に悪化してしまうので、保護貿易こそが求められているんです。
 したがって、インフレのときに必要なこととデフレのときに必要なことときれいに分けていただきたいと、これはもう日本中の全員の経済学者に私は理解いただきたいと思います。
 これ、一つの例でありますけれども、私がいつも敬愛しているところの宍戸駿太郎先生という元経済企画庁の先生が、元経済企画庁にあったちゃんとしたモデルを使って計算したところ、私が申し上げているようなことを二百五十兆円規模でやると、十年後に八百七十四兆円程度のGDPになるんじゃないかということも計算されています。その辺りのことは、昨日発売になりました「救国のレジリエンス」という本の中で紹介してございますので、またそれを御覧いただければと思いますけれども、詳しくは。いずれにしても、きちんとした経済対策を打てば我が国は幾らでも経済成長できるということを御理解いただきたいと思います。
 最後に、外需の獲得でありますけれども、要するに内需を拡大すると、ぎょうさん僕らは物を買うようになります。ぎょうさん物を買う。物を買うということは、円を売ってドルを買うようになります。円売りドル買いがぎょうさん進むので円安になります。円安になると、何と内需を拡大すると輸出産業も拡大することになるんです。ええことばかりということであります。ですから、内需を拡大することこそが輸出産業のためにも必要だということも、おまけで一つ申し上げておきたいと思います。
 最後でございます。
 学界、マスコミ、世論の全てを巻き込んだ日本全体の思い違いによってデフレ不況になっている状況から抜け出すためには、レジームの大きなチェンジ、レジームチェンジ、大きな大転換が必要であると。AからBへの転換、貿易とか改革成長論とかから財出とか金融緩和成長論に対しての大きな、それに向けての大きな大転換が必要であるということを申し上げたいと思います。
 デフレ脱却、本格的な国土強靱化、世界恐慌対策、それらが全て求められているこの二〇一二年に、是非ともこの大きなレジームチェンジを先生方のお力で何とかしていただいて、日本国民を救っていただきたいと思います。
 以上でございます。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 次に、櫨参考人にお願いをいたします。
○参考人(櫨浩一君) ニッセイ基礎研究所の櫨でございます。今日はこういう会にお招きいただきまして発言の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
 今日は私がお話をするお話、内容は、今、藤井先生がパターンAとパターンBとその他というふうにお分けになりましたけれども、その他というところに一くくりにされているお話でありまして、そういう意味ではマスコミでもほとんど取り上げられたことがないようなお話ですので、かなり違和感をお持ちになるかというふうに思いますけれども、少し御辛抱をいただきたいというふうに思います。(資料映写)
 今、藤井参考人のお話がありましたように、経済成長の戦略として、要するにGDPが大きくなればいいわけですから、GDPの需要の中身で考えると、輸出を増やすか、政府支出を増やすか、民間の投資を増やすか、あるいは消費を増やすか、こういう話になるわけでございます。今日私がこれからするお話は、輸出とかそれから民間の投資、あるいは財政支出の増加という話は、もちろん効果はあるわけでありますけれども、五年も十年もずっと続けているわけにはいかないと、そういう意味で、消費を拡大するという戦略だけが今唯一持続性がある話だというお話でございます。
 まず、外需依存で輸出をどんどん拡大させるという戦略になぜ持続性がないのかというお話をさせていただきたいというふうに思います。
 これは、先ほどの先生の日本のGDPを金額で外需と内需に分けたものでありまして、二〇〇八年の日本のGDPが名目で五百一兆円ありまして、それが、外需が一兆円で内需が五百兆円だと、こういう姿でございます。
 二〇〇九年、一〇年というのは外需主導で経済成長しておりまして、外需の寄与度が二〇〇九年は〇・二%、それから二〇一〇年は〇・九%、右の黄色いところでございますけれども、こういう形で成長を牽引したということなんですけれども、これはどういう意味かというと、左の外需と書いてある黄色い縦の帯でございますけれども、二〇〇八年の外需が一兆円に対して、二〇〇九年は二兆円、二〇一〇年は六兆円というふうに、この外需というところはどんどん増えていくわけです。外需で経済成長するということは、輸出マイナス輸入のこの外需というところがどんどん大きくなっていくということでございまして、対外黒字が増え続けないと外需では経済成長ができないということになります。
 経済成長を続けてまいりますと、輸出が増えて経済成長するのは問題ないではないかと、貿易立国という国是でございますので、外需依存ではなくて輸出を伸ばしてどこが悪いのかというそういう御意見もあるわけでありますけれども、私、貿易立国という話と外需による経済成長という話は全く別物だというふうに考えております。
 貿易立国は、輸出も増えるわけでありますけれども、輸入も増えていくわけです。貿易を行うわけですから、輸出だけして輸入をしないというわけではございません。ヨーロッパの主要国などは、輸出のGDPに対する比率が日本よりはるかに高いわけでありますけれども、一方で輸入も非常にたくさんしておりまして、輸出マイナス輸入というこの外需の部分はそれほど大きいわけではないわけであります。したがいまして、一方的に日本が輸出を増やして輸入をしないというのでは、これは貿易立国ではないと。外需による成長というのは、一方、輸出の増加が輸入の増加を常に上回っていて、どんどんどんどん輸出マイナス輸入が増えていくという、こういう形になりますので、貿易立国という話とこの外需依存で経済成長をするという話は、輸出が伸びるという点では同じでありますけれども、同時に輸入がどんどん伸びていって黒字が拡大するかしないかという点で非常に大きな差があるというふうに考えております。
 貿易立国であれば特段問題はないわけでありますけれども、その外需の部分は増えないわけですから経済成長には寄与しないと。輸出は増えますけれども、その分ちょうど輸入が差し引いてしまいますので、GDPは増えないということになってしまいます。
 じゃ、その外需依存でどこが問題なのかということでありますけれども、今申し上げましたように、その外需依存で経済成長をするということは、対外黒字の拡大ということを意味するわけでありますから、円と外貨の取引で外貨がどんどん入ってくる割には円に対する需要がないということになりますので円高を招くと。結局、どこかで非常に強烈な円高がやってきて輸出ができなくなり、一方輸入が増えて、外需主導でせっかく成長してきたのに円高の影響で景気が悪くなると、こういうことを繰り返してしまうということであります。
 もう一つの問題は、日本と外国の関係でありまして、日本が黒字を出す、日本が輸出をいたしますと、それは相手の国から見れば輸入であります。日本が貿易で輸出が多く、輸入の方が少ないということは、相手から見れば日本に対する輸出よりも日本からの輸入の方が多いということでありまして、日本が貿易で黒字を出せば相手は赤字になるということになりますし、日本がどんどんこの黒字を続けていけば、対外資産がどんどん増えてまいりますけれども、相手の国は日本に対する債務がどんどん増えていくと、こういうことになるわけで、経常黒字をずっと続けていくと、どこかで日本の貿易相手国は日本からの輸入を抑制せざるを得なくなると、こういう話であります。
 日本は現時点で二百六十兆円近い対外純資産を持っておりますけれども、これをどこまでもどんどん増やしていくということは、どこかでこれだけの借金を日本に対してしている国が出てきてしまうということでありまして、これも持続性がないという話かというふうに思います。
 いずれどこかで日本から輸入をしている国は債務が大きくなり過ぎて通貨危機を起こすとか、あるいは日本からの輸入を制限せざるを得なくなるということが起こるわけで、外需による経済成長というのは、短期的に輸出が伸びて景気が良くなる、そこで内需であります企業の設備投資とか家計の消費が増えて内需に転換しないと駄目だということでありまして、景気回復の呼び水にはなるんですけれども、持続的に五年、十年と日本経済を成長させるような、そういう戦略にはなり得ないというふうに私は考えております。
 次に、投資主導で経済成長をするということに持続性がないというお話をさせていただきたいというふうに思います。ちょっと細かい話をいたしますので申し訳ありませんけれども。
 このGDPを増やしますと、GDPというのは国内総生産でありますから生産が増えるだけなんですけれども、生産というのは誰かがそれを買い求めているということで需要に等しい。誰かが買ってくれれば、当然売った人は収入が出ますので、生産と所得と支出は同じ金額だけあると。だから、GDPを増やせば我々の所得も増える、こういうふうに言われているわけでありますけれども、ここには少し注意が必要でございます。我々は通常はGDPを見ておりますけれども、例えば租税負担率とかあるいは社会保障の負担率というような負担率の計算をするときの所得というのはこのGDPの数字ではございませんで、この下から二番目のところにあります国民所得というこの数字でございます。
 非常に似たものに、一番下に国民総所得というGNIというのがございまして、これは昔GNPというふうに言っていた数字でありますけれども、これとGDPの差は海外からの利子や配当の所得を入れるかどうかというところでありまして、非常に大きく違うというわけではございませんが、国民所得とGNIあるいはGDPとはかなり大きな差がございます。
 この中で一番大きいのは一番右のところにあります固定資本減耗ですね、減価償却費に当たる部分でありますけれども、これを考慮するかどうかというところでございます。
 これ、どうして国民所得の中に減価償却費が控除されているのかというと、企業の収益を考えていただければお分かりになるわけでありますけれども、毎年お金を借りて設備投資を行います。借りたお金はどこかで返済をしないといけないわけでありますけれども、それは、例えば造った工場設備が十年もつのであれば、十年間掛けて減価償却して償却をすると。これは、企業の毎年の売上げから原材料費を引いた粗利益のところから減価償却費という形で控除をして最終的にその企業の最終利益というのが出てくると、そういう形でございます。
 GDPも同じ考え方を取っていて、企業が設備投資をした、これは当然どこかからお金を借りているわけでありますから、この分は毎年毎年償却していかなくてはいけない。これが固定資本減耗という形で毎年のGDPというところから控除をされる、こういうことでございます。
 これがどういう形になっているかというと、バブル崩壊後あるいはもっと遡れば高度成長が終わったところから、日本の経済成長率というのはかなり大きく落ちました。企業の投資も落ちてはいるわけですけれども、それほど大きくは落ちてはおりません。特にバブル崩壊後のところが問題なんですけれども、需要がほとんど増えないという中で設備投資はかなり高水準を維持してきたということで、日本の企業の収益構造を見ておりますと減価償却費が利益を圧迫するような形になっております。
 これを日本経済全体で見ますと、GDPはある程度は伸びているわけですけれども、この減価償却に当たる固定資本減耗の部分が非常に大きくなってしまって、そのために企業ももうからないし家計も賃金を得られないという、そういう構造になっております。
 これは一九八〇年度から二〇〇九年度までの日本の国民総所得、ほとんどGDPと同じでありますけど、それがどういうふうに分配されているかというのを表したグラフでございます。
 このグラフの一番上の方を御覧いただきますと緑色の帯がございますけれども、これが固定資本減耗、減価償却費に当たる部分でございます。一九八〇年度にはこの部分は一四%しかございませんでしたけれども、二〇〇九年度の数字ではここが二一%に増えてしまっております。つまり、GDPで我々は物をつくって所得を得るわけですけれども、そのうちの一四%分は古い設備を、壊れてしまったものをそのまま維持したり、あるいは更新するために必要な経費として所得から控除されているという状態であったものが、この控除部分が二一%に増えてしまっているということでございます。
 この結果、何が起こっているかというと、営業余剰・混合所得と書いてありますこの赤い斜線の部分でありますけれども、ここが企業の利益でありますけれども、これがGDPの中の二九%から一八%に小さくなっております。よく企業の方が日本では賃金が高過ぎるので企業はもうからないというお話をされるんですけれども、このGDP統計で見ますと、雇用者報酬という賃金の部分は一九八〇年度の五三・一%から二〇〇九年度には五一・六%というふうに、むしろ若干減っておりまして、そういう意味では、賃金が高過ぎるとか賃金が多過ぎることが企業の収益を圧迫しているわけではないというふうに私は考えております。
 この内需主導というふうに持っていかなくてはいけないときにこれを阻んでいる原因は何かと。ここは藤井先生と全く同じ考え方でございまして、人口が減少するからもう駄目だという、こういう考え方だというふうに思っております。
 人口が減るから需要不足で経済がデフレ的になるというのがそもそも間違っているということでございまして、最新の人口問題・社会保障研究所ですか、そこの推計によりますと、二〇一〇年から二〇三〇年にかけて日本の総人口は一億二千八百万人から一億一千六百万人に約九%減少をいたします。この一方で、十五歳から六十四歳までの生産年齢人口は八千百七十三万人から六千七百七十万人ということで、約一七%減少してしまいます。これは、総人口が大体みんな物を買うということですから需要だというふうに考えて、生産年齢人口がこれは働く人たちですから生産する能力だというふうに考えると、需要の方は九%減りますけれども、供給能力は一七%減るということで、多くの方が日本国内に住む人が減るので物が売れなくなって、そしてデフレがもっと悪化するというのとは逆に、むしろ物がつくれなくなるという方が問題化してくるというふうに考えております。
 通常の生活に例えれば、お客は人口減少でどんどん減っていくわけですけれども、物を売るお店の方も、これは働く人がいなくなるのでどんどん潰れていくと。お客が減るスピードとお店が減っていくスピードとどちらが速いかといえば、お店がなくなるスピードの方が速い。どっちがより困るかといえば、困るのは買物をしているお客の方であって、店の方はお客の総数は減るにもかかわらずお店一店当たりで見ればむしろ客の数は増えてしまうと、そういうことが起こるというふうに考えております。
