2012年05月14日
楽聖少女・曲目解説
お久しぶりですね。まるきり放置状態でしたが、twitterで書くには長すぎるようなことを書くときだけこちらを使うというスタンスでやっておりますので、twitterをチェックしていただければと。
そんなわけで、

発売中です。
今回も作中に出てくる楽曲の解説でもって音源の売り上げに貢献できればと思います。例によって例のごとくネタバレの嵐なので、本編を読んでから解説をお読みください。
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今回も作中に出てくる楽曲の解説でもって音源の売り上げに貢献できればと思います。例によって例のごとくネタバレの嵐なので、本編を読んでから解説をお読みください。
○歓喜の歌 ベートーヴェン
温泉地の道ばたでルゥが登場時に歌っていた曲です。知らない人はまずいないであろう、第九の合唱のいちばん有名な部分の旋律ですね。ほとんど主和音と属和音だけでできている、すさまじくシンプルかつ力強い一節です。
歌詞はシラーの詩から採られているのですが、シラーの原詩がいくらか政治色をにおわせ、「身分制度を超えて喜び合おう!」的な訴えを含んでいるのに対し、ベートーヴェンはそういった部分をより普遍的な言葉に改変して曲に使っています。
なお、この旋律は第九交響曲が初出ではなく、合唱幻想曲ハ短調という作品ですでに使われたものです。過去作品の素材の再利用はこの頃の音楽家にとっては当たり前のことだったようです。みんなやっています。
○ピアノソナタ第8番ハ短調《悲愴》 ベートーヴェン
ルゥが演奏会の最後に弾いた自作曲です。重苦しい序奏はいかにもベートーヴェン、いかにも悲愴、という感じです。第二楽章は現代のアーティストが歌詞をつけてカヴァーしていたりで、どこかで聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
ですがこの曲でいちばん聴いてほしいのは第三楽章です(どうせ第一楽章と第二楽章はほっといても有名ですし)。この楽章、楽譜を見るとびっくりするくらい音符が少ないです。一音符たりとも無駄なく緻密に構成された、最も完璧に近いピアノ曲のひとつではないかと思います。
○天地創造 ハイドン
ハイドン師匠の最終必殺奥義です。相手は死にます。
○ピアノソナタ第8番イ短調 モーツァルト
モーツァルト邸を最初に訪れたときにモーツァルトが弾いていた曲です。モーツァルトがはじめて作った短調のピアノソナタですね(他にもう一曲ハ短調があるだけです)。モーツァルトの曲はほとんどが長調なのですが、ときおり思いついたように短調の曲を書き、これがまあ狙い通りというかなんというか必ず人気を集めます。交響曲第41番しかり、ピアノ協奏曲第20番しかり、ドン・ジョヴァンニ序曲しかり、レクイエムしかり。そんなわけでこのピアノソナタもたいへん人気の高い曲です。モーツァルトの短調曲はよく「悪魔的」と表現されるのですが、このピアノソナタ第8番はそれにいちばんあてはまるのではないかと思います。
○マタイ受難曲 バッハ
夜道でルゥとユキの会話に出てきた曲です。今でこそ宗教曲の最高峰と呼ばれてますが、長いわ難解だわで演奏機会に恵まれないまま百年間埋もれておりました。メンデルスゾーンが発掘していなかったらと思うとぞっとします。
僕はレチタティーヴォ(せりふやナレーションに節回しをつけて歌うやつ)が苦手でして、コラールとアリアだけ聴きたいなと思ってiTunesにこのマタイ受難曲を入れてレチタティーヴォ抜きでリスト編集してみましたが、いやはや魅力台無しでした。やはりレチタティーヴォも必要なのです。
○Roll over Beethoven チャック・ベリー
同じく、夜道での話に出てきた曲です。今回は、ちゃんとチャック・ベリーもベートーヴェンへのリスペクトをもってこの曲を作ったという証拠の動画をご紹介。
歌詞には他にチャイコフスキーも登場するんですが、こちらはなぜかあまり語られることがないんですよね……。
○十字架上のキリストの最後の七つの言葉 ハイドン
ハイドン師匠の最終滅殺奥義です。相手は転びます。
○魔笛(第二幕第七場) モーツァルト
実際にモーツァルトが魔笛で吹いた曲です。動画の1:15:00あたりからです。
このオペラ、脚本がまったく意味わからんことでも有名です。悪役からもらった魔法の笛が、なぜか善玉のボスが主人公に課す試練を突破する力になったりするのです。深読みする向きもありますが、いきあたりばったりで書いただけじゃないかなと僕は思ってしまいます。
○パガニーニの主題による狂詩曲 ラフマニノフ
ボナパルト交響曲の初演の前プロです。パガニーニのカプリースの主題を元に、ラフマニノフがピアノ協奏曲形式のべつの変奏曲に仕立てあげたものです。変奏曲なのに第一変奏の後に主題が出てくるという変わった構成をしております。闘いの後にユキとパガニーニが話している場面で流れているのがこちらの6:00あたりからの第18変奏です。ラフマニノフの真骨頂とも言うべき甘美きわまりない旋律で、ここだけ抜き出されてよく映画やドラマなんかで使われています。一聴しただけではどのへんが主題の変奏なのかさっぱりわかりませんが、楽譜にしてみるとたしかに、主題のI音をV音にして上下ひっくり返して長調にした音型でできているのです。
○交響曲第3番変ホ長調 ベートーヴェン
というわけで今回のテーマ曲です。解説は作中でさんざんしましたのでそちらをどうぞ。
○ドレスラーの行進曲による九つの変奏曲 ベートーヴェン
