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電力需給対策予算5794億円はドブに捨てられていた
昨夜(5/14)、今夏の電力需給対策として、政府が関電管内への電力使用制限令の検討に着手し、4電力会社(北海道、関西、四国、九州)に計画停電の準備をする方針を示したことが大き報道された。大飯再稼働へ向けての布石である。この決定は国家戦略室のエネルギー環境会議・電力需給に関する検討会合と関係閣僚との合同会議によるもので、古川元久がマスコミ対応を担当している。枝野幸男の顔もニュース映像の中に入っていたが、肝心の枝野幸男のコメントは出ていない。ここで思い出さなくてはいけないが、枝野幸男は1/27の会見で、この問題の責任閣僚として、「いかなる状況でも電力使用制限令をせずに乗り切りたい。それが出来る可能性は相当程度ある」と断言している。BSフジやNHKの報道番組に出演し、同じ内容のコミットを国民の前で示していた。今回の政府決定は、枝野幸男が国民に公約してきた政策方針を裏切るものだ。ここでもう一つ思い出さなくてはならないが、枝野幸男が今夏の電力制限令なしを明言していたのには根拠と理由があって、このコミットが枝野幸男個人の政治発言ではなくて政府の方針であり、昨年7月から継承してきた判断と政策だったことがある。ブログで何度も紹介してきたが、政府は3次補正で5794億円の巨費を投じ、再稼働なしでも今夏の電力不足が生じないよう対策を打ってきたのである。


この金額は税収の1.5%に相当する。5794億円の税金を使って万全の対策を施した以上、今夏に電力不足になるとは言えなかったのである。ブログではずっと指摘してきたことだが、官僚がこうしたコミットができるのは、対策の内容に自信があるからではなく、もともと発電設備が過剰であり、稼働率を上げれば簡単に需給カバーできることを知っていたためであり、5794億円は業界へのバラマキが目的の予算なのだった。私は、この需給問題に関する記事の中で、繰り返し、3次補正の5794億円の執行と効果を検証し、当初の政策目標への達成見込みがどうなっているか、現状を具体的に棚卸しせよと訴え続けてきた。野党議員は国会でこの点に焦点を当てて質問し、政府から数字を回答させて追及せよと。残念ながら、国会でこの問題が質疑されることはなかったが、昨日(5/14)の電力制限令発動の政府決定の根拠となったところの、「需給検証委員会」の報告書の中には、殊勝にもと言うべきか、私が執拗に要求していたところの5794億円の対策に関する検証部分がある。「電力不足にならない」と言っていたのを、「電力不足になる」と政府判断を転換するのだから、国民に5794億円について説明するのは当然だ。マスコミは重要なこの問題について一切報道しない。5794億円の対策費の事実については、東京新聞ですら不問にしたまま伏せている。政府からの圧力だろう。

その「需給検証委員会」の報告資料のP.68からP.70に、該当する情報が載っている。分厚い資料の最終頁に近いところに、そっと隠すように静かに出されていた。これでは新聞記者も見逃すかもしれない。なお、PDFの閲覧に不慣れな読者に念のため操作法をガイドすると、このPDFはワードで作成したA4縦と、パワーポイントで作成したA4横の書式が不親切に混在している(官僚の姑息な手口で、要するに、情報を公開しながら一般読者に簡単にリーチさせない悪質な常套手段)。パワーポイントの頁を不具合なく見るためには、PDFの上のツールバーにマウスをポイントして右クリックし、メニューの最も下にある「その他のツール」を選び、その中の「右90°回転」にチェックを入れていただきたい。そうすると、PDFのツールバー上にアイコンが出現し、それをクリックすることで縦のページを横にして資料を読むことができる。P.68に「エネルギー需給安定行動計画 執行状況のレビュー(3月末現在)」という一枚の表があるので注目されたい。この表は、エネルギー環境会議・電力需給に関する検討会合が昨年11月に発表したところの、「今後の電力需給対策について」の資料P.10と対応する。読者は二つのPDFをPCの画面上に開き、二つの表を見較べていただきたい。恐るべき捏造と改竄があるのに気づくはずだ。問題は、供給増進策である「多様な主体が参加した供給力増強支援」の数字だ。

