トピックス
精神科外来における多剤大量療法について
 最近、新聞やテレビによって、わが国の精神科医療、とりわけ精神科薬物療法が批判的にとりあげられる機会が増えています。確かに近年、救急医療機関では過量服薬による自殺企図患者が、そして、薬物依存症専門病院では向精神薬の乱用・依存患者が増加しており、そうした患者の多くは精神科に通院し、そこで処方された治療薬を過量摂取または乱用しています。
 精神科医療においても、薬物療法に偏重したわが国の精神科治療の現状、とりわけ多剤大量療法は問題視されてきました。
 しかし、多剤大量療法を論じる際には、区別すべき二つの類型があることに注意する必要があります。
 その一つは、処方する医師側の知識不足や無配慮に関連するものです。対策としては、医師に対する卒前・卒後教育の強化、診療報酬による誘導、学会によるガイドライン策定、薬剤師からの積極的なフィードバックなどが考えられるでしょう。
 もう一つは、精神保健福祉システムや、社会資源の不十分さに関連するものです。この種の多剤大量療法は、熱意ある精神科医によって、やむにやまれず行われている場合もあります。
 たとえば次のような患者を想像してみてください。自傷や過量服薬を繰り返す、高度な自殺リスクを抱える患者で、家族の支援を受けにくい事情があり、利用できる社会資源も見当たりません。入院をさせても、入院日数の短い慌ただしい治療では、症状の改善はおろか、退院後の支援も不十分なまま、地域に退院させることになります。そして、精神科医がそのような患者を慌ただしい外来診療で何とか支えるために悪戦苦闘した結果が、時として多剤大量療法に至る場合があるのです。
 私たちは決して、「許される多剤大量療法もある」と言いたい訳ではありません。ただ、この問題は、わが国の精神保健福祉システムなどとも関連させて検討すべきと考えます。そのような理解を基礎にして、たとえば診療報酬による薬物療法以外の効果的な治療の普及、地域の非医療的支援の充実、さらには患者を支える家族の支援など、広範な対策を検討していくことが可能になります。
 私たちはこれからも、幅広い視点から外来患者の多剤大量療法の問題を検討し、自殺予防に寄与していきます。
トピックス
自殺予防対策関連 WHO 日本視察 最終報告書
 2012年1月に国立精神・神経医療研究センターはWHOの専門家チームを招へいし、日本の自殺対策に関して、いくつかの重要な提案をいただきました。
報告書を読む
UPDATE
2012.05.14 トピックス(精神科外来における多剤大量療法について)を更新しました
「研修」を更新しました
2012.05.07 「自殺予防対策関連 WHO 日本視察 最終報告書」を掲載しました
「研修」を更新しました
「労働力調査(基本集計)平成23年度平均(速報)結果 ※岩手県、宮城県、福島県を除く全国」(総務省)が公表されました
「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果について」(厚生労働省)が公表されました
米国の自殺予防に関連した学術団体、民間団体、メディア関係者等が協同作成した自殺報道のあり方に関する勧告が発表されました(英語)
WHOから経済の悪化によるメンタルヘルスへの影響と、それを緩和するための多様な施策に関するレポートが出版されました(英語)
2012.04.30   「いきる・ささえる相談窓口」(大阪市)を更新しました
「地方自治体の対策」を更新しました(大阪市)
2012.04.23   トピックス(大綱見直しの提言シンポジウムの報告)を更新しました
シンポジウム「自殺対策のこれから-自殺総合対策大綱改正に向けての提言-」を開催しました
「活動内容」を更新しました
「会議」を更新しました
「いきる・ささえる相談窓口」(高知県)を更新しました
「地方自治体の対策」を更新しました(高知県)
「地域保健対策検討会(報告書)」(厚生労働省)が掲載されました
2012.04.16   自殺予防総合対策センター停電のお知らせ
設備改修工事のため、24年4月18日(水)9:00〜17:00の間、停電となります。
連絡等で不便をおかけしますが、ご了承のほどよろしくお願いいたします。
2012.04.09   トピックス(シンポジウム「自殺対策のこれから−自殺総合対策大綱改正に向けての提言−」のご案内)を更新しました
提言第二次案にご意見をいただきました
「いきる・ささえる相談窓口」(新潟県)を更新しました
子どもの虹情報研修センター 10周年記念シンポジウム 「子ども虐待対応を考える:これまでの10年とこれからの10年」が掲載されました
2012.04.02   提言第二次案にご意見をいただきました
「平成24年我が国の人口動態(平成22年までの動向)」(厚生労働省)が掲載されました
4月7日はWorld Health Day(世界保健デー)です(WHO)(厚生労働省
    過去の記録
のめば、のまれる 中年男性の自殺予防に取り組む人のための10箇条 自殺予防総合対策センターブックレット
いきるを支える 精神保健と社会的取り組み 相談窓口連携の手引き ライフステージ別ミニポスター(中高年) 自殺予防週間ミニポスター
自殺予防総合対策センターブックレット バックナンバー自殺予防総合対策センターブックレット No.9 自殺予防総合対策センターブックレット No.8