東京電力福島第一原発事故の警戒区域内で環境省が進める除染の受注業者を決める初の競争入札で、大手ゼネコン2社が1億円超の金額を示すなか、同省が予定価格を大きく下回る1650万円で契約を決めた。地元の建設業者からは「こんな低価格できちんとした除染ができるのか」との声が出ている。
初の発注となったのは、福島県楢葉町役場の周囲約4ヘクタールで、放射能汚染を清掃や高圧水で取り除く作業。5日に環境省で競争入札があり、前田建設工業1650万円、清水建設1890万円、大林組1億2300万円、大成建設2億7700万円――という応札額(消費税抜き)になった。
同省会計課によると、1650万円は、同省が事前に定めた予定価格(非公表)を大きく下回っていた。このため、この日の契約は見送り、翌日に前田建設工業から事情を聴いた結果、特に問題はないことを確認して契約したという。
これに対し、楢葉町の商工会長や復興計画検討委員会副委員長を務める渡辺征(ただし)さんは「線量が下がらなくても形だけやればいい、ということでは困る」と反発する。建設会社を経営する渡辺さんによると、面積や人手を考えると1億数千万円はかかるはずで、1650万円は「法外な低価格」という。「下請けには地元業者が入るだろうから、地元の雇用創出も考えて、環境省も適正な予算を確保してほしい」と語る。
業界関係者は「人件費だけでも、かなりの金額がかかる。今後も多くの除染事業が予定されており、(低価格の応札は)実績づくりのためでは」と話す。
前田建設工業は取材に「特にコメントすることはございません」(広報グループ)と答えている。(奥山俊宏)
福島第一原発の破綻を背景に、政府、官僚、東京電力、そして住民それぞれに迫った、記者たちの真実のリポート