人工衛星と称する北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射実験は、またもあえなく失敗に終わった。しかし、今回の騒動で世界の笑い者になったのは北朝鮮ではなく、日本政府である、と大前研一氏は指摘する。以下は、大前氏の解説である。
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なにしろ、防衛省がアメリカの早期警戒衛星(SEW)によるミサイル発射情報を確認してから田中直紀防衛相が「何らかの飛翔体が発射されたとの情報を得ている」と発表するまでに約45分、藤村修官房長官が発射の事実を発表するまでに約1時間もかかり、アメリカと韓国に大きく後れを取るという大失態を演じたのである。
その原因は、緊急時なのに複数の情報を確認しようとしたり、田中防衛相が発射情報を首相官邸に伝えようと電話をかけても藤村官房長官が官邸内を移動していて連絡がつかなかったり、防衛省でも田中防衛相ら政務三役が発射直後に執務室のある11階から携帯電話のつながらない地下3階の中央指揮所に移動したりしていたことだというのだから、呆れて開いた口がふさがらない。
ただし、福島第一原子力発電所事故の時もそうだったように、日本の場合は誰が首相の内閣でも同じような状況になるだろう。もし本当に北朝鮮が日本をミサイル攻撃したら、7分で東京を直撃できる。ということは、ミサイルが発射された瞬間に着弾地点を計算して迎撃しなければならない。
発射情報が入ってから電話で連絡を取り合って悠長に対応を協議しているようでは、間に合うはずがないのである。つまり日本政府がやっていることは、いわばコンピュータによってマイクロセカンド単位の売買が行なわれている株式取引に昔の「場立ち」が対抗しているようなものなのだ。
※週刊ポスト2012年5月25日号
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