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夏の節電要請 対応に追われる
5月18日 20時14分

政府は18日、原子力発電所の運転が再開しない場合、この夏、全国で最も深刻な電力不足が見込まれている関西電力管内に15%以上の自主的な節電を要請するとともに、中部電力など西日本の電力会社管内にも節電を要請するなどとした、この夏の節電対策を正式に決定しました。
各地で対応に追われています。

中小企業“大変厳しい”

製造業が集まる北九州市内の中小企業は「生産は止められない」として節電要請を厳しく受け止めています。
北九州市八幡西区で、主に産業用の特殊なモーターを製造している従業員90人ほどの村上精機工作所は、去年、工場などのほとんどの照明を消費電力の少ない蛍光灯に変えたり、こまめに電気を消したりして、節電に努めてきました。
今回の10%以上の節電要請について、秋元和則常務は「10%という数字は大変厳しい。生産ラインは絶対に止められないので、もし計画停電が実施されれば大きなダメージとなる。工場内は夏場、35度を超えることもあり、機械にも影響が大きいが、まずはエアコンの設定温度を高くして、ほかにもあらゆる対策を検討したい」と話していました。

酪農の現場から不安の声

この夏の節電で機械化が進む北海道の酪農の現場からは不安の声が上がっています。
北海道の標茶町で乳牛およそ400頭を飼育している酪農の会社では、一日2回の搾乳や搾った牛乳を冷やして一定の温度に保つ貯蔵タンクなど一連の作業のほとんどが機械化されています。
1か月に使う電力はおよそ3万キロワットアワー、平均的な一般家庭の120軒分に当たります。
これから夏にかけては暑さに弱い乳牛のために、牛舎で扇風機59台を使うことから、電力の使用量がさらに増えることが予想されます。
大和田義信社長は「牛の管理や生産した牛乳の取り扱いはほとんど機械化されているので節電はほぼ不可能です。節電に協力しなければとは思いますが、正直言ってつらいです」と話していました。

一部の操業“夜間振り替えに”

香川県坂出市にあるうどん用の小麦粉などを製造する製粉会社では、工場の操業を一部、夜間に振り替えるなどの対策を検討しているということです。
坂出市にある製粉会社では、年間およそ1万5000トンの小麦を使ってうどん用の小麦粉などを製造しています。
工場には大型のモーターが備え付けられていて、小麦を粉砕するなどの製造過程では、ほぼ100%電気が使われています。
この会社では、工場の操業を、節電を求められていない夜間や休日の時間帯に一部振り替えるなどの対策を検討しているということです。
製粉会社の吉原良一社長は「うどん用の小麦粉の生産は、お盆前後に繁忙期を迎えるが、その時期の節電というのは正直なところ苦しい。若干の不安はあるが計画的に対応していきたい」と話していました。

蓄電池で対応する企業も

夏の電力不足と節電に備え、関西に拠点がある企業は蓄電池を導入するなど対応を急いでいます。
大手住宅メーカーの大和ハウス工業は、電力不足と節電に備えるため全国の事務所や工場で合わせて1000台の蓄電池を導入します。
1台の蓄電池で、10人分のパソコンと卓上のLED照明の電力を賄うことができ、大阪の本社ビルには262台を設置します。
午後11時から午前7時までの夜間に蓄電池に電気をため、電力需要が増える午後1時から午後6時までの間、ためておいた電気を使います。
これによって、ピーク時に使用する電力を5%カットできるといいます。
さらに、本社ビルで働く2000人全員に卓上用のLED照明を配り、天井の照明は、日中、すべて消すことにしました。
この会社では、こうした対策によって、おととしの夏と比べて30%の節電を行う目標を掲げています。
大和ハウス工業の中村武さんは「去年よりも厳しい電力不足で心配しているが、何とかやるしかない」と話しています。

“政府は計画停電準備の根拠を”

大阪市の橋下市長は「計画停電は基本的に関西の府民、県民全員に対して電力の使用を停止するという制約で、電力使用制限令は産業や業務といった大口利用者に対する制限ということになる。もちろん電力使用制限令は大変な負担になるが、産業に影響を与えないように我慢してもらうというやり方もあるのではないか。なぜ、電力使用制限令ではなくて、計画停電の準備なのかを知りたい」と述べ、政府は計画停電の準備を進める根拠を明らかにすべきだという考えを示しました。

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