佐賀県唐津市にある九州電力の石油火力発電所(2基、計87・5万キロワット)が運転を停止してから6年が過ぎた。石油を使った発電がコスト高のためだが、緊急時の予備電源としての役目があるため「休止」している。年間維持費は数億円で、唐津市に多額の固定資産税収入をもたらす施設だが、海辺の一等地にあるため、施設内の一部開放や撤去を求める声もある。原子力の隆盛や温暖化対策など「発電事情」が変化する中で、石油の発電所は微妙な立場にいる。
発電所は1967年、二夕子地区の海辺に開設。71年に2号機、73年に3号機が稼働した。当初は主要電源だったが、玄海原発の稼働や石油ショックによる原油高騰で、80年代後半以降は夏場のピーク時に不足電力を供給する〝期間稼働〟状態になり、1号機は99年に廃止、2004年に2、3号機も休止した。
火力発電の燃料には石炭や天然ガスもあるが、石炭は価格が安定、天然ガスは石油より二酸化炭素排出量が少ないメリットがあり、休止では石油が矢面に立った。九電は3月、苅田発電所新2号機(福岡県苅田町)と大分発電所1、2号機(大分市)を2012年度までに廃止し、石炭と天然ガスに移行する方針を打ち出したが、唐津は予備電源として存続することになった。
休止状態の唐津には、今も5人が常駐し、年間維持費は数億円。19年度には国内最大級の出力159万キロワットの鹿児島・川内原発3号機が稼働して電力供給力にさらに余裕ができるため、緊急時の電源としての存在意義もますます薄れる。今後は「一年一年、情勢を見ながら存続か否かを判断する」(九電広報部)という。
維持費の中には唐津市への固定資産税もある。唐津市も九電も額は明らかにしていないが、22万平方メートルという広さは相当な額になっている。発電停止で電源立地交付金はなくなったが、今も市財政には〝貢献〟している。
エネルギー事情の変化で、ただでさえ存廃の矢面に立つ石油発電所だが、唐津の海の一等地にあることも立場を微妙にしている。近くにはヨットハーバーやフェリーターミナルもあり、昨夏はヨット世界選手権もあった。港で活動する市民団体関係者は「海を感じることができる一番いい場所にある。敷地内に市民が出入りできるような方法など撤去を含めて検討してほしい」と話す。
【写真】唐津市にある停止中の石油火力発電所。近くには県ヨットハーバーなどがある=唐津市二タ子
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