<食品表示の裏側>一元化問題を考える/下 組み換え作物、実態見えず
◇食用油は表示対象外 5%まで混入許容、EUは0.9%以下
「日本は世界一の遺伝子組み換え(GM)作物の輸入大国です」。穀物需給など国際経済に詳しい三石誠司・宮城大学食産業学部教授はこう言う。しかし、スーパーなどで売られている食品の表示を見る限り、そうした実態は見えてこない。何が見えにくくさせているのか。
トウモロコシなど害虫に強いGM作物を栽培する国は年々増えている。昨年は米国、カナダ、ブラジル、インドなど29カ国になった(国際アグリバイオ事業団調べ)。
栽培面積が最も多い米国では、トウモロコシの約88%、大豆の約94%、綿の約90%がGMだ(アメリカ穀物協会まとめ)。カナダのナタネも約9割はGMだ。
日本は穀物の大半を米国からの輸入に頼るため、米国から輸入されるトウモロコシ(年間約1600万トン)の約8割、大豆(年間約340万トン)の約半分はGMだ。ところが、スーパーなどで売られている豆腐や納豆、コーンスナックなどを見ても、どれも「組み換えではない」との表示ばかり。GM作物はいったいどこへ消えたのか。
三石さんは「表示義務のない食用油の原料や家畜のえさ、清涼飲料の甘味料などに使われている」と、実態の見えにくさを明かす。
日本のGM表示制度は01年4月に始まった。現在の対象は豆腐、納豆、みそ、豆乳、コーンスナックなど33品目。表示の言葉は三つある。GM原料を使った場合は「組み換え」▽GMかどうか不明な場合は「不分別」(GMが混じっていることを意味する)▽GM原料を使っていない場合は「組み換えでない」か、何も書かない無表示、という仕組みだ。
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食用油は表示義務の対象外だ。GM作物問題に詳しい鎌田博・筑波大学遺伝子実験センター教授はその理由を「食用油には組み換え遺伝子とそのたんぱく質が残っていないため、組み換えかどうかを調べる検査法がないからだ」と説明する。もちろん、安全性に問題はない。
つまり、国内で流通する食用油のほとんどはGM原料を使っていながら、無表示なのだ。
もちろん、例外もある。大手スーパーのイオンで売られているナタネ油(プライベートブランド商品)は「遺伝子組換え不分別(遺伝子組換えなたねが含まれる可能性があります)」と表示している。イオンは国の表示制度が始まる前から自発的に表示している。「お客さまの知りたい気持ちに応えて始めた」と説明する。表示があっても売り上げに影響はないという。
食用油のようにGMかどうか分からない無表示のケースをどう考えるかが課題だが、欧州連合(EU)の表示制度は分かりやすい。GM作物を使用していれば、食用油、家畜のえさも含め、すべての加工食品が表示義務の対象だからだ。
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もう一つの課題は意図せざる混入率だ。非GM作物は海外の産地から分別管理されて輸入されるが、微量ながら途中でGM作物が混じることが避けられない。そこで、EUは0・9%以下の混入なら「組み換えでない」との表示を認めているが、日本は5%まで認めている。
「5%は高すぎる」とする日本消費者連盟などは「日本の表示制度では組み換えかどうかが分からない」として、3月下旬の消費者庁主催の意見交換会でEU並みの義務表示を訴えた。
一方、消費者団体「食のコミュニケーション円卓会議」の市川まりこ代表は「組み換えでないと表示されていながら、組み換え原料が混じっているケースはやはり消費者に誤解を与える。組み換えでない表示の条件を限りなくゼロ%に近づけるべきだ」と主張する。表示の要件を厳しくすれば、「組み換え」か「不分別」表示の食品が今より増えて、GM食品への理解がより進むという考えだ。
反対意見もある。もし食用油の表示を義務づけると、メーカー間で非GM原料の争奪戦が起こり、価格が高騰するという理由だ。油脂業界では「食用油原料として必要な数百万トンを、組み換えでない原料で調達するのはもはや不可能」との見方も強い。
鎌田さんは「組み換えかどうかを調べる方法がない食品に表示を義務づけても、ウソが見抜けないので意味がない」と、偽装表示横行の可能性も指摘する。
GM作物をめぐっては「遺伝子自体が体に悪い」といった誤った考えもみられる。「消費者が選択できるような表示自体は必要だ」という立場の三石さんは「企業や政府、マスコミが表示の意味とともに、遺伝子組み換え作物の原理や実態を正しく伝えることも大切だ」と話す。適切な情報をどう消費者に伝えるかが問われている。【小島正美】
◇五つの栄養成分、進まぬ一律義務化 要望強い「食塩相当量」
一方、栄養表示についても議論が進む。世界の大半の国で義務化されているが日本ではされていない。
日本国内で製造・販売される加工食品の表示欄にはエネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの五つの栄養成分がカロリーとグラム数で表示されている場合が多い。これは事業者による任意の表示だ。
これまでの議論では、五つの栄養成分については、原則として義務化を支持する意見は多いが、一律の完全義務化には疑問の声が強い。食品事業の約9割を占める中小事業者が日々つくる加工食品の栄養分析をするのは難しく、総菜や弁当、飲食店のメニューにまで広げると、膨大なコストがかかる。例外規定をもうけるべきだとの意見が強い。
五つの栄養成分のうち、ナトリウム表示については改善を求める声が強い。ナトリウム量に2.54をかければ食塩相当量が導けるが分かりにくい。厚生労働省によると、日本人の食塩平均摂取量は1人あたり1日約11グラム。6グラム未満を推奨する日本高血圧学会は昨年7月、「食塩相当量として表示を義務づけるべきだ」と消費者庁などに要望した。
過剰摂取で心疾患のリスクを上げるとされるトランス脂肪酸の表示については「義務化の必要なし」の声が強い。日本人のトランス脂肪酸の摂取量が一部の若い人を除き、少ないからだ。迫和子・日本栄養士会専務理事は「トランス脂肪酸は義務化するほどのリスクではない。食塩相当量の表示は高血圧症が多いので、義務化すべきだ」と話す。
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