MIDIとWAVE

MIDI(拡張子=mid)とWAVE(拡張子=wav)はどちらも『音』を扱うものです
しかし、その『音』を出す仕組みは全く異なっています
ここでは両者の仕組みを解説することで、それぞれの違いと性質を紹介します


MIDIとは何か

〜MIDIの性質〜

MIDIとはMIDI(Musical Instrument Digital Interface)と呼ばれる信号を扱い
デジタル楽器やコンピュータや音楽機材などを演奏(操作)するために作られたデータ転送規格のことです
MIDIファイルというのは単に音楽等を収録したファイルというものではなく
そういう情報を転送するファイルでもあります
例えば、MIDIファイルに組み込んだ情報によって自動的に周辺機器(エフェクターやミキシングコンソール)を動かすなんてこともできます

それでは『音』を扱うものではないのではないか?
実はその通りです
MIDIファイルとは『音』そのものを扱うものではなく『音に関する情報』を扱うものなのです
具体的に例をあげると下記表のようなデータが含まれています

C3 120 90 Piano 110
音の高さ
(これはドの音)
音の長さ
(設定で変更可能だが
通常120は四分音符)
ベロシティー
(音の強さ)
音色 ボリューム
64 134 40 30 64
パンポット
(音を左右どちらから
出力させるか)
BPM
(1分間に四分音符が
134個入るテンポ)
リバーブ
(残響音)
コーラス
(音の深さ広がり)
リリース
(発音してから
消えるまでの時間)

これはMIDIファイルに組み込まれている情報のほんの一例にすぎません
これ以外にも様様な情報が含まれていますが、こういった音に関する情報の並びを
音源に出力することで音となります

〜MIDIが音楽を奏でる仕組み〜

陸上競技ハードルのコースを思い出して見てください
各コース(トラック)に選手が一人ずつ並びますね
MIDIも複数のトラックを持っています
選手が音色で、ハードルを上記例の音の情報と考えて見ましょう
選手がそれぞれのトラックを走り、ハードルを飛び越える
これをMIDIに置きかえると
各トラックの音色がトラック上を走り、音の情報があると音を出す
MIDIとはこういう構造なのです

当然察しはついていると思いますが、このファイルは『音』そのものは持っておらず
音源にデータが送られることで音源が音をだすわけですから
音源が良ければそれだけ音は良くなります

つまり、MIDIの音質は音源に完全に左右されるのです
また、同じ曲のMIDIデータを2人の人が作った場合
まったく同じデータになることはありえないと言っても良いでしょう
MIDIを作る人の腕前次第で格好良くも悪くもなります

また、MIDI音源を作っている会社はたくさんありますが
各会社だけの音の規格というものを持っています
つまりA社の音源を使用することを前提に作られたMIDIを
B社の音源で聞くと、MIDI製作者の意図する音では聞くことが出来ないことがあります

これはA社特有の音源情報を組み込んだMIDIファイルを
B社の音源で再生しても、B社の音源はその情報を扱うことができないからです
これによって製作者が「柔らかい音のするピアノ」で再生するように作っているのに
普通のピアノの音で再生されたり、環境(音源)によっては音そのものが鳴らないなんてこともあります

MIDIサイトで【GS音源 SC-88Pro推奨】といったような書き方をしてあることがありますが
これは、「Roland社のSC-88Proという音源で聞くことを前提に制作してあります」
という意味も含まれているのです

〜どんなMIDIでも再生可能か〜

先述した通り、MIDIファイルは製作者の腕前だけではなく
再生する側の環境にも大きく左右されます
違う音で再生されたり、音そのものが鳴らなかったりすることがあると記載しましたが
この点だけを見ても、どんなMIDIファイルでも再生できるとは限らないことが分かると思います

また、MIDIファイルにはポートと呼ばれるものが存在します
上で陸上競技ハードルを例にだしてますので、それを再び用いて解説しますと
競技場には収容人数なんてやっかいなものが存在しますよね
参加人数が多いと、競技する会場を2つ、3つと用意しなければなりません

