米アップルの「アイフォーン(iPhone)」の新型モデルをめぐって、報道が徐々に過熱してきた。発売時期の予測が流れたのに続いて、今度は米有力紙が「端末の画面サイズが大型になる」と伝えたのだ。
画面に使われる液晶パネルの供給元には、シャープやジャパンディスプレイといった日本企業の名も挙がっている。
次期iPhoneの仕様について報じたのは、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)電子版の2012年5月16日付記事だ。関係筋の話として、画面の大きさが最低でも4インチ(10.16センチ)に拡大するという。現行モデルの「iPhone 4S」は3.5インチ(8.89センチ)なので、1センチ以上大きくなる計算だ。2012年6月にも生産がスタートし、今秋には発売するだろうとしている。
画面サイズが大きくなれば、2007年に初代iPhoneがデビューしてから初めてだ。「4S」の全長は4.5インチ(11.43センチ)なので、端末サイズがそのままなら表面の大部分を画面が占めることになる。
背景には、韓国サムスン電子のスマートフォン「ギャラクシー」の存在があるとWSJはみる。サムスンは5月4日に最新モデル「ギャラクシーS3」を発表。日本でもNTTドコモが5月16日、夏モデルの目玉として6~7月の発売を明らかにした。有機ELディスプレーの大きさは4.8インチ(12.19センチ)と、iPhoneと比べてかなりワイドだ。今やスマホの「2強」となったiPhoneとギャラクシーで、最初に「2012年モデル」が出たのはギャラクシー。ロイター通信は、次期iPhoneの画面が大型化する理由は「サムスンとの競争を意識した措置とみられる」と伝えた。
アップルからの公式発表はまだだが、早くもツイッターをはじめインターネット上ではiPhoneの画面サイズ拡大をめぐって意見が出ている。「今のサイズが使いやすいと思うけど」「他へ乗り換えることを検討する必要がある」など、否定的な意見が多い。従来のiPhoneからデザインが変わるのを受け入れられないようだ。果ては「通話も出来るiPadか」と、画面が大きくなることでタブレット型端末との境界があいまいになるとの見方も出た。
WSJやロイターの記事でもうひとつ注目されたのは、画面に使われる液晶パネルを供給する3社の具体名が示された点だ。韓国LGディスプレーと並んで、シャープとジャパンディスプレイが挙がっている。
シャープは、アップルが公表している2011年の供給先リストにも載っている。「週刊東洋経済」2012年5月19日号によると、シャープの亀山第1工場は次期iPhone用の製造ラインが組み立てられ、「アップル専用工場」化しているのだという。3月27日には台湾の鴻海精密工業との資本業務提携を発表したが、鴻海は「iPhone」や「iPad」の生産を一手に引き受けている。鴻海を軸に今後、シャープとアップルがますます接近することも考えられる。
一方ジャパンディスプレイは、日立製作所とソニー、東芝3社の中小型液晶パネル事業と、官民ファンドの産業革新機構が共同で4月1日に発足した会社だ。船出早々にアップルという大手の「固定客」がつくのは心強いだろう。
アップルにとってもこれは「サムスン対策」になりうる。WSJではアップルがサムスンにとってスマホ市場における強敵であると同時に、半導体やモバイル機器向けディスプレーの最大の顧客である事実に触れている。両社のスマホ競争が激化するなかでアップルは、画面用液晶パネルの調達先を、利害関係の薄い日本企業に移してリスクヘッジを図るとしても不思議はない。
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