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藤島 実
第25回 研究とメンタルトレーニング
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 北島選手が100、200メートル平泳ぎでオリンピック2冠を勝ち取る快挙を成し遂げた。日本中が沸き立ったこの快挙は、競泳で金メダルを夢見る子供を増やしたことだろう。金メダルに限らず何かに成功するためには、肉体だけでなくメンタルなトレーニングが重要になる。
人は、通常意識している以上の潜在的な能力を持っている。疲れて動けないと思ったときは、潜在的な力まで含めたトータルパワーの50%を使ったときで、実際には余力はたっぷり残っている。体に必要以上の負担をかけないようにするための脳からの抑制信号が体の動きを鈍らせているだけである。トレーニングを積むことにより、薬物に頼らずとも潜在的な力の大部分を出すことができるようになる。自分で自分の限界を作らない、それが自分を一段高いステージに持ち上げ、勝負に勝つチャンスを生み出す秘訣である。 200メートル平泳ぎのレースは肉体的に過酷であり、150メートルのターン(平泳ぎではターン直後しばらく水の中でもぐる)では下半身の穴に水が入る感触があるほどからだの力が抜けていく。勝つか負けるか、たとえ負けても接戦に持ち込めるかは、肉体の限界の感触があった後に、最後に気力を振り絞ることができるかどうかにかかっている。
昨年の大河ドラマ「宮本武蔵」の第一回で、小屋の中で盗賊に襲われた武蔵が、その場に居合わせた浪人とともに戦うシーンがある。浪人は最後まで瀕死の重傷を負いながらも戦い、死ぬ間際、武蔵に「生きろ、最後まで生き抜け、生きることを信じて戦え」といってこと切れる。
論文投稿間際にどれくらいの実験結果を出すことができるか、あるいは、問題に対しいかに正解に肉薄するかが研究上の勝負である。もうだめだと思っては決して目標にたどり着くことはできない。絶対に目標にたどり着くんだという強い意志を持ち、潜在的な能力まで100%出し切ってこそ成果はついてくるものである。
研究でも、学力だけでなく、メンタルなトレーニングが重要なのである。

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