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'12/5/14

叫び飛び降り…宿泊客修羅場


 建物内に広がった黒煙が、宿泊していた7人の命を奪った。13日に福山市西桜町1丁目で発生したホテル「プリンス」の火災。日曜日朝の静かな住宅街の一角には、逃げまどう宿泊客の叫び声が響いた。

 「廊下はどす黒い煙がいっぱいで真っ暗。死ぬと思った」。交際中の女性と2階に宿泊していた鳥取県の会社員男性(26)は午前7時ごろ、焦げた臭いに気付き、部屋の扉を開けた。「煙が充満していて、息ができなかった。炎も少し見えた」

 階段から下りるのは無理だと判断。高さ約4メートルの窓から逃げる決意をした。荷物をまとめて道路に放り、2人で高さ約2メートルのブロック塀に飛び降りた。「3階だったらと思うとぞっとする。多くの犠牲者が出て、何とも言えない気持ち」と目を伏せた。

 ホテルの向いに住むタクシー運転手石井常夫さん(55)は「助けて」という女性の叫び声に気付いた。ブロック塀に2人で飛び移った後、降りられなくなっていた女性だった。抱きかかえ、降りるのを手伝った。「2人とも震えていた。助かって本当によかった」と胸をなで下ろす。

 7時ごろ、ホテル前の理容室経営男性(71)は「起きて、起きて」という大声で目を覚ました。外に出るとホテルの従業員女性(75)だった。「髪や服は焦げ、顔はすすで真っ黒。はだしだった」。付近住民の話では、隣の美容室のひさしや電柱に飛び移る男性客もいたという。

 現場には、福山地区消防局の消防車や救急車が次々に到着。ホテル内から宿泊客を運び出した。




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