「離島防衛」 西方各部隊の戦闘様相
陸自は南西諸島をこう守る――。西部方面隊(総監・宮下寿広陸将、司令部・健軍)は昨年11月に行われた23年度自衛隊統合演習で、「島嶼防衛」任務を担任した。施設科部隊は離島に強固な地下陣地を構築して抗たん性を高め、兵站部隊は大型ヘリのピストン輸送で大量の補給物資を事前に集積、敵の上陸を前に増援部隊を隷下に編入した戦闘団は、諸職種の機能を存分に発揮させてこれを撃退、大きな成果を上げた。以下は九州・沖縄の離島を守るための西方各部隊の戦闘様相。
8施大 日出生台演習場に 強固な地下陣地構築 簡易戦車壕など連接

換気や排水設備なども完備した全長32メートルの8師団地下指揮所の入り口(日出生台演習場で)

地下に構築された8師団指揮所で、指揮を執る42戦闘団長の山本1佐(中央)
【8施大=川内】8施設大隊は「離島」を想定した日出生台演習場に、過去最大規模の頑強かつ長大な師団指揮所を地下に構築した。
戦車用簡易掩蓋掩壕(LP)を4セット連接して構築したのは全長32メートルの8師団指揮所。幕僚たちの作戦拠点は師団長の執務室とも地下交通壕で連接され、長期の作戦に耐える大規模な施設となった。
長岡睦大隊長は地下構築物の建設にあたり、隊員に「施設科の執念」を要望。これを受け、指揮所構築隊長の山下英寿1尉以下の隊員は悪天候の中、民生品のGEOWEB(ジオウエブ)を活用して掩護層を迅速に施工。換気設備や入り口部の補強などを考慮しながら構築を進め、空間を活用したロフト、師団長執務室の板張りにした内壁など居住性にも配慮、長期戦に耐えられるものとした。
さらに九州・沖縄特有の豪雨でも浸水しないよう排水設備を完備するなど、随所に創意工夫を生かし、所命の時期までに師団指揮所を完成させた。
諸職種協同で防御戦闘 陸海空路から機動展開 42戦闘団

想定「離島」にパラシュート降下する空挺団員と、地上で誘導する隊員(右)(日出生台演習場で)

島嶼防衛の主力として、CH47ヘリで「離島」に展開した42普連3中隊員と高機動車(日出生台演習場で)
【42普連=北熊本】42普連を基幹とする離島防衛部隊「第42戦闘団」(山本雅司1佐=42普連長=以下約940人)は、日出生台演習場を離島にみたて、一連の島嶼防衛課目に挑んだ。
戦闘団は11月9日から10日にかけ、地上・海上・空中機動の3派に分かれ部隊を島に展開。空中機動の先遣部隊による援護の下、海上機動の主力が上陸し、それぞれの陣地周辺の安全化と地下に掩体を構築するなど、防御態勢を整えた。
15日、空自輸送機からパラシュート降下で降着した空挺団(習志野)第1大隊の隊員約240人を指揮下に加えた山本団長は、各部隊に防御命令を下達、迫り来る敵との戦闘に備えさせた。
17日早朝、敵が上陸を開始。各部隊は島全域で戦闘に突入し、戦車小隊を配属する4中隊が前哨を担い、敵の前進を食い止めた。
1・2・3中隊は並列して敵主力に対峙、激しい戦闘となったが、重迫撃砲中隊、8特連2大隊、8高特大、対戦車中隊、8戦大、空挺大隊など、各種火力を有効に組み合わせて敵に猛火を浴びせ、敵の侵攻を阻止した。
今演習では戦闘団長の要望事項「諸職種との密接な相互連携」を全隊員が具現化し、これが大きな戦果を上げ、島嶼防衛のための貴重な教訓を得た。
九州処 補給物資を事前集積 部隊の長期戦に対処

西方ヘリ隊のCH47輸送ヘリで離島に糧食・燃料・弾薬などを空輸、事前集積する西方隊員(十文字原演習場で)
【九州処=目達原】島嶼防衛では補給物資はすべて艦船や航空機に頼ることから、敵の攻撃で補給線が途切れることも考慮し、今回、九州補給処は陸自補給処として初めて糧食・燃料・弾薬など補給物資の事前集積を行った。
九州処は11月11日から13日まで、CH47輸送ヘリを使った補給物資の事前集積活動を実施。目達原駐屯地から十文字原演習場まで、50ソーティの空輸を行い、厖大な量の補給品を所定個所に事前集積し、部隊が長期戦に耐えられるよう配慮した。
作業には九州補給処から隊員200人が参加したほか、西方後方支援隊、西方ヘリ隊、1ヘリ団、西方特科隊が支援、計画通りに事前集積を完了させた。