東急:ベトナムの都市開発、14年度収益化へ-多摩田園都市を輸出(1)
4月27日(ブルームバーグ):東京急行電鉄は、ベトナムのホーチミン市に近い地域で同国最大級の街づくり開発に本格着手する。多摩田園都市の開発ノウハウをベースに、まずはマンション建設を着工し、2014年度からの収益化を目指す計画。隣接する商業施設の出店には同社グループで取り組むほか、日本の関係先などにも打診し開発・運営を手掛ける方針だ。
東急がベトナムの国営都市開発会社BECAMEX・IDCと3月に立ち上げた合弁会社の社長に就任した星野俊幸氏(東急取締役)が、ブルームバーグニュースとのインタビューで語った。星野社長は「総投資額は1000億円規模となり、日本企業としてベトナムでは初めてとなる街づくりをパッケージで輸出する」と述べ、最初の取り組みとして約100戸前後入居するマンションを最大で8棟建設する考えを示した。
さらに、星野社長は同時に開発する商業施設について「東急グループの出店の可能性に加え、国内で協力関係にある企業などと水面下で出店を打診したり話し合っている」という。計画では住宅・マンション建設のほか、教育関連施設や小売店舗なども設置する。同社はグループで、東急百貨店やファッションビルの109、東急ストア、東急ハンズのほか、アウトレットショップなどを展開している。
協力する企業については「最初はなじみのある国内企業と組み、できればオールジャパンの体制で取り組みたい」と言う。現在は食料品などを取り扱う複数の国内流通企業と情報交換をしている段階だと説明した。また出店については現地企業や組織とも組む可能性にも言及した。
当初は半信半疑星野社長は開発計画参画について、ベトナム政府関係者が昨年5月に来日した際、多摩田園都市を視察した後「街づくりで是非協力してほしい」と強く申し入れたことから始まったと明かす。当初、星野氏は「半信半疑で現実感は無かった」ものの、現地を訪れた後、東急の越村敏昭会長と野本弘文社長が立て続けに訪問し、申し入れを受けてから10カ月程度で資本金約327億円の合弁会社を立ち上げた。東急が65%を出資する。
東急は3月に発表した中期経営計画で、このプロジェクトを重点施策のひとつと位置付けており、成長性の高い東南アジアでの不動産開発計画などを展開しながら、事業機会を模索し収益向上を目指す。14年度の同社の不動産事業では、売上高は前期比10%増の2093億円、営業利益は同33%増の331億円を計画。不動産事業は同社の営業利益ベースでは最大のセグメント。
星野社長は、連結対象となる合弁会社の14年度営業利益について「40億円程度はこのプロジェクトで見込んでいる」として、今後3カ年での収益化を急ぐ考えだ。それ以降も毎年度、同水準を維持し「単純計算では数十年で、投下資金が倍になって返ってくる」との認識を示した。
過去を教訓に投資は慎重に一方で、資金面では事業展開に対して慎重な姿勢を崩さない。バブル経済崩壊後、それまでの積極投資が裏目に出るなど、一時はグループの有利子負債が、かつて経営破たんしたダイエーと同規模の3兆円を超えたためだ。多くの海外関連事業からも撤退し、資産を売却するなど大きく軌道修正が迫られた。
その教訓から、今回の新規プロジェクトも資金投入について「イニシャルコストを資本として投下した。まずマンションを売却し、それを資金回収して再投資に回すのが基本的な考え」と説明。ただ、必要に応じて、借り入れの「選択肢は排除しない」とした。
東急が取り組むのは、南部の主要経済地域のホーチミン市中央の北方、約30キロメートルに位置する新都市内にあり、街区面積は約110ヘクタール。将来ビンズン省の省庁舎の移転が予定されている。ここに約7500戸の住宅や商業施設などからなる街を創出する。周辺に既にベトナム側が大学や公園、インフラなどの整備を進めている。
ビンズン省は、20年にはベトナム政府から直接管轄を受ける市となる予定で、総開発面積は約1000ヘクタール、人口約13万人、雇用40万人を目指す。同省の10年のGDP(国内総生産)成長率は14.5%。発展への期待から既に日本企業や多くの外国企業が進出している。
鉄道事業は現計画では否定今回の計画に鉄道敷設は含まれていないが、星野社長はベトナム側から何度も要請を受けていると明かした。ただ、鉄道敷設工事の莫大な資金調達や資金回収の面でハードルが高いため「一私企業では不可能だ」と語った。
ベトナムでは、主要都市を結ぶ鉄道は整備されているが老朽化、旧式化が深刻な問題。また電車や地下鉄などの都市鉄道は整備されておらず、ほとんどの移動手段は車やオートバイとなっているのが現状だ。このため同国政府は日本に積極的に働きかけており、これを受けて、現在は京阪電気鉄道が首都ハノイの都市鉄道への参加意思を表明している。さらに高速鉄道分野でも、日本の新幹線採用に向け現在、同国内で調整を進めている。
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更新日時: 2012/04/27 11:24 JST