 それでは、その今の現状をうまく説明しないではないかということでございますけれども、これは私はこういうふうに考えております。総人口がどんどん減っていくということは、これは今我々がつくっているような物の需要はそんなに増えないということでございます。幾らお金ができたからといって一人の人が車を十台も二十台も買うわけでありませんので、総人口が減っていけば、車とかテレビとかパソコンとか、一人で二つも三つも要らないというふうなものはそれほど売上げが伸びるはずがないと、こういうことであります。
 一方で、介護施設には非常に長い列がございます。そして、子供を預けて働こうとすると、これは学童とか保育園には非常に長い列ができております。ここでは明らかにその供給の不足ということが起こっているわけでありまして、需要不足だ需要不足だと、こういうふうに言われるわけでありますけれども、需要不足と同時にとんでもない供給不足というのも日本にはあるということであります。
 需要不足がなぜ起きるのかといえば、もはや日本ではそれほど必要としていないようなもの、これからは人口が減るので、それほど売上げが伸びないようなものを一生懸命つくろうとする。それは人がそれほどおりませんので、海外に持っていって売るしかないと、こういう形で国内では需要不足ということが起こるということでありまして、一方では、必要なものは供給しようとしないわけでありますから供給不足のままということで、みんながあれが足りないこれが足りないと、こういう文句を言い続けると、こういうことだというふうに考えております。
 消費が伸びない理由は、何よりも家計の所得がないということでございます。よく言われますのは、日本の家計というのは貯蓄が好きなのでお金を渡してもみんな貯金してしまうと、だから家計にお金を回してもしようがないと、企業にお金を回せば設備投資をするのでGDPが増えると、こういうことを言われるわけですけれども、これがどうも大きな間違いでございまして、今の話は、私、「貯蓄率ゼロ経済」という本を書きました。一九八〇年代から九〇年代にかけての日本経済をうまく説明しているわけでありますけれども、最近のところでは大きく変わっております。
 一九八〇年代には日本の家計貯蓄率が二〇%近くありまして、米国の家計貯蓄率は一〇%ぐらいということで日本の貯蓄率が非常に高かったんですけれども、最近の数字を御覧いただければ、このちょっと薄い茶色の線でございますけれども、アメリカの青い線の下側に来ておりまして、アメリカよりもはるかに貯蓄率が低くなっていると。ほとんどゼロに近いようなところまで下がってきております。したがいまして、日本の家計はお金を与えても全部貯金をしてしまうという話ではもはやなくなっている、それはもう二、三十年前の話だということであります。
 一方、じゃ、国内で誰がお金をたくさんためているのかということでありますけれども、これは部門別に見た資金が余っているか足りないかという話でありますけれども、一九五〇年代、六〇年代、七〇年代と、まあ九〇年代まで、白い線の企業部門というところは常にお金が足りなくて、家計からお金を借りて設備投資をしておりました。ところが、二〇〇〇年代に入ってから、今、日本の国内で一番お金が余っているのは誰かと言われると企業でありまして、ここが大量にお金を余らせているという状況でございます。
 私の考えは、企業部門に滞留しているお金というのをもっと家計の方に回さないと消費が増えないと。家計は、そもそも所得がないので消費ができないという構造になっているということでありまして、お金がもっと家計の方に回るような、そういう政策を取っていかないとうまくいかないだろうと、そういうことでございます。
 どうも失礼いたしました。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を待って着席のまま御発言くださいますようにお願いをいたします。
 なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、答弁を含めた時間がお一人十分以内になるよう御協力のほどお願いをいたします。
 それでは、質疑のある方、挙手を願います。
 尾立源幸君。
○尾立源幸君 民主党の尾立でございます。両参考人、大変ありがとうございました。
 まず、藤井参考人に御質問させていただきたいと思います。
 力強いプレゼンテーションで、大変感銘をいたしました。私も先生の書かれていらっしゃる分散型国土の実現、そういうのも大変必要だと思っていますし、特に今日お話しいただきましたデフレからの脱却というのも、本当にこれは政府、国会挙げて今必死で取り組んでいることですので、大事だと思っておりますが、その上でお聞きをしたいんですけれども、先生、年間二十兆円、五年間で百兆円ぐらいの公共投資が必要ではないかと、このようにおっしゃっております。お話を聞きますと、建設国債で賄えばいいんじゃないかということなんでしょうが、それにしても、最終的な財源、償還財源等含めて、これをどのように考えていらっしゃるのかということを一点お聞きしたいと思います。
 そしてまた、乗数効果の話をされました。非常に興味深い、デフレ下で乗数効果はこれ高いんだということなんですけれども、これは単に民間の需要を圧迫しないという、クラウディングアウトがないということだけなのか、それともほかに何かあって、乗数効果がどのぐらい計算値として高いのか、分かれば教えていただきたいと思います。
○参考人(藤井聡君) どうもありがとうございます。
 では、財源の方からお話ししたいと思います。
 財源にはおよそ三つほど、ないしは三つないしは四つの財源があると思います。一つは、このスライドを少し御紹介したいんですが、こちらのグラフを御覧ください。これは民間銀行の借りている、民間銀行の預金と、それから民間銀行が誰かに貸しているお金のグラフであります。下の方が預金であって、デフレーションになってから預金はどんどんどんどん大きく増えていっていると。これは、家計もそうですし、先ほどのお話ですと法人も含めてとにかくみんな貯金をするようになっていると。その一方で、投資の意欲が全然デフレになると湧かないので、誰も借金をしなくなって貸出金が、銀行が民間に貸すお金がどんどん減っていると。デフレになる前はこの貸出金と預金というのが均衡していたんですが、残念ながらデフレーションになって、みんなお金を預けるけれども、みんなお金借りなくなってくるので、どんどんどんどん銀行にお金がだぶつくようになって、この時点で百六十六兆円、今日時点だと百七十兆円規模になっているんじゃないかなと思いますが、ここに余ったお金が一つあると。このお金を建設国債を発行することを通じて吸い上げて、それで、これは経済用語で言うと還流というんですけれども、使っていくというのがあります。これが一つ目の財源であります。
 ところが、これはかなりの部分、今、この百六十六兆円ないし百七十兆円の部分というのは既に建設国債、国債に化けているところがあります。したがって、これをずっと続けていると、そのうちこれ原資がなくなってきます。実は、これは民間銀行だけではありません。例えば保険とかいろいろな金融機関にも同じような事情があるんですが、だからといって、百兆円ぐらいやっていると、そのうちそこの民間資金というものも枯渇してくるかもしれないと。そのときに何が必要になってくるかというと、日本銀行の金融政策が必要になってくると。要するに、国債を、これは民間銀行に国債を買ってもらうわけでありますけれども、民間銀行がおなかいっぱいになってきたら日本銀行にも買ってもらうようにすると。その辺りはきちんと日本銀行と政府の間で、アコードといいますけれども、いろいろと、きちんとしたアコードというか、要するに話合いをして、日本銀行の買いオペレーションを通して資金を調達していくと、これが二つ目であります。
 それをやっていきますと、しばらくこれを続けていきますと資金がかなり市場に回ってくるのでインフレーションになってきます。デフレーションがなくなって、デフレが脱却でインフレーションになってきます。インフレーションになるということは、例えばGDPが五百兆か六百兆になるということは、単純計算で五分の六倍に税収が増えるということであります。実際は、税収というのは累進性というものがあって、累進課税とかの問題があって五分の六倍以上に伸びます。あるいは、法人税というのは全然払っていない企業が七割ぐらいいるわけですけれども、これが払うようになるのでGDPの伸び以上に伸びます。これが三つ目の財源であります。すなわち、経済成長を通して、税率を上げなくったって税収が増えていくと、これが三つ目であります。
 四つ目はどこにあるかというと、そうなっていくと、これがうまくいくと、大体ここまで来るのに百数十兆円僕は掛かると思います。マクロ計算、マクロシミュレーターモデルのいろいろな計算方法があるんですけれども、百数十兆円でここぐらいまで何とか来るんじゃないか。こうなったときに、場合によっては、例えばコアコアCPIという一つの尺度で、要するにインフレ率が四パーとか五パーがしばらく続くようになるかもしれないと。そうなると、インフレ不況の危機に我々は対処しないといけなくなってくると。だから、このときに、先ほども御紹介したような、経済というのが温かくなり過ぎているので、それを冷ますための消費税増税を行えばいいんです。この消費税増税を行うと更に税収が増えるので、これが四つ目の財源になるということで、ここまで考えれば、例えば百兆とか二百兆の水準が調達できないということは絶対にあり得ないと私は学者として断定しておきたいと思います。
 それと、もう一ついただいた御質問が何でしたですか。
○尾立源幸君 乗数効果。乗数効果。
○参考人(藤井聡君) ああ、そうですね。乗数効果ですが、一つは、クラウディングアウトがないというのが一つであります。
 もう一つは、実は、通常の乗数効果という言葉の中には、いろいろと定義にもよるんですけれども、ほとんど今議論されていないものがあって、今公共投資をがんとやらないと、どんどんどんどんデフレギャップが埋まらないでGDPが下がっていくと。ところが、がんとやるとデフレギャップが埋まると、一旦デフレギャップが埋まれば、それで景気というものはぱっとうまいこといくんですね。
 これは、ちょうど今その研究をやっているんですけれども、デフレ期とインフレ期でマクロシミュレーターのパラメーターというものが全然違うんです。これ、要するに、期待が変わったりとか、デフレのときに何ぼ投資しても、何かみんな貯金ばっかりしたりとかという気分の、マインドセットというんでしょうか、そういうものがインフレセットとデフレセットで全然違うんです。それが、スイッチが切り替わるんですね。
 がんと大きく入れて、しばらくそれをとんとんとんと、全治三年か五年か分かりませんが、それをやっていくと、マクロシミュレーター的に言うとパラメーターが変わる、すなわち世の中の経済の流れ方が変わるんです。それが莫大な乗数効果を生むんですね。通常これは乗数効果と呼ばれていないんですけれども、要するにクラウディングアウトがないというところと人々のマインドセットが変わるという、この二つを併せるともう莫大な乗数効果があると。
 通常言われているのは、これ是非覚えて帰っていただきたいのは、内閣府の、今内閣府が持っていらっしゃるマクロシミュレーターの乗数効果は二年目に一を切るという訳の分からないモデルになっているんですけれども、あっ、もったいない、時間が。済みません。
○会長(鴻池祥肇君) ごゆっくりどうぞ。
○参考人(藤井聡君) 済みません。十分以内にしゃべらなあかんのかなと思って。
 物すごい大事なグラフがありまして、内閣府のモデルがちょっと挙動が不審であるという証拠がありまして、その証拠をちょっと御覧に入れたいなと。済みません、何か変な時間使ってしまって。
 これは、逆なんですが、公共投資を一%削ると逆乗数効果があって、通常は御覧のように、例えば東洋経済のエコノメートですか、のシミュレーターだと、一%公共投資を削るだけで三・五%以上、名目GDP、これ名目だったと思いますけれども下がっていくと。低いやつでも例えば二%ぐらい下がっていくというのが、二%から三%ぐらい下がる、これは、増やすとこれ逆になるんですけれども、というのが世界中というか、もう普通のシミュレーションモデルの挙動です。
 ところが、内閣府のモデルだけ何か、酔っ払ってはるのか何してはるのか分かりませんけれども、これ何か、削ったら伸びとるんですよ、これ。何してんねん、自分、みたいな感じ。これは逆に乗数効果が極端に低いモデルになっていまして、ここは是非是正いただかないといけない。
 そういう意味で、乗数効果、通常は大体二から三とかぐらいには五年ぐらいやっていると行くんじゃないかなというふうに思われます。
 以上でございます。
○尾立源幸君 じゃ、最後に櫨参考人に一点だけ。
 今回、二月十四日、日銀が政策決定会合で政策を新たに出したと思います。その評価、お願いできますでしょうか。
○参考人(櫨浩一君) 今回の決定会合では日銀は二つのことをやっておりまして、一つは目標とするインフレ率というのはどれぐらいかということについて、今まで非常に分かりにくかったものを、当面は一%、そして中長期的には二%ぐらいというので、ここを明確化したということと、もう一つは金融緩和を強化したということでございます。
 今までの日銀のステートメントというのは、理解ということで、いま一つ、どういうふうに思っているのかというだけで、そこに持っていくとか、そういう意識がはっきりしなかったという意味で、日銀が一%ぐらいを目指して政策をやるんだということが明確化されたということは金融市場にとっても非常に分かりやすくなったという点で良かったんではないかというふうに思っております。
 ただ、金融政策で何でもできるという、そういう主張も経済学者の中には一部あるわけですけれども、私は余りそういうふうには考えておりませんで、日銀はそれを頑張りますという、そういう声明は非常に力強くて良かったんではないかというふうに思うんですけれども、それで必ず達成できるという話でもなくて、経済全体がもう少し成長率が高くなっていくとか、そういう構造政策も同時に必要だということで、日銀単独でできるという話で、全部日銀に任せておけば問題は解決するという話じゃないというふうに思っております。
