日米球界の話題を独占する米大リーグ、レンジャーズのダルビッシュ有投手(25)が、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(75)と意外なラインで結ばれている。
「メジャーで何勝するのか?」と注目されるなか、日本ハム関係者が唯一危惧するのはダルビッシュの環境への適応能力だ。QVCマリンなど、ドーム以外の屋外球場の克服に時間がかかった。そうなると、文化の違う米国だけになおさら世話役が重要性を増す。活躍するためのキーマンと言われているのが、通訳のジョー古河氏だ。
古河氏は1992年オフ広島に入団し、95年オフに横浜移籍。現役引退後は横浜のフロント入りして国際業務部兼通訳を務めた。06年には、ブラウン監督誕生とともに通訳として広島に復帰。10年には、広島でプレーしたルイスから「オレが話をするから」と誘われ、レンジャーズの環太平洋スカウトに就いた。ルイスが日米で活躍できた陰には、古河氏の存在があったから。今回もダルビッシュを支える古河氏に期待がかかるだろう。
そんな古河氏がプロ野球界に入ったのは、長嶋氏の一言からだった。まだ巨人監督に復帰する前の1992年6月、群馬県桐生市で仕事を終えた長嶋氏に対し、品の良い年配の女性が近寄りこう話しかけてきたという。
「私の孫は父親の仕事の関係で今、米国のアナハイムにいます。野球が上手で、バルセロナ五輪の米国代表候補になったのに、最後に落とされてしまったんです。人種差別だと思うと、とても悔しいんです。日本で野球をやらせていただけないでしょうか」
アナハイムの住所を書いた紙を手渡された長嶋氏は、「どんな選手か興味があるね」と親しい球界関係者を通じ、西武のテストを受けさせた。結果的に採用されなかったが、広島のスカウトが偶然見ていたことでドラフト外入団。前年にドラフト外は禁止になっていたのだが、米国の大学を卒業しているということで特例扱いにされたという。
祖母の熱い思いが長嶋氏を動かし、広島・古河有一(横浜でジョー古河に登録名変更)が誕生した。ダルビッシュは長嶋氏にも感謝しなければいけないだろう。(夕刊フジ編集委員・江尻良文)
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