グリーやDeNAはゲームを通じて利用者同士がつながるが、ミクシィは知人や友人同士が現実でつながることを推し進めてライバルと差異化を図ってきた。そこに実名での利用を前提とするフェイスブックが本格参入してきたことで、ミクシィの立ち位置が不明瞭になり、利用者の多くがフェイスブックへと流れる結果となった。
ミクシィも無策だったわけではない。2011年8月にはフェイスブックが提供していた企業や団体が無料でマーケティングに利用できる「フェイスブックページ」に対抗し、「ミクシィページ」を開始。また、「タウン構想」を発表し、コミュニケーションの場をプライベート空間とそれ以外に分ける「ホーム・タウン構想」を掲げるなど、懸命にフェイスブックとの違いを打ち出してきた。
しかし、ミクシィが圧倒的な開発力を持つフェイスブックと対峙していくのはそもそも無理がある。IPO(新規株式公開)で巨額の資金調達を予定しているフェイスブックが今後、日本市場への攻勢を強めてくるのは確実で、単独での生き残りはますます難しくなる見込み。今回の株式売却交渉は、同業他社との連携に活路を求める動きと言える。
揺れるSNS業界
消費者庁が「コンプリートガチャ」と呼ばれるソーシャルゲーム内の課金システムの規制に乗り出す方針であることが報じられ、SNS各社の株価が軒並み急落した連休明け。コンプガチャの扱いを巡るSNS各社の経営トップの発言に注目が集まる中、ミクシィは5月11日、2012年3月期の決算発表に合わせて経営体制の刷新を発表した。
ただ内容は「突然で、不自然としか思えない」(SNS業界関係者)ものだった。これまで笠原社長とともにミクシィを率いていた原田明典副社長が取締役に降格したほか、経営管理を担当してきた小泉文明取締役が役員から退き、顧問に就任する内容だったためだ。
ミクシィは「笠原社長に権限を集中させ、意志決定を迅速にするためだ」と説明するが、当の笠原社長は決算発表会の席上で、「原田氏には今後も施策などのアドバイスをいただく」「引き続きいくつかの案件を担当してもらう予定」など、つじつまの合わない説明を繰り返した。
突然の経営体制刷新を身売りに向けた地ならしと見る向きがある一方、経営幹部の降格や退任を受け、証券業界では「ミクシィ社内が混乱状態にあるのではないか」と指摘する声もある。もしこれが真実なら、身売りを含めた同社の行方はさらに不透明なものになる。