振り込め詐欺の被害が県内で相次いでいる。今年は4月末までに、昨年1年間の被害額を上回る9000万円がだまし取られた。融資の手数料として金を振り込ませる「融資保証金詐欺」や親族をかたる「オレオレ詐欺」など従来の手口が再び横行している。
「会社の金を間違えて別の口座に振り込んだ。助けて」。三月十三日、伊賀市の無職男性(68)方に息子を名乗る男から電話があった。息子と信じた男性は電話の指示に従い、金融機関で五十万円を振り込んでしまった。典型的なオレオレ詐欺の手口だった。
最近五年間の振り込め詐欺被害額は、二〇〇八年に三億六千四百万円に達したが、一〇年には二千三百万円まで減った。だが昨年は再び増加に転じ、今年に入って急激に被害額が増え続けている。
詐欺の手口はオレオレ詐欺と融資保証金詐欺のほか、身に覚えのない携帯サイトの登録料などを請求する「架空請求詐欺」、医療費の還付が受けられると持ちかけ金を振り込ませる「還付金詐欺」の四つに分類される。
県警捜査二課によると、オレオレ詐欺は独り暮らしの高齢者が狙われ、融資保証金詐欺は資金繰りに困った個人経営者らが被害に遭うケースが多い。最近では架空の社債購入の案内状を送りつけ、後日電話して振り込ませる架空請求詐欺もあり、巧妙化も進む。
犯行グループは互いに名前や顔を知らないことが多く、一部を摘発しても壊滅に追い込むのが難しいのが現状だ。捜査二課は「どの手口も詐欺犯とは思えないほど丁寧な話しぶりで信じ込ませる。振り込む前に家族に相談するなど当たり前の対策を徹底してほしい」と呼び掛ける。
被害を最小限に食い止めようと、地元の三重銀行と百五銀行は三月、一日あたりの振込上限額を引き下げた。三重銀行の場合、暗証番号のみで使えるキャッシュカードでの振り込みが五千万円から百万円。百五銀行は二百万円から百万円にした。百五銀行広報CSR課は「利用者に不便を掛けるが、詐欺が社会問題化している以上、対策を取らないわけにはいかない」と理解を求めている。
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