○尾立源幸君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 次に、義家弘介君。
○義家弘介君 自由民主党の義家弘介です。
 両参考人、本日は本当にありがとうございました。
 まず、藤井参考人から、根幹的なことをちょっと質問してみたいなと思うわけですけれども、まず、先ほど、ほとんどのマスコミはパターンAと、もう構造改革と自由貿易推進という方に傾いていて、国民が総勘違いのデフレが起こっているというお話でしたが、マスコミはなぜ、ならばそういう論調で議論を展開し、国民を巻き込んでいると参考人はお考えかということをまず一点目です。
 それから、二つ目ですけれども、私、元々高校の政治経済の教師だったわけですけれども、参考人の方針というのはまさに、ある意味では教科書の根幹どおり、デフレのときはどうするか、需要と供給のバランスをやるにはどうするかという、教科書どおりなわけですけれども、今は大学で教壇に立っていますが、学生と一九二九年以降の世界の、世界恐慌からどう乗り越えるかという話を学生としたときに、イギリス、フランスなどの植民地があった国はブロック経済政策、つまり、現在でいえばTPPだとか、ブロック圏、経済圏をつくっていくという対策、アメリカのニューディール政策、そして何も決まらない政治が全部悪いんだということでファシズムという、この三つが今の日本で三つとも起こっているだろうと。TPPの参加議論をどうするか、もっと自由貿易圏をつくっていくべきじゃないか、あるいは復興でとにかくいち早くニューディールをすることが先決なのではないか。
 私、東北なので、実はパターンBが学生たちの圧倒的な思いと、もう一方で、何も決まらない政治が全部悪いというCの声も出ているわけですが。先生、九〇年代からこういうことをやっていたんだからデフレになるのは当たり前だという話ですけれども、なぜ歴代政府はその当たり前の必然をやり続けてきたと先生は分析していらっしゃるのか、是非この点についてお答えください。
○参考人(藤井聡君) どうもありがとうございます。
 そのお答えは、まず皆さんに直接お聞きいただかないと分からない、新聞社に聞いていただきたいというのがまず第一点でありますけれども、推測をいたしますとこうではないかと思います。
 これ、何でこういうふうになったのかということについての本も今ちょうど執筆中なんですが、一番大きな問題は学者の責任が僕は大きいだろうと思います。
 そもそも、ケインズ政策はケインズが考え出したことですし、新自由主義的なものも、例えばフリードマンが今ドライブしたり、その根幹にあるのは、いろんな経済学者の先生方がおられる。結局、経済の政策というのは、実はアカデミズムの学界の流れに、まあタイムラグがありますけれども、相当支配されていると。
 今の日本の経済学界は、本当に、新古典派経済学と言いますけれども、もう少し思想的に言うと新自由主義と言いますけれども、これの影響力が極めて強いです。その影響力は最初のころはそれほど大きくなかったんですが、そういう大学システムで何年も何年も同じ人がずっと教育をしていると、そのうち助手も准教授も全員その思想になると。そうじゃないと論文書けないということになって、ポジションがなくなっていくと。そのうちに、そこで、日本で一番優秀な東京何とか大学とか一橋とかなんとかと、もう、一個しかないんですが、京都大学とかも含めて一番優秀なやつが、えりすぐりのやつがそこに行って、世間のしゃばのことも何にも知らぬやつが勉強だけして、それを徹底的に勉強して、周り見たら大人がみんなそれが正しいと言っていると、それはそれが正しいと思うようになって、その人が何とか省とか何とか省とか、それでマスコミにも入っていくわけです。多くの一流企業のトップにもこうなっていくと。それが九〇年ぐらいになってくると、おおよそ学者の理屈ばかり、頭でっかちのやつが大体日本の中枢に居座ってきたのがやっぱり九〇年ぐらいからになってきて、そうなってくると、インテリと呼ばれる人は皆、大体新自由主義的な感じになってきていると。
 僕は、その根幹にあるのは、一つは大学がきちんと議論をやらなかったからだと思うんです。僕がここで申し上げているのは、実はケインズの理論とあるいはその新自由主義的なものと僕はスイッチをすべきだと言っているんですが、これはケインズの方々は僕は非常にお世話になっているので余りこういうことを申し上げると恐縮ではありますけれども、ケインズの方も含めて、ケインズのことを研究されている方はケインズのことしか知らない。これはもうタコつぼになってしまうところです。新自由主義的な方はこっちしかやらない。それをチェンジするというプラグマティズムの概念というものがこの学界の中にないのでそうなってしまっているというのが僕は大きいんじゃないかなと思います。
 ただ、そうはいっても、実は、皆さん御案内のとおり、実はいろいろな、新自由主義というのは大企業が非常に大きな利得を得るという傾向もありますから、その政治資金の流れとかマスコミのスポンサーの流れということは、それが無関係かどうかは僕はちょっと何とも言えません。関係があるのかもしれません。あるいはアメリカの国益からしても、日本の新自由主義が広まるとアメリカの大企業が入ってこれるということを考えますと、アメリカの意向というものが大きく関与している可能性は僕は否定はできないと思います。その辺りのことからこの八八%という状況になっているんじゃないかなと思います。
 今の学生さんの話でありますけれども、僕が学生ぐらいのときには、やっぱりファシズムかTPPかみたいな感じの、AかCかみたいなことが多かったと思いますけれども、最近の学生さんは本当にデフレでもうええかげんにしてくれみたいな感じが増えているので、もうがっつりとBが、やっぱりちょっと教えないと無理ですけど、もう三十分ぐらい問答したら、それはもうBでしょう、藤井先生と言わないのはやっぱり頭ちょっとおかしい、いや、そんなん言ったら駄目です、いや、何かちょっとどうやろみたいな。だから、普通の脳みそを持っている京大生ぐらいやったら、それはBでしょうって大体なりますですね。
 以上でございます。
○義家弘介君 ありがとうございます。特に私の教え子が東北地方の生徒たちというところもまた大きくて、そういう公共投資でどんどん牽引していってほしいみたいな思いがすごく強くて、一生懸命私も学ばせてもらいながら生徒たちと、学生たちと歩んでいます。
 続いて、櫨参考人にお尋ねしますけれども、持続的な内需拡大はどうすればいいのかというところ、これ持続的に内需を拡大させることというのは、これ全員共通、そうしていかなければならないんだろうなという思いなんですが。
 先日、ある企業家に聞いたとき、私、それも一理なんだろうなと思ったことがありまして。現在のデフレというのは、単純に供給過多になっているからデフレという見方は短絡的過ぎると言われたんですね。ほう、それはどういうことですかといえば、日本国内のフレームの中で作った商品と人件費が物すごい安い外国で作っていた商品では全く値段が違うと。つまり、日本国内で作った商品と外国から来た商品がほぼ製品の質が同じならば安いそちらの商品に飛び付くと。その証拠に、君、百均行ってみなさいと、みんなどれだけ物を買っているんだという話で、同じものを日本国内で作ったら当然高くなる、だから、供給過多のデフレというよりも、圧倒的に値段が違うものが同じ土俵の上に上っているということのデフレなんだとその経営者の方はおっしゃっていましたけれども、この辺についてのお考え、是非お聞かせください。
 まず、持続可能な内需拡大をどうすればいいと櫨参考人はお考えになっているかと、このデフレというものの見方について改めてお願いいたします。
○参考人(櫨浩一君) まず、第一点目の持続可能な成長ということでございますけれども、私は、これは非常に少数意見だということはよく認識しておりますけれども、今まで我々がやっていた経済政策の考え方を少し反省してみる必要があるんではないかということでございます。
 経済政策の考え方というのは、短期的な景気の変動というのは、藤井参考人がおっしゃっているように、ケインズ政策で需要の方を調整をするということで何とかすると、そして長期的な経済成長は供給力を増やすという、二分法で経済学者は考えるわけです。
 供給力を増やすということは、設備投資をしたり、あるいは構造改革とか規制緩和をやってどんどん生産能力をアップするということをやっていくわけですけれども、この結果、需要が思ったとおり付いてこないと現在のデフレみたいなことが起こってしまうということで、生産能力が増えさえすれば長期的にはいずれ経済の需要の方が自動的に市場メカニズムで追い付いてきて経済はうまく回り出すんだという、そういう考え方を少し反省をして、需要の方がなぜ、日本の場合にはもう一九八〇年ごろからかと思いますけれども、三十年以上にわたって需要不足がずっと続いているのかというところを考え直すということで、私の考えでは、これは供給力を増やすための設備投資とかそちらの方に力を入れ過ぎたということで、もっとみんなで消費を増やすという方向にお金が回るように経済構造自体を変えていくということを考えなくてはいけないということでございます。
 二つ目のデフレの原因で、国内の供給過多だけではなくて海外から安い製品が入ってくるからではないかということでございますけれども、これは一つ、日本がデフレになっている原因としておっしゃるとおりかというふうに思います。
 ただ、例えば中国が急速に生産力を上げてまいりました二〇〇〇年からリーマン・ショックの前ぐらいの時期を考えてみますと、安い中国製品が国内にどんどん入ってくるということが起こったのは日本だけではなくて先進国全部がそういうことを経験したわけであります。むしろ日本は、中国製品の輸入というのは伸びが低かった方に属するかというふうに思うんですね。そういう中で、日本だけがデフレになってヨーロッパもアメリカも特にデフレというふうになったわけではないということから考えると、貿易で安い製品が入ってくるから物価が下がるというのは、物価が上がらない一つの原因ではあるわけですけれども、これが主犯ではないというふうに思います。
 貿易を通じて非常に大きいのはやはり円高ということで、これはアメリカやヨーロッパにはなかった問題でありまして、ドルもユーロもそれほど、例えば人民元に対してどんどん上昇しているというわけではなくて、むしろ人民元は対ドルでは上昇しているわけですから、アメリカから見ると中国製品は為替が切り上がってどんどん高くなっていくということが起こっているわけですが、日本の場合にはどんどん円高が進んでおりまして、輸入品の値段が単純に安い物が入ってきているということだけではなくて、為替レートを通じて更に安くなっていったと。これも輸入品の値段が下がって物価を加速させる一つの原因だったかというふうに思います。
 なぜ円高になったのかというと、また話が元に戻ってしまいまして、輸出で経済成長をしようということを考えて一生懸命輸出をしたので、黒字が増えてしまってそれで円高になったということなので、輸出をどんどん増やして経済成長をしようというこの基本的な戦略に誤りがあったということではないかというふうに考えております。
○義家弘介君 ありがとうございます。
 そして、お二人とも少子化が経済成長の妨げというよりはという形で議論を展開していただきましたが、私も多くの若者と話す中でちょっとこれは驚くなと思うんですけど、別に欲しい物はそんなにないということをよく聞くんですね。でも、我々が若かったころあるいは幼かったころは、こんな物も欲しい、大人になったらこんな物も手に入れたい、こんな物もあったらいいなというふうに思っていたわけですが、今彼らの口から特にこれ以上欲しい物ってないという、非常に購買意欲というものにすごく停滞感を持っているので、この辺もやっぱりしっかり見詰めていかなければこれから先非常に問題だなと。スポーツカーなんかが全く売れない理由も若者たちの志向、車なんか要らないという、これは都会限定のことでしょうけれども、そういうところも含めて、先生方の御意見を参考にしてこれからも私考えていきたいと思っております。
 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 竹谷とし子君。
○竹谷とし子君 公明党の竹谷とし子です。
 藤井参考人、櫨参考人、本日は大変参考になるお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 藤井参考人は、昨年の参議院復興特別委員会でのお話に引き続き、今日も前回にも増して情熱的な説得力のあるお話をいただきました。
 公明党も防災・減災ニューディール政策ということを出させていただきまして、災害に強い日本をつくると同時に経済も成長させるという、そういう政策を出させていただいております。本日の先生のお話にも大変賛同する部分がたくさんございました。
 資料の十六ページに一九九七年から日本だけが公共事業を大きく削減したという、平成八年を起点とすると平成二十一年時点では日本は半分になっているのに対して、イギリスは三倍、アメリカは二倍、フランスも二倍近くというような大変興味深いデータを付けていただきました。
 私も、公共事業の老朽化ということを考えますと、日本でも、無駄な公共事業を削減するのは絶対に必要でありますけれども、削減した分を、必要な部分はたくさんあるわけですので、そういった部分に投資するべきであったというふうに考えております。イギリスやアメリカがこれだけ公共事業を増やしているわけですけれども、どういう分野に公共事業を増やしたのか、何か方針のようなものがあったのかということをお聞きしたいというふうに思います。
 当然、日本で公共事業を批判された象徴的なものというのが稼働率の低い箱物であったりとか地方の道路をまだ使えるのにもう一回掘り直して造り直したりとか、そういったことであったかなというふうに思います。そういった無駄な公共事業を防止するために私はアセットマネジメントの考え方が重要であるというふうに考えております。そういった、無駄な公共事業を減らして本当に必要な公共事業にお金を使えるようにするための方法論のようなものがあれば教えていただきたいというふうに思います。
○参考人(藤井聡君) どうもありがとうございます。
 まずは、諸外国が何でこんなに増やさはったんかということでありますが、まさに今御指摘あったようにインフラ更新に相当のお金を割いているということであります。
