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番組バックナンバー
目次 > 2012年5月14日放送の18時台の特集/バックナンバー


“学校選択制”先行する事例から学ぶ
特集は小中学校の「学校選択制」です。
大阪市の橋下市長は2年後の導入を目指し、現在議論を進めています。
通う側が校区を越えて学校を自由に選べるこの選択制をすでに取り入れている自治体は全国にありますが、見直しや廃止をしたところもあります。


【大阪市・橋下徹市長】
「洗脳されているだけなんですよ。今の小学校区の単位が全てだって。そういう所(学区)を取っ払って。いいじゃないですか、皆どこの学校を選ぼうが。結局、とにかく新しいことやりましょう」

橋下市長が教育改革の本丸に据える小中学校の学校選択制。
狙いは学校同士が生徒の獲得のために競争して教育の質を上げるとともに生徒が少ない3分の1あまりの学校の統合や廃止進めることです。



【橋下徹 大阪市長】
「だって誰も通う子がいなくなったらもう学校を開けておく必要ないじゃないですか。若干、地域のコミュニティが希薄になるとかいうことは我慢してもらいます」

校区を超えて行きたい学校を選べる学校選択制は2000年ごろから導入が進み、全国のおよそ15%の自治体で採用されています。
大阪市は全ての区で説明会を開いて、2年後の導入を目指しています。

【大阪市民 賛成】
「(学校は)大変かもしれないけど努力をして、これから学校を選ぶ子供たちや親御さんに学校のいいところを宣伝してほしいと思うんです」
【大阪市民 反対】
「全ての子ども達に均等な教育を受けさせるのが学校の課題。競争みたいにして、ここがいいとか悪いとか学校間の差別が育つと思います」

橋下市長が理想としているのは「夜スペ」という講義で一躍名が知られることになった東京都杉並区の和田中学校です。



ここでは授業の後、大手学習塾に教室を無料で貸し出すかわりに生徒は塾と同じ授業を通常の半額以下の値段で受けられます。
東京都内で初めての民間人校長として「夜スペ」を立ち上げた藤原和博(ふじわら かずひろ)さんは橋下市長のブレーン。
現在は後輩の民間人の校長が最新プログラムによる「脳トレ」や、校長自らが教壇に立って社会経験を伝える特別授業「よのなか科」を展開しています。

【よのなか科 授業風景】
「橋下大阪市長の最初の職業はなんでしょうか?」
「弁護士です!」「イエーイ」

学校選択制が導入されている杉並区の中で、特色のある教育が評判を呼んだ和田中学校は生徒数がおよそ3倍に増え杉並区内最大のマンモス校になりました。

【和田中の生徒】
「有名人が来て授業するところが他の学校になくていい。一年の人数が多いので友達をいっぱい作れるのがいいと思います」

しかし人気校ゆえに兄弟でも抽選で入学できるケースと出来ないケースが生まれていて、「同じ教育を受けられないのは不公平だ」という声が出てきました。

【別の学校に子どもを通わせる保護者】
「結局、自由選択制度は競わせるわけだから人気校と不人気校にキッパリ別れる。不人気校に行くことになった生徒の行き場のない気持ちにはとんでもない大きなものがあるんです」
「結局失敗というか、(うわさに)惑わされただけという意見の方がすごく多いです」

保護者の間に広がり始めた不安。

制度の導入後、児童が少ない2つの小学校が統廃合された杉並区は先月、東京都内では初めて学校選択制を廃止する方針を決めました。
杉並区内の教師を中心にアンケートを行った結果、「選択制の影響で学校と地域の繋がりが無くなった」などの理由で、7割以上の人が見直しや廃止を求めたからでした。



【杉並区・結柴誠一区議】
「校長先生はじめ先生方の努力が子どもに向かうよりは自分の学校のイメージ作りに必死にならざるを得ない。その結果、学校自身がそれぞれ一定の特色あるものができたにしても非常に教育現場でのゆがみをもたらしました」



橋下市長がモデルとする和田中学校の校長も統廃合をセットにした橋下流の学校選択制には異を唱えます。

【和田中学校 代田昭久校長】
「これは中々難しいんですよ。本当に血みどろの(生徒の)取り合いが始まってしまうんですよ。統廃合のために。教育現場に政治的なものを巻き込むべきじゃないと思います。(学校改革の)シナリオを描くのも大事だけど、それ(生徒数)のみで統廃合を決めるのは非常に危ない政策だと思います」

一方、導入から10年目を迎える荒川区では、選択制を今後も続ける方針です。

【荒川区立 瑞光小学校の児童たち】
「ズバリ校庭!」「校庭!芝生!転んでも痛くない!」「痛くなーい!」

芝生の校庭といった設備が充実する大規模校に児童が集まり、元から人数が少なかった小学校の児童はさらに減る二極化はここでも見られます。
この学校では選択制の導入後、全校児童が100人あまりにまで落ち込み、4年生に至ってはわずか7人しかいません。



【荒川区立 第六日暮里小学校の児童たち】
女の子「なんか静かだなあとか」
男の子2人組「こっちの方がずっと友達といられるし、まぁまぁ楽しんでいま〜す」
「クラス替えしたい!」「おいクラス替えかよ!」

保護者から聞こえてくるのは意外にも好意的な声です。

【第六日暮里小学校の保護者たち】
「少人数でアットホームな感じが良かったと思います」
「地域方のボランティアが凄くて家まで送り届けてくれるんです。安全性も確保されています」

荒川区では選択制で児童が減った学校の統廃合はしていません。
一人一人がきめ細かい指導を受けることができる小規模校も選べることから、保護者アンケートでは実に7割弱が選択制に賛成しているということです。

【第六日暮里小学校 金子和明校長】
「数で廃校とは一概には言えないと思う。109名の学校ですから職員・PTAで児童を真ん中に据えて思いっきりスクラムが組めるメリットがあります」

―大阪市の学校教育フォーラムでは―
【大阪市民 女性】
「今のままで十分だと思います」
【大阪市民 男性】
「子供の人間性を養う、良い子を育てるのは地域・学校・保護者がそろって初めてできる。選択制は高校になってからでいい」

【橋下徹 大阪市長】
「我々が学校選択制やる時に、先に選択制をやって修正をかけた地域があるからといって選択制に一歩踏み出すことを躊躇する必要はないんです。我々もまずは選択制に一歩踏みこんで課題が出てきたら修正をかければいい」



学校選択制がもたらす光と影。
導入するかどうかを決めるのは橋下市長が8月に選ぶ新しい区長です。
これから本格的にスタートする議論は地域や子どもの明るい未来に繋がるのでしょうか?

2012年5月14日放送

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