昨年11月の資料では、税金3301億円を計上し、幾つかの対策で642万kWを増強する計画になっている。ところが、今年5月の資料のレビューでは、同じ3301億円を投入しながら、計画ベースで233万kWしか増強されないという設定になっている。昨年の数字の3分の1だ。昨年の計画全体では、原発を全基停止した場合、一昨年夏のピーク時需要に対して全国で1656万kW不足するという前提で、需要抑制(2493億円)と供給増強(3301億円)で合わせて1622万kWを対策する内容だった。その中の供給増強分が642万kWだったのである。今年5月の資料(P.68)を見ると、表の数字の説明に「ピーク効果」という但し書きがあり、この表現は昨年11月の資料(P.10)にはないもので、何か官僚の佞悪なエクスキューズの含意と奸計があるものと推察される。しかし、ピーク時対策として642万kWを増強するとコミットしていた政府が、いきなり数字を233万kWに変更したことについては、資料の中で説明されていない。疑惑の差分は209万kW。原発2基分に相当する。この発電量は当初の対策全体(1622万kW)の13%を占め、数字として決して小さくない。予算で計画した数字が勝手に書き変えられたのは問題であり、野党はこの点を国会で質問して追及する必要がある。もう一つの柱である「需要家による省エネ投資の促進」の方は、数字を変えておらず、計画ベースで270万kWの目標(需要削減)がそのまま引き継がれている。

ただし、問題はこれだけでなく、今年5月の報告書では、計画に対する見込みが決定的に小さい不審点がある。需要削減については、270万kWの目標に対して見込みが196万kWしかなく、計画の73%しか達成できないという数字になっている。差分74万kW。2493億円を投入して、計画比73%の電力捻出しかできないということで、27%分の673億円をドブに捨てたという意味だ。官僚が国民を騙したということである。供給力増強の方は、3301億円を投入して、当初計画の642万kWに対して見込みは32%の203万kW。3分の1以下の達成見込みであり、68%分の2245億円をドブに捨てた勘定になる。原発3基分の未達。ノルマの3分の1しか達成できない営業マンなど民間企業なら一発でクビだろう。しかも、このノルマは自分で申告した予算ではないか。3301億円の税金(経費)の方はちゃっかり丸ごと消費してしまっている。ドブに捨てた税金を合計すると、需要抑制の673億円と供給増強の2245億円で全部で2918億円。実に3次補正で組んだ5794億円の半分以上を無駄にしてしまった。こんな出鱈目な予算の立案と執行があるだろうか。この予算とプログラムはピーク時対策として計画されたものだ。政府は、今夏ピーク時対策の見通しが、計画に対して513万kW(74万kW+439万kW)の大幅未達となった経緯と真相について、国民の前で謝罪して説明すべきだ。また、本対策(5794億円)の政策責任者である枝野幸男は、責任をとるべきだろう。

今回の記事では、政府の二つの報告書の中の5794億円の需給対策に注目して調べ、11月の数字が5月になると巧妙に改竄されている疑惑を取り上げたが、5月の「需給報告書」は、他にも怪しげな中身が多くありそうで、さらに掘り下げて吟味する必要がある。基本的に、今夏は電力不足になるという政府のストーリーがあり、それを合理化し正当化するための細工が満載された資料だ。そもそも、本来ならこうした資料を作成するときは、昨年7月と11月に政府が発表して確定した需給データに対して、ベースとなっている数字や考え方に検証を加え、修正するなら説明と共に修正してアップデートを構築するべきである。ところが、この需給検証委はそうした作業方式を採用せず、全く異なる枠組みに仕切り直して、火力はこれこれ、揚水はこれこれと数字を積み重ねている。昨年の政府発表の数字を一方的にリセットし、ゼロベースで需給を計算する方法で資料を作成してしまった。そうしないと都合が悪いからであり、需給逼迫という結論に持ちこめないからだ。なぜ、そのような検証方式になっているのか。実はこの検証委員会は、第三者委員会とは名ばかりで、完全に経産官僚が牛耳っている政府委員会である。メンバーを見るとよくわかる。副委員長は経産副大臣の牧野聖修だ。この男は堂々たる原発推進派で、4月の大飯再稼働の政局のとき、京都と滋賀に出向いて説得工作した担当者だった。委員長も内閣府の副大臣で、こんな委員会を第三者委員会と呼ぶのは事実誤認もいいところだ。

しかし、もっと注目するべきは、委員に松村敏弘が入っていることである。この男については、前にブログの記事で紹介したが、例の東電の特別事業計画策定の黒幕で、特別事業計画の下敷きとなった報告書を作成した「東京電力に関する経営・財務調査委員会」のメンバーだった。需給検証委員会も、東電経営財務委員会も、この男が経産官僚とグルで仕切っている。仙谷由人の指揮の下で。東電の特別事業計画とは、周知のとおり、電力料金を10%値上げして、柏崎刈羽を再稼働して、税金を大量に注ぎ込んで、本社も売却せず、今のままで東電の経営を再建しましょうという計画である。再稼働ありきの計画だ。その計画を策定した松村敏広が、この需給検証委員会にも周到に入り込んで、再稼働ありきの需給見通しの策動をしているのだ。


by thessalonike5 | 2012-05-15 23:30 | Trackback | Comments(0)
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