 この中でアメリカが一番典型でありますけれども、八〇年代までアメリカもちょうど今の日本と同じような格好で、公共事業はもうたくさん造ったから要らないんじゃないかということでかなり削られてきたところがあったんですが、それ削り過ぎて、ちょうど今の日本と同じようにインフラが老朽化が激しくなって、ちょうどなぜか、なぜ八〇年かというと、アメリカは一九三〇年ごろにニューディールのときにたくさんのインフラ投資をして、それから五十年ぐらいの一九八〇年代にインフラが老朽化したんですけれども、日本の場合は、一九六〇年ぐらいから大きく高度成長をしますが、それから五十を足してちょうど二〇一〇年ということですから、ちょうど今一九八〇年代のアメリカと似たような状況にあるんですが、その意味で、アメリカはそういうふうにしてきてたんですけれども、そのせいで重要な橋が幾つも落ちてしまって貴重な人命が失われ、橋がなくなると経済が、都市経済というのは極めて深刻なダメージを受けるという問題が多く起こりました。
 それで、アメリカの世論は羨ましいなと思うんですが、それを見て、こんなんあかんやないかということで、インフラちゃんとお金使わぬと危ないやないかと世論が起こって、それでガソリン税の増税なんかを行ったりしながらかなりのお金をインフラに使うようになっていきました。その結果、アメリカはこの二倍ぐらいになっていると。アメリカと同じように諸外国もそういうような状況であると。
 更に、単なる維持補修だけではなくて、新しく物をつくるんだからよりいいものをつくろうじゃないかとか、あるいは、日本は鉄道先進国だったので日本の鉄道の投資というのは昭和時代にかなり進んだんですけれども、その日本の繁栄を見た諸外国が、もう今やアメリカなんかも言っているんですけれども、新幹線投資を始めとして鉄道もやろうじゃないかということになる。さらに、IT機器のインフラ投資とか、新しい産業に対する投資も行っていったと。ということで、メンテナンスと同時に新しい新産業をつくっていくと。新産業のためのインフラをつくっていくと。いずれにしても、インフラをきちんとつくっていくということを諸外国は徹底的に進めたので彼らは経済成長をし続けたということが一点あるのではないかなと思います。
 アセットマネジメントも含めて合理的な公共投資をするためにこの国に何が必要なのかというのは、私は、一つ、もうこれが一番大事だと思うことを申し上げたいと思います。それは、合理的な国土計画を立てるべきだということであります。
 現代の、あの四全総、五全総があって、それから今、国土形成計画という格好になっているんですが、もうはっきり言いまして、五全総の時代までの全総と呼ばれていたものと今の国土形成計画とはもう全く内容が変わっています。単なるお題目ばっかりで、何のもうプランニングにもなっていない。僕は計画が専門でありますけれども、もうこんなもの、全部ごみ箱に入れて最初からやり直さなみたいなものになっております。
 これをきちんと合理的に、これはちゃんと、市場の論理じゃなくて、これはきちんと、計画というのはインフラ投資とか、これらの国が全部やっているのは、きちんと合理的な計画を立てて、マネジメント、それこそアセットマネジメントをしながら、状況も勘案しながら、しかもプランニングを立ててやっていくと。その計画部門が今、日本においては非常に弱いと。
 ですから、防災ニューディールをやられるときに、是非、防災ニューディール基本計画とか、あるいはその上位に位置付けられるところの国土計画、今だったら国土の強靱化の基本計画、そういうものを、それはインフラの投資とか更新だけじゃなくて、ソフト政策も全部含めたものとして合理的な計画をこの国において作ると。しかも、それを単年度主義ではなくて十年とかそういう格好で作っていく必要があると。
 なぜかというと、日本においては、過剰に自由市場に委ね過ぎてこの国はこれだけ脆弱化してしまったので、その反省を踏まえてきちんと、資本主義においてもきちんと計画というものは全ての国がやっていることでありますから、全て何もかもフリードマンが言うように自由化するのではなく、計画と自由というものをきちんとバランスを取りながら、先生方のお力できちんとした計画を立てていきたいというふうに思います。
 以上でございます。
○竹谷とし子君 ありがとうございました。
 続いて、櫨参考人にお伺いしたいと思います。
 今日の消費重視の経済成長戦略ということでお話を伺いまして、大変興味深い資料で、十一ページのところで御説明をいただきました資金が大量に余っている企業部門というところ、また日本の家計がお金をため込んでいないと、貯蓄率が今既に米国よりも低くなっているような状況であるということをお伺いいたしました。
 一九五五年代からのグラフでは、以前は民間で資金が余剰している分を企業が借りて経済が回っていたと。今は逆に企業がお金が余っているようなそういう状況であるということで、この資金の流れを企業から家計にという御提言がございましたけれども、そのためにはどんな政策が有効であるとお考えか、お伺いしたいというふうに思います。
○参考人(櫨浩一君) これは非常に難しい話でありまして、もっと景気が良ければ金利が上がって、例えば今は銀行に預金をしていてもほとんど金利が付きませんで、時間外にお金を引き出すと手数料を取られて、まあ金利よりもよっぽど手数料の方が高いと、こういう状態なんですけれども、ほとんど金利がゼロというような状態から数%金利が付くようになれば自動的に家計の方に利子所得という形でお金が回っていくというのが一つございます。ただ、今デフレで、ここで日銀が利上げをするというのはとてもあり得ない話なので、すぐにはできる話ではありませんけれども、どこかでそういう話も必要になってくるだろうというふうに思います。
 それからもう一つ、今すぐにでもできるんではないかというのは、企業がもっと配当するようなことを考えるということでございます。
 日本の場合には、企業はなるべく自己資金あるいは自己資本を充実させて経営を安定化させるという方向に行きがちなんですけれども、そういうことではなくて、企業がすぐに投資をしないような、手元の資金を余剰にため込んでいるのであれば、それは株主にもっと配当して回すようにすると、そういう考え方があるのではないかというふうに思います。これは法人税の構造を大きく変える話でありますけれども、現在の法人税の考え方は、設備投資をしたり、そういう場合には法人税が軽くなるような形なんですけれども、配当しても、これは法人税が丸々利益として掛かってしまうということで、企業に対しては二重に課税をされるような形になっております。ここを、配当した分については、借入れで利子を払うのと全く同じでありますので、配当に対する控除というのをつくって、もっと企業が配当しやすくするというような考え方が必要ではないかというふうに思っております。
○竹谷とし子君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 続いて、川田龍平君。
○川田龍平君 藤井参考人、櫨参考人、ありがとうございました。質問は両方の方に答えていただいて結構ですので、よろしくお願いします。
 私も、今、企業の内部留保をどのようにして使わせていくのかということが大変今の経済に重要だと思っているんですが、これを今、櫨参考人からお話しいただいたんですが、藤井参考人からも是非お話、聞きたいと思います。そして、やはりこの、みんなの党の政策で、藤井参考人の二十一ページの表を見ますと、インフレという方の政策がみんなの党の政策に多いんですけれども、この増税というのは反対で、消費税増税には今反対をしていて、まず消費税を増税するべきではないというところから、投資減税などもやっぱりこれはしっかりやっていくべきだと言っていますし、できれば、デフレの特に資金の供給というのはやっぱり是非やるべきだと。日銀とやっぱりこれアコードを結んで、政府が主導してやるべきだという立場でやっていまして、本当にこのデフレを脱却することがまず第一であるという話にはすごく同感するところです。
 そういった意味からも、やっぱりしっかりとデフレをまず脱却していくということはすごく大事だというふうに私も思っていますが、特に今、先ほどの大手五紙が一緒の論調であるということが、例えばTPPについても、国民が二分して議論しているときに社説がほとんどもう五紙ともTPP推進という形で書かれていて、本当に大手五紙のやっぱり主張が一緒だということが非常に違和感があったのと、それからこの内閣府の統計データとか調査というのはやっぱり非常に疑ってみないといけないというところ、まさにそのとおりだと思っていまして、最近、「政府は必ず嘘をつく」という本が出ているんですけれども、本当にこういう状態でやっぱり今まで来ているところが、国民をやっぱりある意味、本当に間違った方向に誘導して、今政策の方もやっぱりちゃんと理解しないまま、議論が本当に国会でされないで、本当に国会の議論が十分にされない中で進められていってしまっているということにやっぱり非常に危惧を覚えています。
 そういう意味では、国会の中で本当に自由に議論できる場という、本当にこういう調査会みたいな場というのはすごく必要だと思っているんですが、私としては、本当に今介護とか特に保育の分野というのが、先ほど櫨参考人からも供給がやっぱり不足しているというところをどういうふうに増やしていくのか、特に供給をどのようにして増やしていくのが、介護それから保育といったところで、どういうふうに増やしていくのが適切かということを伺いたいと思います。
 それから、次に、外国に国民が、なかなか若い人が出ていかないんですね。なかなか、先ほど義家委員からも話がありましたけれども、本当に外国に行きたいという実は学生が少なくなっていて、私も大学で教えていた経験から、別に外国へ行きたいという意欲がもうなくなっていて、日本にいればいいというところで、ほとんど、海外に行って何か経験してこようという、その意欲もなくなっているようなところがあって、本当に、そうじゃない人もいるんですけれども、だんだんと何か少なくなっているような印象を受けます。そういうような中で、やっぱり本当にもっと国民を、外に行くことによってもっと外貨を稼いでくるとか、本当にそういったことをやるというのはすごく大事なのかなと思っているんですが、それについてどう思うかということ。
 それから、公共事業についてなんですが、これもやはりこれから公共事業というのは大きな箱物や大型公共事業というよりも、本当に橋を維持していくとか、今あるインフラを整備していく、それをまた修理をして、工事をしていくということ、それが本当に支出が莫大なものになっていくと思うんですが、そういったものをやっぱりしっかりやっていくことは私も大事だと思っているんですが、今、文化事業を、かなり公共のものを削るということで、大阪府とか大阪市とか、今オーケストラとか音楽予算をどんどん削っていますけれども、文化予算を実は本当はもっと公共支出として出していく必要が僕はあるんではないかと思っているんですが、それについてどう思うかということ。
 最後に、大きな公共事業としては、ただ、ほかで箱物は無駄だと言っていながら、私は首都移転をしたらいいんではないかと実は思っていて、東京選出の議員でありながらそういうことを言う人はいないと思うんですが、私は副首都構想というのが、これは危機管理都市推進議員連盟というのが今ありまして、その議員連盟でも東京の地震とかに備えて関西の方に副首都をつくるべきではないかという話が進んでいます。それについて、私は、関西も実は南海地震の予測もありますし、東南海、東海とある中で、やっぱりこれからもっと本当に災害に強いところに首都をちゃんとつくっていくべきではないかと。これは岡京というのが実は言われていまして、岡山に首都をつくるべきだという話も、べきというか、そういう話もあるんですけれども、そういう何か、岡山にこういう首都を移転するとか、それから公共交通というところをもっとしっかり整備していく、例えばLRTとか、やっぱり本当にやるべき公共投資というのはもっとあるんではないかと思っているんですが、それについて、藤井参考人、櫨参考人からそれぞれ御意見いただけるところでいただければと思います。よろしくお願いします。
○参考人(藤井聡君) それでは、幾つかまとめてお答えしたいと思います。
 まず第一点目は、二点目にお話しされましたここの表の考え方ですよね。この表の整理は、これは我が藤井研究室でこういう整理を中野准教授とやっているわけでありますけれども、こういう整理をしている理論というものはほとんどございません、いろいろ調べましたですけれども。こちらの人はこちらばっかり、こちらの人はこちらばっかり。それぞれいろんな学者の話を聞いて、これもこれも良さそうだからってまとめてしまうんですが、それすると、アクセル踏んでブレーキ踏んだりすることがあるので、是非こういう整理をした上で政策というものを組み直していただきたいと思う。
 学者側がこういうのを間違えるのは恥ではありますけれども、先生方は政策というものはトライ・アンド・エラーでやっていただくことでございますから、是非こういうものを参考にしていただきながら経済政策というものをしていただきたいと思います。今必要なのは温めるという方であるということを申し上げています。これが一点目であります。
 二点目の、最初にお話しになった法人の中の内部留保金問題、これの解決の方策は、これは、この状況下で藤井、何を言っているんやと僕これ言われると思いますけれども、学問的な、歴史的な裏付けがあることとして申し上げますけれども、今やるべきは法人税の減税ではなくて増税であるというふうなことを申し上げたいと思います。これは、えっ、藤井さん、逆やないかと言われるかもしれませんけれども、こうなんです。歴史的に言いますと、クリントン政権下において、あのときに財政赤字の問題が大きくなったんですけれども、それをやるために当然ながら増税なき財政再建ということで景気対策をいろいろとやっていって、それで成功して最後黒字化するんですけれども、そのときにやっている重要な話が法人税増税なんですね。
 通常、そんなことをしたら景気悪くなるんやないかということになるわけでありますけれども、今、櫨先生がおっしゃったように、この状況下で内部留保金がたまって、そこに塩漬けになって、たんす預金みたいになるので、これを何とか還流していかないといけないとしたときに、法人税の増税をしてそれでお金を、もちろん、それは法人税の増税をしてそれを何か子ども手当かなんかで配ったら全然意味ないですけれども、これをちゃんときちんとお金が消費か投資に使っていくというのが大事なんですね。