実はMIDIにも同様のことがあります
通常1ポートだと16トラックまでのデータを扱うことができます
しかし、専用の外部MIDI音源や、MIDI音源を複数接続して使う場合
2ポートや3ポートといった具合にその情報を拡張していくことが出来ます
ちなみに2ポート使えば16トラックの倍の32トラックの情報を扱うことが出来るようになります

では、1ポートまでしか使えない音源や再生ソフトを使用して2ポート使ったMIDIファイルを再生したらどうなるでしょう?
残念ながら、1ポート分しか再生されないといった現象が起こります


WAVEとは何か

〜WAVの性質〜

WAVEという英単語を日本語に直すと何でしょうか?
答えは「波」です
日常あふれている様々な音は全て波で出来ています

上は声を録音したものをWAVE編集ソフトで見たものです
先述したとおり、波そのものですね
例えば、朝友達に「おはよう!」と挨拶をします
その挨拶をしている時、ちょうど近くを選挙カーが通っていったとしましょう

挨拶をされた友達には「おはよう!」という声と同時に「清き一票を!」という音も聞こえています
このとき、友達の耳に届く音の波は合体して届いています

同じことが音楽を収めたWAVEファイルにもいえます
ボーカルやギターやドラムなど様々な音が合体してひとつの波を形成するわけです
その波そのものをデータ化したファイル
それこそがWAVEファイルです

〜WAVが音楽を奏でる仕組み〜

WAVEファイルを再生するときは音源(パソコンの音源ボード)の良し悪しや
スピーカーの性能も影響はするものの
基本的にはほとんど同じ音質で聞くことが出来ます
(MIDIのように極端な差がでません)
それは、『音』というデータそのものをファイルが持っているからです

MIDIのように音源によって音が別のものになったり
再生されないということもありません

しかし、WAVEにはMIDIにはないものがひとつ存在します
それは「サンプリングレート」と呼ばれるものです

詳しくはこちらで解説していますが
音を録音する際、または編集段階で情報量を決めることになります
例えば、ステレオ再生させるか、モノラル再生させるか
これだけで情報量にほぼ倍の差が生まれます

ちょっと例え話をしてみましょう
A君とB君は1週間気温を測ることにしました
A君は1時間に1回ずつ計測することに
B君は2時間に1回ずつ計測することにしました

1週間後、A君の計測したデータはB君のデータの倍の情報量を持っています
でも、平均気温を出してみると、どちらも大して差はありません
当然といえば当然なんですが、これがWAVEでも同じことが言えます

1秒間に何回の波を描かせるか
波が細かければ細かいほど情報量が多く音質も良いのですが
全体的な形は波が若干荒くても似たような形になるために
「あいうえお」と録音しても
どちらも同じ人の声で「あいうえお」と言っているのがはっきりわかります


MIDIとWAVEの長所と短所

まとめとして、それぞれのファイルの長所と短所を見てみることにします

まずはファイルのサイズを見てみますと
MIDIファイルのサイズは5分程度の曲でしたらせいぜい100KB程度です
300KBもあったら、そのMIDI製作者さんはすごい頑張りましたね(笑)
一方WAVEファイルは、CDクラスの音質で5分もの長さを録音したら50MBあっさり超えちゃいます
MP3ファイルもWAVEファイルの仲間ですが5分程度なら5MB程度になります
MP3についてはこちらに詳しく記載してあります


次に音質という観点から見てみますと
MIDIファイルは音源によって左右される、聞く側の人の環境を選ぶ反面
WAVEファイルは万人がほとんど同じような音で再生されます


また、MIDIファイルが音源の音を出して楽器の演奏をシュミレートしているのに対して
WAVEファイルは楽器の演奏そのものを録音することができ
より本物に近い音で再生することができます



拡張性という面から見てみますと
MIDIファイルが様々な周辺機器と連動できるのに対し
WAVEファイルはただ再生するだけで拡張性はありません




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