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福山ホテル火災 匿名発表に懸念の声

 7人が死亡した広島県福山市のホテル火災で、広島県警は犠牲者の身元を確認しながら氏名や住所を公表していない。現場がラブホテルとしても利用されていたことを理由に「プライバシーに配慮した」と説明するが、親子で宿泊していた例もあり、県警の判断に専門家からは「情報を操作される危険がある」と懸念の声が出ている。

 「身元が確認されても、名前や住所は言わない」。広島県警の担当者は、13日の火災発生当日から、非公表とする方針を報道陣に伝えていた。報道側は再三にわたり発表を求めたが、県警側は「特殊な現場」を根拠に匿名とする態度を崩さなかった。

 火災が起きたホテル「プリンス」は風営法に基づき営業。主にカップルを対象にしていたが、インターネット上ではビジネスマンや長期滞在客も受け入れると宣伝。犠牲となった親子も69歳の母親と44歳の娘で、一般のホテルと同じ感覚で利用していた可能性がある。

 氏名などの発表については、遺族らを中心に反発がある。1998年の和歌山の毒物カレー事件では、遺族宅を連日、多くの報道陣が取り囲む事態となったことが問題化。各地でも大きな事件や事故が起きると、被害者への集団的過熱取材(メディアスクラム)が発生することもあった。

 犯罪被害者支援団体の幹部は「ただでさえ心が傷ついている時に、追い打ちを掛けるような仕打ちを受けることになる」と指摘。氏名などの公表を被害者が選択できる仕組みを求める声もある。

 各警察の発表基準については、警察庁幹部は「各都道府県警が、それぞれの事件の性質に応じて個別に実名か匿名かを判断している」と話す。

 16人が犠牲になった2008年10月の大阪・難波の個室ビデオ店放火事件では、大阪府警が遺族の匿名希望の要望を伝えた上で、氏名や住所を明らかにした。

 01年9月に東京・新宿で発生した歌舞伎町ビル火災でも、警視庁は犠牲者の氏名を公表。ビルには風俗店が入居していたことから一部の新聞社は匿名報道としたが、多くの報道機関は実名だった。遺族の中には「プライバシーを侵害された」と反発があった一方、公表された情報をもとに取材した記事に「家族の姿を多くの人に知ってもらうことができた」と理解を示す声もあった。

 ジャーナリストの大谷昭宏氏は「プライバシーで最終責任を持つのは報道機関」と指摘。田島泰彦上智大教授(メディア法)も「第三者の立場ではない警察を通して被害者の声が伝わるということが一番の問題」と警鐘を鳴らす。(共同)

 [2012年5月15日0時7分]







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