憂楽帳:方言

毎日新聞 2012年04月28日 大阪夕刊

 この1カ月、何か物足りない。原因は3月まで放送されていたNHK連続テレビ小説「カーネーション」。あの泉州弁を耳にできないのが無性に寂しいのだ。

 私が生まれ育った和歌山の方言は言葉、イントネーションとも泉州弁にとても近い。「下品」「言葉が汚い」などの意見もあったようだが、「これ食べり」「買(こ)うちゃり」などの会話を聞くと、毎回懐かしい記憶がよみがえってきた。

 特に印象に残るのは、主人公糸子が親友、奈津の結婚相手と話す場面。男性が奈津の過去を知った上で一緒になろうとしていると知ると、糸子の言葉がよそよそしい標準語から普段の泉州弁に一変する。結婚相手を“身内”として認めたことを言葉遣いでさりげなく伝えていた。

 新聞記者になって、あちこちで仕事をしたが、その土地の言葉を知るのは楽しみの一つだ。例えば、今勤務する鳥取市では、場所を示す助詞に「から」を使う。「駅で待つ」が「駅から待つ」になるという具合。会話の中で地元の人から一度聞いてみたいのだが、自然に使ってもらえる関係になるには、まだ少し時間がかかりそうだ。【佐々本浩材】

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