東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

月100万円 領収書いらず 文書通信交通滞在費

写真

 国会議員は毎月、「文書通信交通滞在費」という手当を支給されている。額は月百万円。給料にあたる歳費は今月から12・88%削減されて約百十二万七千円だから、それに匹敵する高額だ。

 文通費は政治活動の報告を郵送するための切手代や電話代などに充てる経費。「交通」という言葉は入っているが、地元への行き来の交通費はJRの無料パスなどが別途支給されている。文通費では、出張時の交通費などを想定している。

 領収書提出の必要はない。歳費と同じように振り込まれるため、使い分ける感覚が希薄な議員も多い。原資はもちろん税金だ。

   ×  ×

 文通費は戦後間もない一九四七年、「通信費」として月百二十五円支給されたことに始まる。その後、増額を続け、名称も何度か変わった。六三年に「通信交通費」となった時に十万円、七四年には当時の調査研究費などと統合して「文書通信交通費」となり、三十五万円に。その後も増額し、九三年には「東京での滞在費や事務所の運営費などを加味して」(衆院事務局)現在の名称になって、七十五万円から百万円に増えた。単純計算で、発足時の八千倍だ。

 額の引き上げの時期や上げ幅は「時々の政治的な判断」(同)で決まったという。

 用途が広がり、物価が上がるにつれ、額が増えるのはやむを得ないが、国税庁のデータによると通信費が導入された二年後の四九年のサラリーマンなどの平均月収は約九千三百円。通信費は千円だったので約十分の一だ。今、サラリーマンなどの平均月収は約三十四万三千円だから文通費はその約三倍となっている。最近のデフレ下で庶民の収入は下降傾向だが文通費は百万円に据え置かれている。

 市外電話が高額だったころと違い、今は電話代は安くなった。また支援者への郵便の代わりにメールやブログを利用する議員が増えており、切手代も減っている事務所が多い。

   ×   ×

 文通費について「議員活動に必要な経費だけを認めるために領収書の提出を義務付けるべきだ」という議論が、以前からある。二〇〇八年、野党議員から文通費の使途を報告する義務が課されていない理由を問う質問主意書が出されているが、政府の答弁書は「承知していない」だった。

 政治資金に詳しい岩井奉信・日大教授は文通費の現状を「一律につかみ金として支給しているようなもの。政治活動にお金がかかるのは分かるが適正額を算出し、その上で実費精算にすべきだ」と提言している。与野党が行う「身を切る改革」の議論の中では文通費の見直しに関する話題はほとんど出ていない。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo