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<ホテル火災>12室の窓にベニヤ板 消火妨げたた可能性

毎日新聞 5月15日(火)15時0分配信

 広島県福山市のホテルプリンスで宿泊客7人が死亡し、3人が重傷を負った火災で、犠牲者がいた客室の窓は全てベニヤ板で覆われていたことが消防関係者への取材で分かった。火災の際、客室に煙がこもった要因になったうえ、消防の消火・救助活動を妨げた可能性もあるという。県警は、防火上の不備が被害を拡大した可能性が高いとみて、経営者側について業務上過失致死傷の疑いで捜査している。

 消防関係者などによると、ホテルは2階(木造と鉄筋)に12、3階(鉄筋)に6の客室があった。このうち、鉄筋部分の客室計12の窓には内側からベニヤ板が設置されていた。

 ベニヤ板は内装として設けられ、室内側に障子のデザインのクロスが張られていた。観音開きのように開くものと、固定されたものがあった。木造部分の客室にはなかった。

 福山市は防災査察で、建築基準法上の8項目で違法状態にあると認定、ホテル側に繰り返し改善を指導した。このうち、排煙設備の不備と内装の難燃材の項目で、このベニヤ板を問題視していた。ベニヤ板が妨げになって窓から煙が排出されず、燃えやすい材質だった。

 犠牲者7人は全員、煙を吸ったことによる一酸化炭素中毒で死亡した疑いがあり、ベニヤ板がある鉄筋部分の客室で倒れているのが見つかった。ベニヤ板のために十分に排煙されなかったり、消防が救助する妨げになった可能性がある。

 廊下には独立した電源で作動する非常用の照明がなく、消防隊員が視界を妨げられて客室にたどり着くのに手間取ったとされる。防火扉などの不備で煙が上階に早く立ち込めた可能性もあるという。

 ホテルの女性経営者(63)=福山市=は「金がなく改修できない」と市の指導に従わなかったという。消防が03年の査察で指摘した3項目の違反も無視していたとみられる。

 県警は経営者がホテルの防火態勢・構造が不十分と認識していたとみており、事情を聴くなどしている。県警と消防は15日も、現場検証を続けた。

【稲生陽、中里顕、黄在龍】

 ◇女性経営者、06年に代表に

 知人や近所の人によると、女性経営者(63)は数年前に亡くなった父親からホテル経営を引き継ぎ、06年6月にホテルを営む会社の代表に就任した。ただ、経営難などを理由に、昨年ごろからホテル売却を検討していたという。福山市の不動産会社によると、女性経営者はこれまで、提示された価格に納得できず、売却を決めなかった。

 父親は同市街で電器店を営み、数十年前にホテル営業を始めた。女性経営者は父親から事業を任されていたという。女性経営者は火災発生後、自宅を出てから戻っていないとみられる。近所の人は「おしゃれで、いつも服装がきちんとしている」と話した。【深尾昭寛、藤顕一郎】

 ◇ホテルプリンスが指摘された法律上の不備

 【消防法】

(1)消防用設備等の点検結果を消防に報告せず

(2)屋内消火栓の非常用電源がなく、火災時などに使えない可能性

(3)火災の避難訓練をしていない

 【建築基準法】

(1)階段や吹き抜けが防火扉などで密封できず、上階に煙が立ち込めやすい

(2)屋内階段の幅が規定(1.2メートル)より狭い

(3)廊下に独立した電源で作動する非常灯がない

(4)窓内側のベニヤ板が窓をふさぎ、排煙機能が不十分

(5)室内に難燃材ではないベニヤ板があった

(6)コンロなどがある室内の防火対策が不十分

(7)客室とそれ以外を、耐火壁などで分けていない

(8)300平方メートル以上ある2階を耐火・準耐火構造にしていない

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最終更新:5月15日(火)15時0分

毎日新聞

 
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