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ギリシャのユーロ離脱はない - EUは緊縮策を緩和する
今日(5/17)の日経は、4面(1・3・5・7面)を使ってギリシャ問題を特集している。日本のマスコミは、これまで議会選挙で示されたギリシャの民意や政情について、専ら「わがままな怠け者」の表象を被せて蔑む一方の報道だったが、ここへ来て少し論調を変えている。資本の論理で問題認識を固めてデリバリーしている日経でさえも、社説で「緊縮策で景気が悪くなり、さらに税収が減るような悪循環は避けるべきだ」と書き、緊縮策の強制だけでは問題解決にならないという見方を示し始めた。ネットの世界では、マスコミ以上に過激なギリシャ罵倒の言説が横溢していて、獰猛な新自由主義者であるネット右翼が、EUは早くギリシャをユーロ圏から追放するべきで、ギリシャは地獄に落ちて死ねと吠えている。大宅映子的な「アリとキリギリス」の些末な俗論が圧倒的だ。ここで、われわれは三つのことを確認するべきだろう。第一に、EUの基本条約には参加国をユーロ圏から閉め出す規定がないことで、参加国の自主的決定以外にEUからの脱退はないこと。第二に、緊縮策への反対はギリシャだけでなく欧州全体の民意であるという事実である。第三に、ギリシャの問題は確実に南欧諸国に波及するということで、ファイアーウォールは論理的に不可能だという点である。加えて四点目を言えば、緊縮策をめぐる攻防は、まさに資本対労働の対決の構図だという点も忘れてはいけない。
 

第一点目。ギリシャのユーロ離脱の現実性は、EU側がギリシャへの支援を打ち切り、ギリシャが通貨をドラクマに切り換えざるを得なくなったときに訪れる。EUがギリシャへの資金支援の停止を宣告すれば、政府は公務員給与や年金を支払えなくなり、通貨切り替えを措置し、自ら発行するドラクマ紙幣を市中に流通させる以外になくなる。その場合は、報道で予想されているように、新通貨が暴落して超インフレとなり、ギリシャ経済は壊滅的な混乱状況となるだろう。政府は債務不履行となり、ギリシャの銀行は預金が海外に流出して破綻する。ギリシャ国民の8割がユーロ圏残留を望む由縁だ。だが、この事態は同時にEUの政府や銀行にとってもリスクであって、巨額のギリシャ向け融資が焦げ付いて不良債権となる。今日(5/17)の朝日の3面に数字があり、「仏独両政府の損失は1650億ユーロ(15兆6千億円)、両国の金融機関の損失は240億ユーロ(2兆4千億円)に達する」と予測されている。ギリシャのユーロ離脱はこの打撃を仏独に与えるのであり、簡単にEUを出て行けと言えない理由がここにある。独仏首脳会談でも、ギリシャにユーロ圏への残留を求める姿勢で一致した。要するに、ギリシャのユーロ圏残留は全体の意思であり、問題は緊縮策の中身の調整なのだ。現在の合意内容をどこまで緩和するかが焦点なのである。

第二点目、緊縮策反対が欧州の民意であるという点が重要だが、日本のマスコミはそれを報道しない。その欧州の状況を証明する典型的事例は、ノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙での与党CDU(キリスト教民主同盟)の大敗だが、もし、ドイツ国民がメルケルを支持し、EUの対ギリシャ緊縮策を支持するのなら、こうした結果にはならなかっただろう。5/13に投票で示された民意は、明らかに5/6のフランス大統領選の傾向と勢いがそのまま拡大した結果になっている。つまり、欧州の政治状況の潮目の転換を物語っている。簡単に言えば、新自由主義の下での緊縮策の方向から、社会民主主義的な成長策の方向である。この状況は、日本に置き換えれば、小泉純一郎と亀井静香の二人の経済政策の対立で擬えると分かりやすく、2008年から2009年の頃の日本の空気と酷似している。また、現在の消費税論議の対立点とも通底する。後者の主張は、どれほど財政再建しようとしても、不況下での増税や社会保障の削減の無理な強行は、消費を落ち込ませ、景気を悪化させ、結果的に税収が減って財政再建をもたらさないというものである。昨年11月、スペインでは左派政権が倒れる政権交代があり、イタリアではIMFの代理人であるモンティが管理内閣を敷き、信用不安に便乗した新自由主義側の政治攻勢が極致まで行ったが、半年を経ず、市民側が反撃に出て形勢を逆転させた。