ベートーヴェンの処女作……かどうかはさだかではないのですが、ともかく最初に出版された作品です。先達の作品を主題にとって変奏曲にする、というのは、当時、作曲を学ぶ人間にとってはメジャーな練習方でした。ベートーヴェンはピアノ即興演奏による変奏曲の名手でしたから、この手の変奏曲をたくさん書いています。原点にふさわしい一曲ではないでしょうか。
奇遇なことながら、主題は葬送行進曲にも聞こえますね。
温泉地の道ばたでルゥが登場時に歌っていた曲です。知らない人はまずいないであろう、第九の合唱のいちばん有名な部分の旋律ですね。ほとんど主和音と属和音だけでできている、すさまじくシンプルかつ力強い一節です。
歌詞はシラーの詩から採られているのですが、シラーの原詩がいくらか政治色をにおわせ、「身分制度を超えて喜び合おう!」的な訴えを含んでいるのに対し、ベートーヴェンはそういった部分をより普遍的な言葉に改変して曲に使っています。
なお、この旋律は第九交響曲が初出ではなく、合唱幻想曲ハ短調という作品ですでに使われたものです。過去作品の素材の再利用はこの頃の音楽家にとっては当たり前のことだったようです。みんなやっています。
○ピアノソナタ第8番ハ短調《悲愴》 ベートーヴェン
ルゥが演奏会の最後に弾いた自作曲です。重苦しい序奏はいかにもベートーヴェン、いかにも悲愴、という感じです。第二楽章は現代のアーティストが歌詞をつけてカヴァーしていたりで、どこかで聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
ですがこの曲でいちばん聴いてほしいのは第三楽章です(どうせ第一楽章と第二楽章はほっといても有名ですし)。この楽章、楽譜を見るとびっくりするくらい音符が少ないです。一音符たりとも無駄なく緻密に構成された、最も完璧に近いピアノ曲のひとつではないかと思います。
○天地創造 ハイドン
ハイドン師匠の最終必殺奥義です。相手は死にます。
○ピアノソナタ第8番イ短調 モーツァルト
モーツァルト邸を最初に訪れたときにモーツァルトが弾いていた曲です。モーツァルトがはじめて作った短調のピアノソナタですね(他にもう一曲ハ短調があるだけです)。モーツァルトの曲はほとんどが長調なのですが、ときおり思いついたように短調の曲を書き、これがまあ狙い通りというかなんというか必ず人気を集めます。交響曲第41番しかり、ピアノ協奏曲第20番しかり、ドン・ジョヴァンニ序曲しかり、レクイエムしかり。そんなわけでこのピアノソナタもたいへん人気の高い曲です。モーツァルトの短調曲はよく「悪魔的」と表現されるのですが、このピアノソナタ第8番はそれにいちばんあてはまるのではないかと思います。
○マタイ受難曲 バッハ
夜道でルゥとユキの会話に出てきた曲です。今でこそ宗教曲の最高峰と呼ばれてますが、長いわ難解だわで演奏機会に恵まれないまま百年間埋もれておりました。メンデルスゾーンが発掘していなかったらと思うとぞっとします。
僕はレチタティーヴォ(せりふやナレーションに節回しをつけて歌うやつ)が苦手でして、コラールとアリアだけ聴きたいなと思ってiTunesにこのマタイ受難曲を入れてレチタティーヴォ抜きでリスト編集してみましたが、いやはや魅力台無しでした。やはりレチタティーヴォも必要なのです。
○Roll over Beethoven チャック・ベリー
同じく、夜道での話に出てきた曲です。今回は、ちゃんとチャック・ベリーもベートーヴェンへのリスペクトをもってこの曲を作ったという証拠の動画をご紹介。
歌詞には他にチャイコフスキーも登場するんですが、こちらはなぜかあまり語られることがないんですよね……。
○十字架上のキリストの最後の七つの言葉 ハイドン
ハイドン師匠の最終滅殺奥義です。相手は転びます。
○魔笛(第二幕第七場) モーツァルト
実際にモーツァルトが魔笛で吹いた曲です。動画の1:15:00あたりからです。
このオペラ、脚本がまったく意味わからんことでも有名です。悪役からもらった魔法の笛が、なぜか善玉のボスが主人公に課す試練を突破する力になったりするのです。深読みする向きもありますが、いきあたりばったりで書いただけじゃないかなと僕は思ってしまいます。
○パガニーニの主題による狂詩曲 ラフマニノフ
ボナパルト交響曲の初演の前プロです。パガニーニのカプリースの主題を元に、ラフマニノフがピアノ協奏曲形式のべつの変奏曲に仕立てあげたものです。変奏曲なのに第一変奏の後に主題が出てくるという変わった構成をしております。闘いの後にユキとパガニーニが話している場面で流れているのがこちらの6:00あたりからの第18変奏です。ラフマニノフの真骨頂とも言うべき甘美きわまりない旋律で、ここだけ抜き出されてよく映画やドラマなんかで使われています。一聴しただけではどのへんが主題の変奏なのかさっぱりわかりませんが、楽譜にしてみるとたしかに、主題のI音をV音にして上下ひっくり返して長調にした音型でできているのです。
○交響曲第3番変ホ長調 ベートーヴェン
というわけで今回のテーマ曲です。解説は作中でさんざんしましたのでそちらをどうぞ。
○ドレスラーの行進曲による九つの変奏曲 ベートーヴェン
ベートーヴェンの処女作……かどうかはさだかではないのですが、ともかく最初に出版された作品です。先達の作品を主題にとって変奏曲にする、というのは、当時、作曲を学ぶ人間にとってはメジャーな練習方でした。ベートーヴェンはピアノ即興演奏による変奏曲の名手でしたから、この手の変奏曲をたくさん書いています。原点にふさわしい一曲ではないでしょうか。
奇遇なことながら、主題は葬送行進曲にも聞こえますね。