九州電力が、使用済み核燃料の貯蔵容量を増やす「リラッキング」を玄海原子力発電所(東松浦郡玄海町)で行う方針を固め、佐賀県と玄海町に事前了解願を提出した。背景には、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の稼働が遅れ、全国の原発から出る使用済み核燃料がたまる一方になっている実態がある。玄海原発も、このままでは4年後に満杯になる見込み。各原発で進む貯蔵増量という〝対症療法〟とともに、核燃料サイクル確立も急務となっている。
リラッキングは、貯蔵プールの大きさは変えず、燃料の間隔を狭めてより多く貯蔵する工事。玄海原発には原子炉ごとに貯蔵プールがあり、今回は3号機で行う。間隔を約13センチから約5センチに変更し、容量を1050体から2084体に増やす。1~4号機の燃料も貯蔵する「共用化」を進め、原発全体でこれまでの約1・3倍、4312本分の容量を確保する。これで2013年度ごろとされた〝満杯〟見通しは、20年ごろに伸びる。
玄海原発の使用済み核燃料は、約1年ごとの定期検査で、1基につき30~80体前後発生する。現在の実質的な管理容量は約2430体。昨年12月末現在で1800体が貯蔵され、うち約110体は年度内に再処理工場に搬出する計画。これまでに約730体を再処理工場に搬出している。
しかし、再処理工場は2000年1月の完成予定が大幅に遅れ、再処理ができない状態。既にプールの90%程度が埋まっている。昨夏には、東京電力と関西電力分を合わせて約90トンの受け入れを取りやめるなど、影響が出始めている。
こうした状況から、リラッキングは既に川内原発(鹿児島県薩摩川内市)で工事が進むなど、多くの原発で行われている。玄海と同型の加圧水型軽水炉だけでも既に6原発で実施されている。
玄海原発ではリラッキングに伴い、貯蔵プール内のラックを、中性子を吸収しやすいホウ素を混ぜたステンレス鋼製に変更し、冷却設備を増設するなど安全対策も施す。
ただ、3号機ではプルサーマルが始まり、使用済みMOX燃料は搬出先が決まっておらず、当面はプール内に貯蔵される。原子力資料情報室の西尾漠共同代表は「ウラン燃料より中性子を多く放出するMOX燃料が、長年適正に貯蔵されるのか見極める必要がある」と指摘。これについて九電は、「現段階でも安全に設計されている。間隔が狭くなっても問題ない」と説明する。
九電は中・長期的対策として、中間貯蔵施設の現地調査を11年度までに実施する方針も示す。玄海町の岸本英雄町長は「使用済み核燃料は原子力行政の大きな課題。住民に不安を与えないためにも、早急に対応してほしい」と話す。
【写真】2012年度から貯蔵容量を増やす「リラッキング」が実施される玄海3号機の貯蔵プール=東松浦郡玄海町
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