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ミニ四駆、ビックリマンに学べ! 「リバイバル」成功の法則 

nikkei TRENDYnet 5月15日(火)11時4分配信

ミニ四駆、ビックリマンに学べ! 「リバイバル」成功の法則 
復刻・復活商品が相次ぐなか、成果を上げているのが「ビックリマン」「ミニ四駆」。その共通点は?
 発売当時のパッケージ・味を再現した復刻商品や、かつての人気商品を発売する動きが活発になっている。その背景には、「なじみのある商品は確実な売り上げが見込め、リスクが少ない」といった企業側の事情がある。不況下で失敗したくない消費者も、安心感や懐かしさから手を伸ばしやすい。

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 だが、ここ数年で復刻・復活商品が乱発された結果、「期待したほどの売り上げが出にくくなっている」(菓子卸会社)という側面も。そんななか、成果を上げているのが、「ビックリマン」(ロッテ)と「ミニ四駆」(タミヤ)だ。

86年 「レーサーミニ四駆」発売85年 「ビックリマン 悪魔VS天使シール」発売“鉄板”シリーズ復刻で話題喚起する「ビックリマン」

 いずれも1980年代に当時の小学生から絶大な支持を集めた大ベストセラー。ただし、ブームは90年代で去り、その後は長い“冬の時代”が続いた。

 この2つに共通するのは、子供向けの商品にもかかわらず、今は子供を直接狙わず、当時熱中した「30代オトコ」に絞って売り込んでいる点だ。懐かしさを誘うだけではない、周到な仕掛けも用意して再浮上を図っている。

 今年2月、かつて大ブームを引き起こした「ビックリマン 悪魔VS天使シール」の第1弾が、「ビックリマン伝説」として復刻された。発売2週間で、コンビニのチョコレート菓子の売り上げトップになり(金額ベース)、好調だ。

 発売に先立ち、実は昨年からSNS上でビックリマンのソーシャルゲームを展開。20〜30代を中心に120万人以上が遊ぶ人気ゲームに育て、満を持して“元祖”を復刻したのだ。「当時シールを集めきれなかった人が、バーチャルなシール収集にハマり、商品にも手を伸ばすようになった」(ロッテ商品開発部の大野友幸主査)という。今後は第2弾以降も復刻する計画だ。

 この復刻ビックリマンの最大の狙いは、4月発売の新シリーズ「ビックリマン 聖魔化生伝」に30代男性を誘導すること。これは、悪魔VS天使シリーズにつながるストーリーで、現在の30代でもなじみやすい。開発に当たっては悪魔VS天使シリーズを手がけたOBを集め、新たにチームを結成した。「大人はあまり知らないモノに手を出さなくなっている。SNS、復刻と2段階で子供の頃の記憶を呼び戻し、OBと“本気”の開発をしてようやく巻き込める」と、大野氏は話す。

ビックリマン 大ヒットした悪魔VS天使シリーズが復刻し、話題に。今後は続編の聖魔化生伝が展開され、悪魔VS天使シリーズの第2弾以降も復刻される。30代男性の需要を掘り起こし、近い将来、子供向けの新シリーズを始める計画だ。「ミニ四駆」は30周年迎え、レース大会も復活

 今年30周年を迎えるミニ四駆も、現在のターゲットは20〜30代男性に据えている。86年の「レーサーミニ四駆」、94年に発売された「フルカウルミニ四駆」が巻き起こしたそれぞれの大ブームを経験してきた世代だ。

 実はミニ四駆は、90年代後半にブームが沈静化した後も、2005年にシャシーを大幅に改良した「PROシリーズ」を発売するなど、高速化が進み、カスタマイズの自由度も高くなった。その半面、つくりは複雑になり、強化パーツも増えたため、“出戻りユーザー”にとっては敷居の高い商品になっていた。そこでタミヤは、旧車種のリメークや主要な強化パーツを簡易キット化するなど、初心者対策を地道に積み重ねてきた。結果、一部の模型店などでは以前の熱気が戻ってきている。

 そして今夏、大々的に仕掛けるのが、タミヤ公認のミニ四駆競技会「ミニ四駆ジャパンカップ2012」だ。過去12回の開催で約100万人が参加した祭典で、これが13年ぶりに復活。以前は小中学生限定だったが、今年は大人も参加できる。「懐かしさから大人がミニ四駆を久々に作って家に飾るのではなく、昔のように本気でレースで競えるようにしたい」(タミヤ)という。

ミニ四駆 過去2度のブームを経て、30周年を迎える今年、13年ぶりにジャパンカップが復活、再ブレイクを狙う。メインターゲットは20〜30代男性。高速化などに磨きをかけた新モデルで、かつてミニ四駆に熱狂した世代を取り込み、子供への波及を期待する。まず30代男性を本気で攻める

 あの手この手で大人を熱中させる仕掛けに力を注ぐのは、その裏にいる子供にアプローチするためでもある。「いつの時代も、子供はミニ四駆の速さに引かれる。大人がスピードや改造技術を磨くことで、子供ものめり込みやすくなる」(タミヤ)と話す。一足飛びに子供を狙うのではなく、まず30代男性を本気で攻める。80年代リバイバル商品が選んだのは、超割り切り戦略だ。

若者よりカスタム好きの大人を魅了する トヨタ自動車と富士重工業が共同で開発した小型スポーツ車「86」。全くの新型車だが、「ユーザーが育てる楽しみがあるクルマ」という開発思想は、80〜90年代に人気を集めたカローラレビン/スプリンタートレノ(AE86型)と共通している。そのため、86には豊富な改造パーツが用意され、販売よりむしろアフターサービスに力が入っている。「無理に若者を狙うのではなく、スポーツカー好きの大人を熱中させることが重要。それを見て憧れた若者が、数年後に中古車の86を安く買う状況ができればいい」(トヨタマーケティングジャパン)。(文/勝俣哲生=日経トレンディ)

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最終更新:5月15日(火)19時2分

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