第三点目。ファイアーウォール論はナンセンスだ。この問題で緊縮策を支持する側の言い分として、EU・IMFから資金援助を受けているギリシャ・ポルトガルと、受けていないスペイン・イタリアとは違うという指摘がある。だから問題は波及せず、線引きして波及を食い止められると言いたいのだろうが、緊縮策によって失業が増え、若者が国外に脱出し、税収が落ち込んでいるのはスペインも同じだ。ギリシャはこの4年間でGDPが20%縮小した。同じ緊縮策を続ければ、いずれスペインもギリシャと同じく財政破綻してEUから資金支援を受けざるを得なくなる。所得がなければ納税はできない。現在のギリシャの危機は、所得と税収のエコノミクスを無視した非合理な緊縮策に起因するもので、EUが押しつけた経済政策が失敗したものだ。ギリシャだけをユーロ圏から切り離し、そこで混乱を収束できるという考え方は、同じ問題が南欧諸国で起きているという現実を無視している。ギリシャをEUから離脱させたとしても、スペインの失業率が改善されるわけでもなく、税収が増えるわけでもない。ギリシャと同じく、緊縮しても税収が減るため政府債務は増え続ける。今回の危機は、リーマンショックがユーロ・バブルを崩壊させたところに構造的な要因があり、ギリシャ単独の問題ではないし、アリとキリギリスの戯画で説明できる問題ではない。ユーロ・バブルの崩壊に対して、一国毎の財政では対応できなかったという点が本質だ。

逆に言えば、ユーロを防衛する意思がドイツにあるなら、最初からユーロ共同債の発行に舵を切らなくてはならなかったのであり、ギリシャやスペインの成長や雇用や税収に責任を負う政策立場でなくてはならなかったのである。今後のギリシャと欧州の情勢は、再選挙で政権与党となる急進左派(SYRIZA)とツィプラスの動きが要になるだろう。欧州で急進左派が政権を握るのは、歴史上初めての事態となる。1976年のイタリアで、あと一歩でベルリンゲルの共産党が政権獲得という瞬間があったが、冷戦時代を通じてこうした勢力が政権に就いたことはない。ツィプラスの急進左派は、社会主義インターに属する欧州の中道左派とは全く性格の異なる勢力だ。無論、嘗てのソ連共産党の各国支部とも違う。昨年の米国でのOWS運動と似た位置にあり、メランションの左派戦線(仏)と並んで、新自由主義に反対する新しい社会主義の潮流として定義できるだろう。スペインでも昨年11月の選挙で統一左翼が票を伸ばし、2議席を11議席に増やして注目されたが、今年3月に行われたアンダルシア州の州議会選挙でも、12議席を獲得して選挙前から倍増させた。フランスのメランションの台頭とユニゾンを成す動きだ。スペインの場合、5/12のデモで全土で10万人以上を集めた「5月15日運動」(Indignados)の興隆が統一左翼の党勢を押し上げている。この運動は、格差に反対する反新自由主義の民衆運動であり、スペインのOWS運動である。

ギリシャの緊縮策の実態について、年金生活者が議会前で抗議の自殺をした件以外は、マスコミでは詳しい解説がない。「世界」6月号誌上の有田哲文の記事によると、ギリシャはいま国有財産のバーゲンセールを行っていて、政府系の「資産開発ファンド」のリストには以下の目録が並べられている。アテネ国際空港、ギリシャ高速道路、複数の港湾や地域空港、ギリシャ郵政公社、カジノ、公営競馬会社、宝くじやサッカーくじの会社。売り込み先は外国企業で、GDPの2割を上回る500億ユーロ(5兆円)が売却目標だとある(P.285)。まさに破産国家状態。いずれ、アクロポリスのパルテノン神殿や地中海に浮かぶロードス島も競売にかけられるのではないか。Twitterにも書いたが、私は、ギリシャがユーロ圏に滞りながら緊縮策を緩和し、破綻を免れる方策はあると考えていて、それは、政権を握ったツィプラスが中国カードを切り、ギリシャとEUとの交渉のテーブルに「利害を持つ有力な第三者」の中国を介在させることだ。再選挙で勝利した翌日に北京に飛ぶことである。先秋以来、メルケルとファンロンバイは北京詣でをして懸命に中国の資金支援を仰いでいた。それ以外にも、中国はギリシャや各国と二国間で支援を行っている。欧州に口出しできるパトロンの存在だ。EUとIMFは中国の関与と干渉を嫌うだろうが、中国には問題解決の実力(カネ)がある。中国が出てくれば市場も黙るのであり、国際金融の世界で絶大な影響力を持つ点は否定できない。

中国を後見人にすることができれば、ツィプラスはEUと対等に交渉することができ、市場に譲歩を迫ることができるだろう。ユーロ危機の問題解決に中国(マネー)を入れた新スキームを提案、構築し、市場とIMFによるフリーハンド(増税と社会保障削減と構造改革)を阻止することだ。急進左派が事態を打開するアイディアは幾らでもある。


 
by thessalonike5 | 2012-05-17 23:30 | Trackback | Comments(0)
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