 しかしながら、法人税増税をすると気持ち的に何かやる気がなくなるというところもあるので、僕は、これ理論的には正しいかもしれませんけれども、僕は余り声高にはちょっと言えないかなと思うんですが、ただ、クリントン政権下での成功事例を見ると、理論的には今は法人税増税が必要なんだろうなということを考えると、少なくとも法人税減税は今の状況ではあり得ない話だなということをまず申し上げたいと思います。これが二点目であります。
 若い人の、また先ほど消費のお話もありましたけれども、私はこう思うんです。心理学の中で認知的不協和理論というのがありまして、何かある一つの行動の状況とかがあると、それが嫌やっても、嫌やって思っているとやっていけないので、もうええねん、僕これでって思うようになるんですね。まあ、えらい大ざっぱな説明ですけれども、こういう認知的不協和理論というのがあって、何で若者が車を買わなかったり海外行かないかっていうと、僕、学生とずっと二十年ぐらい付き合っているから分かりますけれども、あいつらめちゃ貧乏なんですよ、昔に比べて。貧乏やから全然物を買えない。だから、いや、いいねん、別にこれでとか言って、中食でいいねんみたいになってしまっていて、だから、先ほどもお話ありましたけれども、所得制約によって皆さんの心根がディプレッション、不況になってしまっているんです。逆に、所得制約なくなってお金があるようになったら、もう外国がんがん行くやつ出てくると思いますよ、スポーツカー買いたいやつ出てくると思いますよ。
 ですから、だからこそ、デフレの問題の一つの末端の精神的問題はここにもあると思いますので、逆にこの心を、何か買物をさせて景気対策じゃなくて、因果関係が逆だと、景気対策をきちんとやることを通じて状況を整えれば、若者は、元々若者ですからもうめちゃめちゃ頑張りますよ、いろんなものを買ったり、いろんなところに行ったりとか元々したいんですから。それをできるためにも、もう是非先生方のお力でデフレ脱却をしていただきたいということであります。
 最後に、箱物といいますか何といいますか、大きな巨大なインフラ投資で何が必要かと。これちょっと、手元にこれないのでここで説明させていただきますと、この表紙どうなっているかというと、新しい、僕の今この本で紹介しているのは国土計画のイメージを書いているんですよ。
 どういう国土計画を僕はやるべきかと考えてみますと、まず、首都直下型地震が来ます。東京、大阪、名古屋もこれ壊滅的ダメージを受ける可能性があります。そのときに一番の防災対策は、実はそこの土地の防災対策のインフラ投資じゃないんです。ここに住んでいる人々の都市機能を日本海側だとか北海道とか九州とかに分散化させたら、そしたらもうその人ら、まあまあ、そっちで地震に遭うかも、それもちょっと不幸ですけれども、もう確率はなくはないんですけれども、こっちの人はみんな生き残るんです。日本中が生き残っていると、東京、大阪、名古屋がぶっ潰れていても、まあぶっ潰れてほしくないですけれども、ぶっ潰れていても助けに行くこともできますし、あるいは全部ぶっ潰れても日本全体はもつかもしれない。だからこそ、今やるべきは日本の国土の分散化なんです。
 それと同時に、当然ながら僕は、それぞれの防災対策とか、いろいろと堤防を造ったりとか液状化対策とかは当然すべきですけれども、それプラス分散化をやるべきである。分散化をするときに、国土計画の中で歴史を見ますと、新幹線投資をした町は間違いなく大きくなります。例えば熊本市、政令市になるじゃないですか。あれは新幹線の見込み需要も含めて、もう間違いなく新幹線投資、だから都市間交通の投資をすると豊かになるんです。
 だから、ここで赤く書いているのは、新しい新幹線を通したりあるいはリニア新幹線を通したりとか、あるいは、僕、昨日、秋田に行っていたんです。秋田とかは単線で、もう隣に行くのに三時間ぐらい掛かったりするので、そこを複線化してあげたりとか、そういう鉄道投資とか、あるいは、別な言い方をしますと、工場立地というのがやっぱり必要なんです。工場立地のデータを見てみますと、高速道路が整備されたところは、例外もあるとは思いますけれども、平均的に言って、高速道路を整備されたところは確実に工場の誘致が進みます。これはもう過去のデータが教えるところです。ですから、国土構造の分散化をするためにも、そういういろんな投資をやっていくべきである。
 だからこそ、先ほど御質問いただいたような、国土計画を本当に、国土強靱化という大きなコンセプトの下で国土計画を作っていくことが必要だろうと思うんです。それプラス、インフラのいろいろなメンテナンスとかというソフトなことも当然やっていかないといけないと思います。
 以上でございます。
○参考人(櫨浩一君) 私は幾つか御質問にお答えしようと思うんですけれども、まず第一に、今お話ありましたのは震災に対する対応なんですけれども、今回は東北地方で、首都が直接打撃を受けたわけではなかったのでそれなりの対応ができたということだと思うんですけれども、首都が被災をすると恐らく首都機能が全く麻痺してしまって、誰も指令をする人がいなくなるという問題があって、これは是非どこかで必ずそういう首都のバックアップ機能をつくって、そこがいざというときには首都の救済のためにいろんな指揮を執るという、そういうスキームを早くつくっていただきたいというふうに思います。こういった組織は日常動いていないと当然機能しないわけで、そうすると、日常ある程度の人がそこにいてそれなりの業務をするということが必要になりますので、それも首都機能の一部をどこかに持っていくと、そういうことになるんだろうというふうに思います。
 それから二つ目は、公共事業のメンテナンスコストの問題でありまして、これはもう十五年か二十年ぐらい前に、私、どんどん公共事業を減らしていったときにどうなるのかという計算をしまして、その結論ではたしか二〇一〇年代の前半にメンテナンスのコストと公共事業費がほぼ同じになると。つまり、公共事業費を全部つぎ込んでも、今持っている道路とかそういったものを維持補修するだけで手いっぱいになるという、そういう計算でございました。
 当時、どなたかから御質問を受けた記憶があるんですけれども、その当時の国土交通省の統計によると維持更新費はそんなに比率が高くなくて、どうしてこんなギャップがあるのかという御質問だったかと思うんですけれども、実際には、例えば首都高速道路とかこういったものは古くなってきて、どこかで完全に架け替えが必要になるわけですけれども、そのための費用がちゃんと積み立てられているわけではないわけであります。ですから、どこかの時点で膨大な社会資本の維持更新の経費が必要になります。
 そういう意味で、全ての社会資本を全部維持し続けるということは恐らく難しくなっていくと。新しいものを造るのであればなおさら、それを造るためにどこかの社会資本がもはや更新することを諦めないといけないという、そういう取捨選択をしないといけないということでありまして、それは国政の中心でいらっしゃいます皆さんが、ここは維持更新が必要であり、ここはもはやコスト的に見合わないので更新を諦めるという決断をしていただくということしかないんだろうというふうに思っております。
 三つ目は、社会福祉の需要に対してどうやって対応していくかということでありますけれども、これは今まで、医療でも介護でもそうでありますけれども、できるだけ公的なやり方で供給をするという考え方でやってまいりました。医療であれば、国民皆保険で、健康保険で基本的に全て主要なものはカバーされているという、そういう考え方でやってきたわけでありますけれども、残念ながら、私どもの組織の中でも、若い人と議論すると、高齢者のための医療費のためにもっと負担をするのは嫌だという、そういう声が非常に強くなってきております。自分の健康のためであれば恐らく誰も費用の支出を惜しまないというふうに思うんですけれども、ほかの人のために支出をするという話になれば当然限界があるわけでありまして、そういう意味で、公的な保険の制度というのはどうしても負担の面から限界ができてしまう。そこの上に、仕方がないので、その一階建て部分の公的な保険の部分に、自分の選択で、より手厚い医療あるいは介護というのが欲しい人は自分でお金を出して乗ると、上乗せをすると、そういうシステムを早く設計していただかないと必要なものは供給されないだろうというふうに思います。
 公的なところで一〇〇%全部カバーできるのが理想的でありますけれども、そのための負担を求めれば必ず反対をする人が出てきて何年たっても実現できないと、そういう形になりますので、ここはやむを得ない話かなというふうに思っております。
 最後に、ちょっとデフレについて。これは藤井先生と少し考え方は違いますし、恐らく皆さんとも大きく考え方が違うというふうに思いますが、現在、我々、デフレの問題に長年苦しんできたので、デフレのリスクというのは非常によく認識をしております。ただ、インフレが起こったときにどういう問題が起こるのかというのは、多くの方々がすっかり忘れているというふうに思います。
 特に、私の研究所などでも、若い研究員は、少なくとも私より若い研究員は、デフレは経験をしておりますけれども、インフレは経験したことがないので、インフレでどういう問題が起こるのかというのは全く知らない。だから、インフレが起きたときに、それは金融引締めをすればいいんだとか増税をすればいいんだという、そういう非常に楽観的な見方をしているんですけれども、一九八〇年代の半ばの、例えばアメリカですね、ボルカーが出てきて物すごい引締めをやるわけでありますけれども、ああいうのを見ていると、決してインフレのリスク、大変そこを乗り切るためのコストというのもばかにはできないということでありまして、我々、両方のリスクを常にてんびんに掛けながら、どちらに重きを置くべきかということは考えていかなくちゃいけないんじゃないかというふうに思っております。
○川田龍平君 私は、公的医療については、やっぱりしっかり国民皆保険制度を守っていくべきだという立場で、若いんですけれども、そう思っていますので、そこは是非やっていきたいなと思っています。
 ありがとうございました。
    ─────────────
○会長(鴻池祥肇君) この際、委員の異動について御報告を申し上げます。
 本日、小西洋之君が委員を辞任され、その補欠として斎藤嘉隆君が選任されました。
    ─────────────
○会長(鴻池祥肇君) 続いて、牧野たかお君。
○牧野たかお君 ちょっと藤井先生は何回もお会いしてお話を聞いているものですから、いつも元気付けられていいなと思っておりますが、まず藤井先生から伺いたいと思いますけれども、当面の話でいうと、国家公務員の削減については、人件費削減、二年間に限ってということで七・八%という合意ができましたけれども、この後二年間で六千億なんですけれども、地方公務員まで波及するとすると更に三兆円削減できるわけですが、先生のその図を見ると、公的雇用を拡大しなきゃいけないというふうにデフレ状態で書いてあるんですけれども、これは人数と給与を削減をするわけですが、当面の話としては今のその方向性についてどういうふうに思っていらっしゃいますか。
○参考人(藤井聡君) 御質問いただいた御意図どおりではないかと思いますが、デフレ圧力を掛ける一つの要素になることはこれは間違いないだろうと思います。
 そのデフレ圧力による社会的な便益、社会的公正の毀損を上回るようなものを別途考え、もうそれは政府合意としてそうなったといいますか、決まったんだったらもう仕方がないのかもしれないですけど、本来はそれはやるべきではなかったと思いますし、あるいは、例えば東北に失業者が十二万人いますけれども、大げさな話でいいますと、彼らを何がしかの形で公的に雇用していくとか、何がしかそれと合わせた対策を行わない限りはデフレ圧力の流れになってしまうだろうと思います。
 私としては、そういうふうにしか今はちょっとお答えできないです。非常に残念な話だと思います。
○牧野たかお君 それでは、櫨参考人に伺いたいと思いますが、非常に愚問といえば愚問かもしれませんが、私、今まで、先生方のように今の財政、金融の話だったりこのデフレ・インフレ理論だったり、いろんな先生方の話聞いているんですけれども、何か思うに、今の自由経済主義というのも、長いスパンで見ても、一九〇〇年の頭ぐらいからと考えても百年ちょっとですよね。その前が帝国主義といえば帝国主義なんですが。ちょっと自由経済主義の中のいろんな、何というんでしょう、システムがもうちょっとおかしくなっちゃっているような気がするんですが。
 一つでいえば、投機のお金が各国巡って、そこによって為替相場が決まったり、要は、マネーと投機のそういう動きというのも規制をしないまま今あるわけですが、各国がいろんな金融対策とか財政のための対策を練ろうとしても、そういう力を抑えられないというか、そこにかき回されてみんな右往左往しているような気がするんですけれども。ある種でいうと今現在の自由経済主義の限界かなという気がするんですが、そういうことはお考えになりますかね。
○参考人(櫨浩一君) 先生おっしゃるとおり、例えば一九三〇年代の大恐慌も、基本的には各国が個別に対応するということでそれなりの対応ができたかというふうに思うんですね。
 ところが、金融市場がもうほとんど一体になってしまっておりますので、例えば日本で金融危機が起きたときに、日本だけで対応していれば何とか問題が解決できるという問題ではなくて、例えば今のギリシャの財政危機にしても、結局、巡り巡ってアメリカの市場も東京の市場もみんな影響を受けると。こういう形でありますので、だんだん、各国それぞれもちろん政策決定の最終的な権限は持っているわけですけれども、経済政策はかなり協調しないと国際的な市場の力に抗し切れないと、こういう話になっていくんではないかというふうに思います。
 自由経済全体については、もう一九〇〇年代といいますか、もっと昔から、結局もっと規制すべきなのかあるいは何もしないのがいいのかという、この間を揺れ動いてきて、二〇〇〇年代に入りましてから規制緩和の方向でどんどん市場に任せるべきだという方向に行った。アメリカなどでリーマン・ショックが起きて、少し、何でも市場に任せればうまくいくという新古典派の考え方はやや行き過ぎたのではないかということで、反対側に流れが戻ろうとしているという、そういう状況ではないかというふうに考えております。
○牧野たかお君 もう一度今度は藤井参考人に伺いたいと思いますが、今の櫨参考人のお話も聞いたらば、そういう流れになりつつあるんだろうけれども、藤井先生のお話を、今日で多分四回目かそこらだと思うんですが、究極の先生の、デフレ脱却というか、日本が要するにデフレを脱却して豊かになるという話だけで考えた場合、極論を言うと、ほとんど貿易をやらないで鎖国状態にしても同じかなと時々お話を聞いていて思うんですが、それは聞いていて私の勘違いというか間違いですかね。
