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大阪地検の前特捜部長らを逮捕 犯人隠避の疑いで最高検

2010年10月2日3時7分

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写真大坪弘道・前大阪地検特捜部長

写真佐賀元明・前特捜部副部長

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 大阪地検特捜部が押収したフロッピーディスク(FD)のデータ改ざん容疑事件に関連して、最高検は1日、同部前部長の大坪弘道容疑者(57)と、前副部長の佐賀元明容疑者(49)を犯人隠避の疑いで逮捕した。2人の部下だった主任検事が、FDのデータを改ざんしたと知りながら、隠した疑いが強まった。

 容疑を裏付けるため、最高検は2日にも、直近の職場である京都地検などを捜索する。今後、当時の大阪高検の幹部らからも事情聴取する方針。

 2人が容疑を認めているかどうか、最高検は1日の記者会見で明らかにしていない。2人は最高検のこれまでの調べに容疑を否認していたが、関係者によると逮捕後も否認を続けているという。

 多くの政治家や官僚、企業トップなどを摘発し、「最強の捜査機関」とも呼ばれてきた特捜検察が、トップ以下の組織ぐるみで不正を隠蔽(いんぺい)しようとした疑いが浮上した。しかも、特捜部長が在職中に手がけた事件に関連して逮捕されるという前代未聞の不祥事に、検事総長の辞任や特捜部の解体も含めて議論になるのは必至だ。

 大坪前部長と佐賀前副部長は昨年、厚生労働省元局長の村木厚子氏=無罪確定=らを逮捕、起訴した郵便不正事件の捜査を指揮した。最高検の調べでは、2人は部下の同部検事・前田恒彦容疑者(43)=証拠隠滅容疑で逮捕=がFDのデータを改ざんしたことを知りながら、証拠隠滅罪での刑事処罰を免れさせる目的で、今年2月上旬、大阪地検内からの電話で前田検事に「データの改変は過失によるもの」と説明するよう指示。同月10日には、前田検事が同地検に持ってきた上申書案を読んだうえ、その説明に合うように修正させるなどして、データの改変が故意ではなく過失であるように事実をすり替えた疑いがあるという。

 2人は今年9月23日以降、東京の最高検で連日のように事情を聴かれた際、「前田検事から『データを誤って書き換えたかも知れない』と聞き、それを信じた。改ざんの報告は受けていない」と説明していた。1日は最高検の捜査チームが拠点を置く大阪市内で取り調べを受けたが、同じ説明を繰り返したとみられる。

 最高検のこれまでの調べによると、前田検事が改ざんした疑いがあるのは、厚労省元係長の上村勉被告(41)=虚偽有印公文書作成・同行使罪で公判中=の自宅で昨年5月に押収されたFD。郵便割引制度を悪用するために作成された偽の証明書が保存されていた。「04年6月上旬に村木氏が上村被告に指示して作らせた」という検察の見立てに合うように昨年7月、最終更新日時が「04年6月1日」だったのを「04年6月8日」に書き換えたとされる。

 前田検事は改ざん後の昨年7月中旬に、同僚検事に「データを書き換えた」と告白。今年1月末の村木氏の初公判で最終更新日時が問題となり、同僚検事が別の公判担当検事に打ち明けたことで、大坪前部長と佐賀前副部長も初めて知るところとなった。

 最高検は、前田検事の証拠隠滅容疑の捜査の中で、同僚検事から「部長と副部長も改ざんを知っていた」との証言を得た。前田検事も最高検の調べに「事件の見立てに合うように改ざんしたことを、部長、副部長に直接、報告した」と供述したとされる。

 大坪前部長、佐賀前副部長、同僚検事の3人は今年2月、大阪地検トップの小林検事正と玉井英章・前次席検事(現・大阪高検次席検事)に報告し、「データを書き換えたといううわさがあるが、問題はない」と説明したという。一方、小林検事正と玉井前次席は「書き換えた疑いがあるという報告なら覚えているはずだが、聞いていない」と食い違う説明をしている。

 大坪前部長は、1984年に検事に任官し、法務省保護局総務課長などを歴任。08年10月から今年4月まで大阪地検特捜部長を務めた。佐賀前副部長とともに、多額の郵便料金を不正に免れた郵便法違反事件や、村木氏を逮捕・起訴した郵便不正事件などの捜査を指揮した。

     ◇

 最高検は1日付で大坪前部長を京都地検次席検事から、佐賀前副部長を神戸地検特別刑事部長から、いずれも大阪高検総務部付に異動させた。

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