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波紋広げる武雄市図書館のツタヤ委託計画 | ||
武雄市が市図書館の運営を民間に委託する計画が波紋を広げている。開館時間延長など利便性の向上に歓迎の声がある一方、「営利ではない図書館運営が委託に向くか。質の維持向上は大丈夫か」という指摘もある。貸し出し履歴の管理に懸念の声が上がり、雑誌・文具販売には同業者が不安を漏らす。運営計画の詳細決定はこれからで、6月市議会の議論も注目を集めそうだ。 計画によると来年4月から、レンタルソフト店「TSUTAYA(ツタヤ)」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に委託する。年中無休にし、開館時間を1日4時間延長。雑誌や文具販売スペースやカフェも設ける。貸し出しカードはCCCの「Tカード」を導入。本を借りてポイントがつく。 市はサービス向上と併せ、年1億4500万円の運営費を1割程度削減することを目指す。計画に合わせて改築も行う。 こうした計画に「夜遅くまで開いていれば仕事帰りに寄れて助かる」「コーヒーを飲みながら本が読める」「本を借りてポイントがたまる」と評価の声がある。 一方で「使い勝手はよくなるかもしれないが、図書収集や管理、企画など質の維持向上は…」という懸念もある。 全国の図書館で指定管理者制度を導入して運営委託されているのは8.6%(2010年度)。県内では鹿島市が導入しているが、委託先は市民参加型の任意団体で企業ではない。鳥栖市でも検討されたが実現しなかった。佐賀市は分館の東与賀館をNPOに委託していたが、昨年4月に直営に戻した。(1)司書の専門性確保と図書充実には継続性が必要(2)教育施設は行政が運営すべき(3)本館との連携-が理由だった。 白根恵子佐賀女子短大教授(図書館情報学)は「図書館は貸し出しだけでなく調査や相談機能も重要。職員には経験と専門性が必要で、経費節減が一つの目的の指定管理者では勤務態勢が短時間のシフト制になりがち」と指摘、運営の質低下を危惧する。 こうした根本問題とは別に、利用カードの個人情報管理を不安視する声も上がっている。貸し出し履歴は思想や信条、嗜好(しこう)も分析できる重要な個人情報。現在は返却と同時に記録を消去しているが、樋渡啓祐市長はこうした情報を活用して「別の本の推薦(リコメンド)もしたい」との意向を示した。ネットを中心に、民間が情報管理する危険性などを懸念する意見が相次いだ。 こうした意見に対し、樋渡市長は、履歴を残すかどうかを選択できる2種のTカードを用意できるよう、CCCと協議する考え。個人情報管理についても、だれが、どう扱うかを含めて話し合う。また、図書館の質については「必要な機能などアンケートを取り、その結果で司書の置き方や機能充実を考え、契約に反映させたい」と話す。 このほか、雑誌や文具販売への地元同業者の反発、歴史資料収蔵・企画展示室の移転構想への疑問なども対応課題。委託料や改築費用も未定で費用対効果も見通せない。市議会には公募でなく市長判断でCCCを選んだことへの疑問もあり、図書館運営委託問題はさまざまな解決課題を抱えている。 |
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2012年05月15日更新 |