○参考人(藤井聡君) どうもありがとうございます、非常にすばらしい御指摘で。
 理論的に考えまして、なぜ貿易が必要なのか。貿易をすることが我が国国民の普通の人の普通の暮らしの普通の幸せのために必要であるならば、貿易は必要と言っていいでしょう。ところが、そうでないとしたら、別に外国に頼ることがなく自分たちでいろいろな、石油も取れ、お米も取れ、お肉も取れ、いろんな音楽も作れ、いろんな散髪屋もあり、それでもし生きていって国民が本当に幸せだとするならば貿易をする必要は僕はないと思います。これが一点です。
 もう一つ。もしも貿易をする必要があるとするならば、僕たちが幸せになるためではなくて、僕たちが持っている技術力とか財力とかがあれば困った人を助けてあげられるんだったら貿易をしてさしあげて、世界を救うために貿易をするということは僕は当然ながらあり得ると思いますが。自分一人では生きていけないから、商売をするためによその人と貿易をやって生きていきまんねんというのはこれは、男というものはという言葉を昔から日本で言いますけど、独立することが全ての重要な美徳であって、福沢諭吉も「文明論之概略」の一番最後は、自主独立、独立自尊ということを言っていらっしゃるわけですから、貿易という点でも独立するというのは、これは当然ながら全ての国家の究極的な目的だろうと思います。
 しかしながら、現実はそうではなくて、油は出てこないですし、お肉も余り取れへんし、何か外国の方が安いものもあるところもあるし、まあ貿易した方がええかなということで渋々貿易をやっているだけの話であって、本来は日本人が日本人として生きていけれるんだったら、なぜやる理由があるのかということを逆に日本中の皆さんにお聞きしたいぐらいですね。
 以上でございます。
○牧野たかお君 分かりました。結構です。
○会長(鴻池祥肇君) 次に、三原じゅん子君。
○三原じゅん子君 自由民主党の三原じゅん子でございます。本日は、藤井参考人、櫨参考人、貴重なお話、ありがとうございます。
 藤井参考人にお伺いしたいと思います。先生のいろんな講演等、よく聞かせていただいておりますが、今日は経済成長ということなので、そこに絞ってお話を伺いたいと思います。
 政治家は明確なビジョンを描けなければならないと。先生がいつもおっしゃっている、先生流のお言葉をお借りすれば、今でたらめな政策を真面目にやっているという状況なのかと思います。
 今最大の政治課題というのは、先生おっしゃるとおり、思い違いのレジームからの脱却をしていかなければいけない。その中で、デフレの主要因の一つに、先生ここで外交力の低下についてお示しになっていると思います。これ、対中国問題あるいはTPP問題が領土問題に波及してくるんだということ、この辺りについて具体的にお話を一点伺いたいと思います。
○参考人(藤井聡君) どうも御質問ありがとうございます。
 まず、GDPの大きさというものは、経済力がもしあると、更に、貿易をしていろいろなものを、もし内需が拡大をしていると、いろんな中国から物を買ったりとかアメリカから物を買ったりとかすることができるようになると思います。それは二〇〇八年までのアメリカもそうであったわけでありますけれども、どちらかというと、当時のアメリカは貿易不均衡を無理やりつくって赤字化してたくさんの物を外国から買ってやって、アメリカというのは物すごい需要が厚い厚いものでしたので外国から物を買って、中国から物を買ったり日本から物を買ったりすると、これは要するに大旦那さんになるわけですね。大旦那さんというのはお店屋さんからしてみると、いやどうもいつもお世話になっていますと、こうなってくるので、多少無理を言っても聞いてくれたり、あるいは大旦那さんを怒らすと、あんたのところの物は買わへんでと、こうなると、いや、そんなん言わんとと、こうなりますので、そういう意味で、日本に対して、基本的に物をたくさん買ってあげれるような状況になると、我々の日本の顔色をうかがうように絶対になります。
 更に言うと、本当は国債を買ってあげたりとかってアメリカに対してもあるんですけれども、そういうものも含めて、日本の財力が、需要というものがあると、中国とかに対してもいろんなものを買ってあげることを通じて我々が立場上、上になってくるということがあります。これが根底的に極めて大きな影響を及ぼすだろうと思います。
 場合によっては、よく八〇年代なんかでも、北方領土の議論なんかでは、日本の経済力がすさまじかったので、この勢いがあれば北方領土が返ってくるかもしれないというような手記を僕は何度か読んだことがあります。細かいことは当然ながら公開はされてはいなかったですけれども、直接交渉をされた方のお話をお聞きしたときに、いや実は本当に返ってくるような局面があったんだよねと、ところがちょこちょこっと何かあって駄目になったんだと。それは、やっぱりバックに強力な日本経済があって、金で土地を買うというわけではないですけれども、その強力な経済力でもって領土問題の解消がもう一歩のところまで行ったというのは、これは公表はされていないですけれどもこれ間違いのない事実であって、外交官の方は皆さんそれを、そう言われればそうやなと皆さん同意されると思うんです。
 という意味において、竹島問題とか尖閣問題とかも、日本のGDPが一千二百兆もあれば全く違う展開を見せていたであろうことは間違いないんじゃないかなと思います。
 以上でございます。
○三原じゅん子君 ありがとうございます。
 もう一点、藤井参考人にお伺いしたいんですが、国民の幸福度とデフレのかかわりについてというのをお示しになられておりますが、デフレで自殺者が随分増加しているというデータがございますよね。これについてお願いします。
○参考人(藤井聡君) 先ほど櫨参考人の方からも、デフレの恐怖は今の若い人は知っているけれどもインフレの恐怖は知らないと、そういう議論がありましたですけれども、僕は逆に、デフレの恐怖を皆さん過小評価しているというふうに思います。
 そのデータの一つがこちらですね。これが幸福度のデータなんですけれども、これは世界の国民の幸福度を毎年調査するという非常に地道な研究をされているオランダの方がおられるんですけれども、その方が、この赤い方が幸福度平均、日本人の幸福度平均です。ただ、このサンプルサイズがそれほど大きくないので、ある程度安定していなくて上に上がったり下に下がったりとかしていますけれども、間違いなく日本人の幸福度というものは低下していく傾向にあります。
 その一方で、御覧のように、平均所得というのは、実は六百六十万弱あったものがもうこのたった十年で五百六十万ぐらいということで、百万ぐらい、百万以上下がってしまっているんですけれども、それを重ね合わせたグラフなんですけれども。この両者の間で統計分析をしますと、重相関係数で六十数%ということで、要するに幸福度の低下が、見かけの相関かもしれませんが、幸福度の低下の六割ぐらいが貧乏になったことで説明できるというような結果が出ています。もう間違いなく、先ほど外国にも行けなくなったり、車も買えなくなったり、食べるものも安くなったりで、しかもしかも一番問題は失業者が増えているわけであって、失業者が増えるということは、パンが食べられないとかお米が食べられないだけではなくて、人間の基本的な誇りが毀損していくということにもなりますし、失業する人って物すごい不幸になるというのは、これは幸福研究で最も知られていることでありますから、そういうことも含めて、日本人というのは確実に不幸になってきているということが言えると思います。これが一点であります。
 さらに、しかもこれ笑ってしまう、笑ったら駄目ですけれども、九〇年代の幸福度というのはフランスとかギリシャ辺りだったんですが、実はもう二〇〇七年の幸福度はイラン、ヨルダン、フィリピン、スロバキア、シリア、チュニジア、南アフリカ、エジプト、ジブチ、モンゴル、ニカラグア、ルーマニア辺りの国民の幸福度と同じなんです。もう既に日本人は先進国ではないと言っていいと思います。更に言うと、失業率というものは若い人ほど高くなりますので、今の若者の不幸さたるやもうすさまじいものがあるんです。当然ながら、インフレの恐怖というものがあるんですけれども、インフレの恐怖によってデフレ対策をしないのは、僕にとってはこういうことだと思います。
 今、日本は、デフレというものは要するに栄養失調でもうがりがりになって死にそうになっていると、そのときに、昔みたいに何かぎょうさん背脂のラーメンとか食べとったら肥満になるから食べるのやめようとか言うてる、何言うてるんやろみたいな感じ。まずは、ちょっとぽってりしてから肥満のことは考えたらいいのであって、今死にかけているわけですから、もうデフレ対策をしないと本当に死にまっせと。
 実際に死んでいるのがこのグラフなんですよ。デフレというのはいろんな統計の取り方がありますけれども、一九九七年から九八年辺りに、ちょうどそのときに、もう徹底的な行政改革が行われたあの年です、増税も行われたあの年から、御覧のように日本の自殺者数というのは、この一番上のグラフを見ていただくと大体二万人強を推移していたんですが、これももうびっくりするぐらいのグラフでありますけれども、この一九九七年、八年において一万人も自殺が増えて、それ以後ずっと増えっぱなしなんです。したがって、デフレで十万人以上が自殺しているということであります。
 これ、更に言うと、デフレというものが失策によって行われたということは、半ば意図的にといいますか政策的にデフレが誘導されたとしたら、十万人をあやめる政策であったということを私は学者として断定したいと思います。もうこれ以上日本人を殺さないでいただきたいという思いで、私はデフレというものを本当に脱却しないといけないと思います。これは一番極端な例ではありますけれども、死なないまでも不幸になっている人がいっぱいいるんです。
 しかも、もう一つだけ言わせていただきますと、デフレというものは格差社会を拡大します。格差とは何かというと、大企業に対して中小企業は潰れていきます。一つの会社だと、資本家はもうかりますけれども、労働者は貧乏になってもうぼろぼろになっていくので、労働分配率が下がります。しかも、派遣労働者といいますか非正規雇用は今、日本人の労働者の三分の一にもなっているんですよ。昔はそんなことなかったんです。
 更に言うと、地域的な分散でいいますと、都市に対して地方が疲弊する。僕、昨日、先ほども申し上げましたけれども、秋田行ってきましたけれども、秋田の経済とかもうぼろぼろになっているわけであります。秋田の人はかわいそう、まあ秋田だけじゃないですけれども。
 いずれにしても、デフレが広がることによって地方がぼろぼろになっていくんですね。これを是非、是非、是非、是非日本の方に知っていただきたいと思います。
 以上でございます。
○三原じゅん子君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 次に、秋野公造君。
○秋野公造君 公明党の秋野公造です。
 今日は、藤井先生そして櫨先生、お忙しいところありがとうございます。
 一点だけ伺いたいと思います。
 私は海外ではなくちょっと国内の方に目を向けていきたいと思いますが、都市の分散化あるいは強靱な国土づくりに非常に賛成した上で、地方分権と経済成長というもの、両立をすることをお考えでしょうか。ちょっと極端なお話を伺いますが、例えば道州制が進んでいった場合、藤井先生は中央銀行もそういったところに持っていくべきとお考えになりますでしょうか、伺いたいと思います。
 櫨先生の方は、地方分権が進んでいく上で、国全体のお話はあったんですが、成長戦略を進めていく上で留意をしておかなくてはいけないと思われること、何か御示唆がありましたら教えていただけたらと思います。
○参考人(藤井聡君) どうもありがとうございます。
 私の重要な主張は、国土構造の分散化、都市機能の分散化であるというふうに考えております。しかしながら、都市の分散化と地方分権という政治学上の話は真逆であるということを強く主張したいと思います。
 なぜならば、国土構造を分散化するためには、強力な国土計画を作り、強力な国家的な権限でもってそれを遂行していくということが必要であります。そもそも、国土構造を分散化するためには地方により多くのお金を投資していく必要があります。ところが、地方分権化をしてしまいますと財源も移譲されることになりますから、そうなりますと、例えば百万人しかいないような都道府県ではもう何にもつくれなくなるわけであります。したがって、財源を移譲してしまうと結局は国土構造は分散化できなくなってしまうというこの逆理があるということをほとんどメディア等では言われていないということを、私は強い強い危機感を持っています。
 だからこそ、国土構造を分散化するためにも、政治的な権限においては強力な権限を中央政府に置いて、しかも、その中央政府において、その中央政府と中央銀行がきちんと連携を取りながら国土構造の分散化をして、地方がきちんと独立になって、力、十分な財源を持つことができるならば、少しずつ少しずつ地方分権を推し進めていくということは十二分にあるだろうと思います。
 もう一つ誤解を避けるために申し上げるとするならば、そういう格好で国土構造の分散化を進めるときに具体的な政策の内容を全て中央政府が口を出すことは、これはまかりならぬと思います。基本的に、大きな政策の流れ、大きな国土軸の、国土軸の形等々を決めるのは国の仕事でありますけれども、それを具体的にどういうふうな格好でそれぞれの町づくりを進めていくとか、あるいはそれを具体的にどこの場所を通すことがその地域にとって豊かであるのかということについては、徹底的に、紋切り型とかあるいは金太郎あめのようにやるのではなくて、そういう部分に関しては地方分権化していく必要があると思いますけれども、今ここで申し上げている地方分権化というのは、権限の地方分権化をやると日本というものは毀損してしまう、日本の国土構造は分散化できなくなるけれども、いろいろな細かいことは是非、是非、是非、是非地方の皆様方の知恵をお借りするといいのではないかなというふうに思います。
○参考人(櫨浩一君) 地方分権で、道州制というお話がございましたけれども、道州制については種々議論がございますけれども、非常に難しい問題は、今ございます都道府県と市町村の上にまた道州を入れるということだと更に段階が複雑になってくるということで、道州でやるのか、地方公共団体の構造と申しますか、それをどうするのかということを最初に考えておかないと段階が複雑になるだけだという、そういう問題があるというふうに考えております。
 地方分権の話は、今、藤井先生の方からもお話がございましたように、財源の問題と非常に密接に絡んでおりますので、完全に財源も地方に分散させてしまうと、現在の地方交付税のような、あるいは補助金を通じて国が地域的な財政力の差を縮めるような、そういう政策が非常に打ちにくくなるという、そういう問題があるかというふうに思います。
 一方、国の中でもわざわざ分散させたいというふうに考えている人たちもいるわけですけれども、そこの意図もやや微妙なところがあって、財政赤字が非常に拡大しそうなものについて、これを地方の方に押しやってしまって国の財政赤字を回避しようという、そういう意図があるのではないかというふうに勘ぐりたくなるようなものもありますので、そういう意味では、どれを地方に任せて、どこは国でやるのかという、その仕事の見直しが一番重要ではないかというふうに考えております。
○秋野公造君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 続きまして、金子洋一君。
○金子洋一君 民主党の金子洋一でございます。
 今日は、藤井参考人、櫨参考人、どうもありがとうございます。
 まず、櫨参考人にお尋ねをしたいと存じます。
 お話の中で、家計はお金を使わない、そして、だから企業にお金を回せば使われるというのは俗論だということで、日本の家計は、実際にデータに基づいて見るとお金を別にため込んでいない、そして企業の中では、これは現預金なりかなりの金額で滞留をしているので、それをもっと家計に回す必要があるというふうなお話をいただきました。
 確かに、その現状認識、私も全く同感でありますけれども、企業に特にお金が滞留するようになりましたのが一九九八年以降であります。ほぼその時期から、企業は手元にお金が入ってくれば金融機関への返済に回すという形になってまいりました。九七年には消費税の三%から五%の引上げ、そういったものがございましたし、九八年は日銀法の改正があって、それ以降、コアコアCPIは基本的にゼロからマイナス一%の間を推移をするという現在のデフレの経済の形ができたわけでありますけれども。
 となりますと、企業から家計にお金を渡すという手段のほかに、企業から見て現在の状況というのは実質金利が非常に高いから投資ができないんだと、つまり、名目の金利はゼロ近くになっていても、物価の下落が見込まれるのでマイナスの実質金利に、期待実質金利がマイナスになっているというふうに考えますと、これは金融政策で企業にお金を使わせるという手段があるのではないかと。少なくともこれは構造的な問題ではありません、九七年に取った施策でこういう問題が起きたわけですから。
 そういった短期的な金融政策でどうにかなるんではないかという考えを私は持っておりますけれども、それについていかが思われるのかという点がまず一点であります。
 もう一点、法人税についてですが、企業がもっと配当をするようにすると。そして、現在の日本の法人税では、企業が配当した場合でも、その分について税金が掛かってしまうというお話をいただきました。これは海外でも、済みません、法人税そのものについて私、詳しくないんで教えていただきたいんですが、海外でも、法人税というのは、そういう配当をしてしまった分についても掛かっているんでしょうか。それとも、まさに参考人がおっしゃったような理由でそういうところについては掛けないというような法人税の仕組みを取っているところがあるんでしょうか。
 まず、その二点についてお聞かせください。
○参考人(櫨浩一君) まず、一点目のデフレで実質金利が高過ぎるので設備投資が行われないのではないかという点についてでございますけれども、先生おっしゃっているように、デフレのために実質金利が見かけよりもはるかに高くなっているということは確かかというふうに思っております。
 ただし、今の時点で日本の設備投資の比率を見ますと十数%ということで、日本の平均的な成長率が二%か三%ぐらいだということを勘案すると、それほど設備投資が不足をしているという状態ではありません。むしろ、実質成長率が二、三%ぐらいで今の設備投資の比率を維持すると、どうしても設備の過剰が起こるか、先ほど説明のときにお見せした減価償却費が高くなってきてしまって、後で企業の収益を圧迫するという問題がありますので、今行うべきは企業の設備投資をもっと増やさなくてはいけないということではなくて、むしろ最終需要であります消費を増やすという方向に注力をすべきではないかというふうに考えております。
 二つ目の法人税のお話でございますけれども、一つは、海外の法人税に比べて日本が高いので下げろということについては、これは法人税の引下げ競争をやめるように主要な国際会議などで日本が提唱をしていくということが必要ではないかというふうに思います。ヨーロッパもアメリカも皆、財政赤字で苦しいわけですから、その中でお互いに相手よりも法人税を下げて企業を国内に維持しようということをやるとみんな苦しくなるだけだというふうに考えております。
 配当の二重課税回避の問題については、これは私は税制の専門家ではありませんので全部は承知しておりませんが、アメリカが前のブッシュ大統領の時代にこの配当の二重課税の問題を回避しようとして法人税の改革をしようといたしました。ただ、これをやるためには非常に大きな財源が必要なので、改善は一部にとどまって、完全に二重課税が回避はされてないというふうに承知をしております。
○金子洋一君 どうもありがとうございました。
 それでは、藤井参考人にお尋ねをいたします。
 実は今日、国土強靱化の話がもっとたくさん参考人から聞けるんじゃないかなと思って期待をしてまいりましたが、例えば三連動地震が起きる可能性があると、だから国土強靱化の計画が必要であるというふうに参考人御主張なさっておると承っておりますけれども、ちょっとその辺りにつきましてもう少し詳細にお話をいただければと思います。
○参考人(藤井聡君) どうもありがとうございます。
 今御指摘のあった地震の問題でありますけれども、私はたまたまこの時代に、一九六八年生まれでありますが生まれてしまって、先生方も含めて、今の国民を含めて今この時代に生きておりますけれども、非常に不幸な時代に生まれ落ちてしまったなと私は思っています。
 なぜならば、日本というのは地震列島でありますから、地震が起こることはこれはもう仕方がないことでありまして、東海・南海・東南海地震においては大体百年から百五十年周期で起こっております。首都直下地震においては、これは今の現代日本人が忘れていますけれども、おおよそ三十年から五十年の周期で起こっていたんですね、あの関東大震災までは。
 そういうことで、地震があること自体は日本人として生まれ落ちたことは当たり前なんですが、残念ながら、現時点において我が国は過度に都市化、近代化してしまって、一言で言うと、いろんなビルが建っているわけでありますけれども、位置エネルギーが高いところに建っているわけですね。これがちょっと潰れると物すごい被害が出てしまうと。これが江戸時代では、江戸時代、安政時代とかもうむちゃむちゃでっかい地震がぼこぼこぼこぼこ来たんですけれども、それによって江戸幕府がかなり傷ついて、それが明治維新の重要な底流になったことはこれは間違いないんですが、だからといって日本の国が傾くほどの被害はなかったのは、建物が木でできてる小さいもので、サプライチェーンも小さくて、有機体として非常に小さな存在だったんですね。
 ところが、日本というのは極めて大きくなって、あろうことか、この七十年近く、戦後でいうと五十年、六十年ですね、もう巨大地震に襲われなかったわけであります。首都なんというのはもう九十年近く襲われてなかった。その間、まあ一度もう空襲でむちゃくちゃになりましたですけれども、その後せっせせっせ、せっせせっせと真面目な日本人ですから投資しまくって、地震の被害を、これは逆に言いますと、地震側に立ってみますと地震の被害を拡大化させてるみたいなもので、物すごい投資してしもうて、それでもうたぷたぷになったところにどおんと大きい地震が来るという時代であります。
 それがまず本当に不幸であって、我が国は本当に存亡の危機に立たされているということ。これ、デフレの被害と同じぐらいというと、デフレの被害もそれぐらい僕は大きな問題だと思っているということをアピールしたいために申し上げているんですが、それと同じぐらい巨大な問題がこの巨大地震問題であると思います。
 もう少しデータ的なことを申し上げますと、東日本大震災のようなマグニチュード八以上の巨大な太平洋側の東北の地震は過去二千年に四回起こっているんですが、その四回とも、四回とも、もう一回言いますけれども、四回とも十年以内に首都直下型地震と、首都直下地震と連動しているんですね。ですから、もう十年以内にここに巨大な地震が来ることは、皆さん諦めてくださいと僕は、学者としては言えないですけれども、覚悟としてはそう思っていただきたいと思います。当然ながら、過去四回とも絶対そう起こっているから今回も絶対そうなるんだということは科学的には言えないですけれども、もう覚悟しないわけにはいかないというところにあります。最悪の場合は、マグニチュード八が起こってしまうと、政府の試算では三百二十五兆円の毀損ということで、東日本大震災が十発食らったような巨大被害を我が国は受けてしまうということが、もうこれが、その可能性が本当にあると。
 しかも、西日本大震災においては、過去、先ほど申し上げた四つの事例のうち三つにおいて二十年以内に連動していて、その場合、もしもそのマグニチュードが九になれば、マグニチュード九になれば、大阪は水没、名古屋も水没するということが予想されています。それを防ぐためには十兆円程度の投資を行って、堤防をあと二メートルとか三メートルずつ高くすれば何とか救われるということはあるんですけれども、そうならなかったらいいですけれども、なったらどうするんやという話がありますから、これが昔の何か江戸時代みたいな国やったら、ああ、何か田んぼが潰れたなで済んだんですけれども、今そこに物すごい巨大なGDPがあるので、本当にもう世界史的に初めての超巨大な破壊が行われようとしている前夜であるというふうに言える確率が十中八九であると。
 これで何もしなかったら、日本人はその程度の愚かな国民やったら滅びてもええんちゃうかなと思うぐらい本当に巨大な、巨大な危機に迫っていると思いますので、たかだか百兆や二百兆の金ぐらいはした金でありますから、先生方のお力で、まあ一年間で二百兆ぐらいは大変でありますけれども、十年間でやるようにして十兆から二十兆を何とか、何とか御用立ていただいて、この国を守っていただきたいというのが私の強い願いでございます。
 以上でございます。
○金子洋一君 どうもありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 続いて、寺田典城君。
○寺田典城君 どうも、単線の地方に住んでいる秋田の寺田でございます。ひとつよろしくお願いします。
 目の覚めるようなお話を聞きまして、刺激を受けていますが、本当にありがとうございます。
 それで、お話を聞いてみますと、一つは内需主導というんですか、消費拡大で成長と、もう一つはインフレターゲットにしなさいと、それから公共投資も必要だというふうな形になっております。
 ただ、日本の国は、バブルが崩壊したのが一九九一年だったと思います。私、そのときちょうど市長に就任しました。そのときの借金は二百六十五兆円でした、その当時。ところが、二十年後の現在、二十年過ぎて九百兆円近い、一千兆円の借金があるとかというふうになっていますね。その間に、橋本さんは消費税であれしてから増税が全然なく、内需拡大というか、公共投資で毎年地方が対応できないぐらい、小渕さんのころとか、何というんですか、公共投資させられたというのも事実です。それと、麻生さんのあのリーマン・ショックのときも大変だったと、地方も受けるのに大変だったというのも事実ですね。そういうことで、公共投資によって、果たして過去の公共投資によって、学者としてどう思っていらっしゃるか。決してインフレにもならなかったし、デフレ傾向でなっていると。
 それから、経済の面ですが、日本の企業というのはある面ではガラパゴス化みたいな企業、個々の名前は、必ずV字型回復するでしょうけれども、何というんですか、トヨタさんでもパナソニックさんでもソニーさんでもシャープさんも、今苦労していますね。だけど、V字型の、それがみんな海外に打って出るというような形になっています。ですから、今、海外にということは、外に打って出るというのが基本的な、私はそれが大事じゃないかと、そういう人材育成しなきゃならぬと。
 それと、一つそのことで聞きたいのは、国と霞が関は地方が自立するためのサポーターになって、国自体、それから霞が関の能力を全部外に打って出るようなことにならなければ、私は、何というんですか、こういう閉塞感は破れない、日本の発展にはそれが基礎じゃないかと、今現在そのように思っています。ですから、地方分権、行き着くところは道州制と。もちろん、何というか、二層、三層じゃなくて、市町村が基礎的な自治体、それからあと道州制、あと国というような形になってくると思うんですが。
 そういうことも含めて、この三点、お二方からお聞きしたいんですが。
○参考人(藤井聡君) それでは、まず過去の公共投資の効果がどうであったかというこの点からお話し申し上げたいと思いますが、一九九一年にバブルが崩壊します。そこでいろんな金融資産とかがぱあっと空中霧散してしまったと。そこでは一説には一千五百兆円程度の資産がなくなったと言われています。もしもあのとき公共事業の拡大をしなければ、あのとき公共の事業の拡大をしたことは御存じだと思いますけれども、公共投資の拡大をしなければ間違いなくGDPは低下していたこと、これはもう間違いないと思います。
 結果を御覧に入れたいと思いますが、御覧のように、一九九〇年がこういうような水準であったわけでありますけれども、一九九五年、これは五年置きのグラフになっていますからちょっと分かりづらいかもしれませんが、一九九五年まで何と日本は経済成長を果たしています。ということは、経済成長をしたということは、これはバブルが崩壊したにもかかわらず経済成長したのは、これはその後の公共投資の拡大によって、いわゆるニューディール対策によって拡大したんだと言わざるを得ないと思います。そういう効果が一つあったのが一点。
 さらに、よく言われますのが、ここでデフレになった後に緊縮財政に転じて、橋本内閣で緊縮財政に転じた後に、その反省の下、小渕内閣が財政出動を行ったけれども、それは借金を増やしただけではないか、何も良くなっていないのではないかということがさんざんこの十数年間、もう御他界されたのにかわいそうにずっと言われ続けているわけであります、小渕先生は。
 しかしながら、データをきちんと見ますと、小渕先生の大規模な公共投資を行ったその翌年においてのみ唯一収支は改善しているんですね。このデータは今日ちょっとここにはないですからお見せできないですけれども、これは自明であります。公共投資を拡大すると、所得分配じゃなくて投資を拡大するとその分のGDPは、その分、乗数効果は一でも確実に増えるわけであって、しかもそこの分の税金は入ってくるわけでありますから、財政収支はこれは改善しております。しかしながら、残念ながら小渕先生は御他界されて、その路線というものは小泉先生のあの改革によって真逆の方になっていって日本の収支はがた落ちになっていくというのが、これが歴史であります。
 したがって、歴史をつまびらかにきちんと見れば私がここで申し上げていることと何ら矛盾がないということを、学者として、学者としてという御質問をいただきましたので学者として申し上げたいと思います。
 そして、もう一つ、外に打って出るという話、外に打って出るしかないという論理でございますが、それはもう繰り返しません、先ほど申し上げたとおりでございます。
○参考人(櫨浩一君) まず、公共投資の効果については非常に懐疑的な人がいて、やっても効かない、やってもかえってマイナスだと言う人がいるんですけれども、私はそうではなくて、公共投資をやれば確かにその分GDPが増えてその場は景気が良くなるというふうに考えております。
 ただ、問題は公共投資をやめた瞬間にまた元に戻ってしまうということでありまして、公共事業の追加という問題は、これは非常によく効く薬ではあるんですけれども、風邪に例えればウイルスを殺しているわけではなくて解熱鎮痛剤で症状を緩和しているにすぎないと。つまり、本体の方はもっとほかのところで、消費が不足しているというところに問題があって、それを改善するということにならない。結果として、例えば何年かたつと公共投資が増えてその分政府の債務が増えてしまったという反省が起こって、そこで公共投資は減らせという声が出てくるのでまた元に戻ってしまうと。この繰り返しをここ二十年間やってきたと、そういうことではないかというふうに思います。
 そういう意味では、短期的に取りあえず、余りにも症状がひどくなれば、これは解熱鎮痛剤を飲むしかないんですけれども、その間に本体である病気の方をどうやって治すのかという議論をしなくてはいけなかったのをこの二十年間全くやってこなかったので現在のように政府債務が一千兆円というような話になっていると、そういうふうに認識をしております。
 それから、海外に進出するしかないんではないかというお話でありますけれども、これは個別の企業の話として考えるのか、あるいは日本国内に住んでいる人間の話として考えるのかという問題があろうかというふうに思います。
 個別の企業としては、これはもう日本の人口がそれほど増えていかないわけで、世界企業がグローバルに競争するわけですから、国内にとどまってやっているのではこれは立ち行かない、海外に出ていくしかないと、こういうことになろうかと思います。
 ただ、ここで忘れているのは、企業がグローバル化するというのは、その企業は恐らく、もはや日本の企業というふうに呼べるものになるかどうか分からないということであります。恐らく社長も日本人ではなくなり、企業の主要幹部も日本人ではなくなる。従業員に至っては、今でも日本企業の世界的に有名な製造業のメーカーでは半分以上どころかかなりの部分、まあ過半数といいますかね、多数が外国人であるということで、日本企業と言いながら実は日本人の方が少数派だという状況になっておりますので、こういう企業と政府というのは必ずしも利害が一致しなくなるということを我々は考えておかなくてはいけないんじゃないかというふうに思います。
 こういう中で、もちろん海外にどんどん出ていく非常に野心のある人たちが必要だということは確かでありまして、そういう人たちが育つような教育とかそういったものをやっていかなくてはいけないというふうに思いますけれども、もう一方で、最近の若い人は海外に出ていかないという御批判も先ほど来お伺いしておりますけれども、一つは、例えば、今の北朝鮮のように命を賭してでも海外に行きたいと、いや、行かないと生き残れないという、そういう国を目指してやってきたわけではなくて日本をいい国にしようとしたわけでありますから、ある意味ではその我々の政策が成功したのでみんな海外に行かなくても日本はいいところだというふうに思うようになったと、そこは私は誇ってもいいんではないかというふうに思っております。
○寺田典城君 私は血液型がAB型なんですよ。だけど、どちらかというと私はA型の方を取りたがる方ですが、小泉改革のとき、あのときはプライマリーバランスがほとんど取れるぐらいまで近づいてきました。ただ、あの改革によって、セーフティーネットを作っていながらいろんなひずみができてきたことも事実ですね。
 その当時、私たちは、地方行政において、知事時代なんですが、何というんですか、地方もプライマリーバランスを取らなきゃならぬということで、非常に緊縮財政というんですか、そういうことでコスト縮減から含めて。ただ、これで借金も止まるんだという、みんなで夢があったんですよ。現在のこういう、何というんですか、垂れ流し、毎年四十兆円も数兆円もある時代に、国民はやっぱりそのことに対して不安を抱いているんじゃないのかなと、率直にそう思うんですけれども、その辺はどう思うんでしょう。
○会長(鴻池祥肇君) どちらの先生にお聞きですか。
○寺田典城君 お二方に。
○参考人(藤井聡君) まず、この図が示しておりますのは、これは先ほどデフレの説明をいたしましたですけれども、デフレを放置するとGDPが小さくなるということであります。小さくなるということは税収が減っていくということであります。したがって、財政が悪化していくということであります。その一方で、きちんと公共投資をするとGDPが守られるということであります。守られ、しかもこの翌年のことは書いておりませんけれども、経済が拡大していくということであります。経済が拡大していくということは税収も増えていくということであります。
 過去において、公共投資をやっても拡大していないという事実はあります。それは、はっきり言って、デフレギャップがまだ二十兆円残っているにもかかわらず、それを埋める前に緊縮財政に転じたからであります。小渕先生も失敗しました。そして麻生太郎先生も、せっかく十五兆円の補正予算を組んで三年間やろうとしたところ頓挫してしまいました。したがって、あのときにどちらかが成功していれば、どちらでも構わなかったとは思いますけれども、GDPが拡大していたということは可能であったと思います。
 そうなると、次が大事ですけれども、例えば、この本でこういう、九百兆円になるという、これ一番マックスの状況でありますけれども、もし仮に二百五十兆の投資をやって、それで、そうしますと一千二百五十兆になったとしましょう、借金の方が。その一方で、GDPが九百兆になったとしましょう。さて、GDPに対する借金の量は何ぼかというと九分の一・二五であります。したがって、もう物すごく改善しているわけですね。ところが、今のままだと五分の十になってもう二倍になっているわけであります。
 したがって、成長をしていくことを通じてそこの収支が改善していくということ、これは間違いないわけであって、いずれにしても、デフレから脱却すればそのシナリオができるということを知るべきであるというふうに言わざるを得ないと思います。
 以上でございます。
○参考人(櫨浩一君) 二点ございまして、一つは小泉改革で非常に財政状況が良くなったではないかという点でございますけれども、これは非常に難しい問題で、私は、海外経済の好調というのがあったので、必ずしもこのときの経済の好調とか財政収支のバランスというのがその構造改革の成果であったというふうに考えるべきではないんじゃないかというふうに思っております。アメリカの住宅バブルが崩壊した瞬間に全体はおかしくなるということでございます。
 二点目の政府債務の累積の問題については、私は非常に懸念をしております。このままどんどん行って大丈夫なのかという問題がございます。
 それは、一つには家計の貯蓄率がそもそも下がっているというところで、今までは日本の場合には家計の金融資産が増えているのでそこで国債が消化できるという状態だったわけですけれども、これがゼロになると海外からお金を借りなくてはいけないと、そういう状態になりますので、今は企業がお金を余らせているからいいんですけれども、景気が良くなってこのお金が設備投資に回れば誰も国債を買う人が国内にはいなくなるということで非常に心配をしておりますし、積み上がった一千兆円からの政府債務というのは永久にみんなが握っているわけではなくて、例えば高齢者の年金であればみんなこれを現金化して使い出すわけでありますから、そのときには相当深刻なインフレの問題とか、あるいは長期金利の上昇というのがあり得るということで、私は非常に心配をしております。
○寺田典城君 どうもありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 続いて、中原八一君。
○中原八一君 自由民主党の中原でございます。
 藤井参考人に一点だけお聞かせを願いたいと思います。
 太平洋側の被災を受けまして、日本海側国土軸の形成ということがクローズアップされることになりました。そういう中で、分散型国土の形成ということで、新幹線整備ということで、北陸新幹線の延伸、それから関西までつながなければならない、あるいはまた、私は新潟なんですけれども、新潟と北陸新幹線の間もそういう妥当性があるというお話をいただきまして、日本海側にとって新しい目標といいますか励みをいただいたようで、大変うれしい話を聞かせていただきまして感謝を申し上げます。
 それで、少し重なってしまうんですけれども、新幹線の整備と併せて、やはり日本海側への、先ほどからお話ありますように、首都機能の移転あるいはエネルギー供給基地の分散、それから、日本海側で新潟なんかは今全国で一番被災者を受け入れているんですけれども、災害が起こったときの被災者の受入れ、それから企業の研修施設等の一部の移転、こういうものをやっぱり一緒にやって初めて新幹線の整備も生きてくると思うんですけれども、重なるような質問で恐縮なんですけれども、改めて御所見を伺いたいと思います。
○参考人(藤井聡君) まさにおっしゃるとおりでございます。インフラを投資するというのは、イメージでいいますと漁場で魚礁を沈めるようなものであります。あれはコンクリートの塊を入れて、しばらく最初は何もないわけでありますけれども、いい感じで、いいところに沈めると魚がいっぱい寄ってきて、そこにある種生態系ができ上がると。そういうものを日本海側でなくて太平洋側にさんざん投資してきたので、魚礁に付きまくってできたのが東京、大阪、名古屋ということで、日本海側に魚礁を全然沈めていなかったので発展していないということがあります。
 したがって、魚礁を沈めることが一番大事であるということをまず申し上げた上で、しかしながら、魚礁を沈めて新幹線なり高速道路なりを通してそのままほったらかしておくと、それでも発展することあるかもしれませんけれども、発展しないことも当然考えられます。したがって、お魚をこっちに無理やり持ってきたりとか、そこに餌を無理やり最初ちょっと植え付けたりとか、そういうことをやるとより効率的に、十年掛かるところが二年、三年で餌場ができたりとかすることもありますから、是非そういうことをやる必要がある。
 以上が比喩でありますけれども、そのために何が必要かというと、やっぱり補助、移転をした人たちに対する補助とか、あるいはそちらで、東京から移転した人には特別減税をするとか、その減税分は地方が負担するんじゃなくて、国土強靱化基本法みたいなところで定められているような例えばそういうところでの国からの負担を行うとか、そういう格好で、移転であるいは直接的な開発というものも当然あり得ると思います。例えば、日本海側だとメタンハイドレートというものが非常にポテンシャルが高いんじゃないかという議論もあるぐらいですから、そういうものの基地を意図的に造っていくということも必要だと思います。
 私、四全総、五全総のときの日本海側の失敗は、公共投資の額が少なかったからというのもありますけれども、落下傘型といいまして、開発とインフラ投資に重きを置き過ぎたことの失敗は僕はあったんじゃないかなと、昭和時代は。そのころは、私が研究しているような都市の発展の歴史というものが十分分かっていなかったので、落下傘型のとにかく開発主導で行ってしまったんですけれども、実は今、フリードマンが全部悪人というわけではなくて、自由主義経済というものを上手に使っていくことも必要でありますから、そういう経済理論をきちんと使いながら、どういうソフト施策を展開していくと効果的に日本海側に都市が分散化していくことができるのかということが大事だと思います。
 それと同時に、先ほどから何度か御質問いただきましたような、例えば大阪には造幣局があったりしますから、そういうことで、実は地方に展開してもいいようなものって僕は考えてみたら出てくるんじゃないかなとも思います。ただ、東京に集積していることのメリットもありますから、そのメリットが毀損してしまうことのデメリットとの勘案にはなりますけれども、そういうことを真面目にじっくりと考えていくということは大事じゃないかなと思います。
 いずれにしても、インフラを造りそれを促進するような法制度とか、そういうものをつくると同時に、政府機関で移転できるものがあれば移転していくといいんじゃないかなというふうに思います。
 以上でございます。
○中原八一君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 以上で参考人に対する質疑を終了いたします。
 藤井参考人及び櫨参考人におかれましては、御多用の中、本調査会に御出席をいただき、誠にありがとうございました。
 本日お述べをいただきました御意見は、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じております。本調査会を代表して厚くお礼を申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十一分散会