日活創立100周年記念 特別企画『生きつづけるロマンポルノ』曾根中生監督登壇!初日舞台挨拶
■実施日:5月12日(土)
■場所:ユーロスペース
■登壇者:曾根中生監督
■司会:山根貞男(映画評論家)
1971年に製作を開始した“日活ロマンポルノ”は、88年までの17年間、様々な女性の美しさを描き、日本映画史とたくさんの観客の記憶に残る作品を残した。伝統のスタジオシステムと一流のスタッフに支えられた若手クリエイターたちが、一定の製作条件のもと自由に映画を作ることができる場として、神代辰巳、田中登、小沼勝、曾根中生、村川透、根岸吉太郎、池田敏春、金子修介をはじめとする多くの名監督を生み出すとともに、その作品の完成度の高さから現在でも国内外で高い評価を得ている。
今回、日活創立100周年記念して「生きつづけるロマンポルノ」と題する特集上映がスタート。リアルタイムで作品に接し、批評し続けてきた蓮實重彦氏、山田宏一氏、山根貞男氏を選者に迎え、“今、観るべき”日活ロマンポルノを32作品厳選。それに加え、観客の投票による1作品と、28年間劇場未公開の「白昼の女狩り」を加え計34作品を一挙公開する。
特集上映の初日となる5月12日(土)に、『天使のはらわた 赤い教室』などを手掛けた曾根中生監督が登壇し舞台挨拶を行った。昨年23年ぶりに姿を現した、ロマンポルノを支えた巨匠・曾根中生監督の姿を一目みようと押しかけた観客で、会場は満席となった。
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【曾根中生監督 コメント】
鈴木清順の下で助監督をしていたが、鈴木さんが『殺しの烙印』で日活をクビになった。自分のせいだと思うよ(笑)。そのことがあって誰も自分を助監督として使いたがらなかった。それでTVの助監督をやっていたら、会社がロマンポルノへ路線変更をして「時代劇を撮れるのはお前だけだから」と言われて『(秘)女郎市場』で監督デビューした。
どうも私はポルノを撮るのが下手なんですよね。だから『(秘)女郎市場』を見てもさっぱりポルノチックじゃないと思う。よく撮らせたなあと今でも思っています(笑)。
『殺しの烙印』の脚本は、田中陽造、大和屋竺と三人で書いたんだけど、『続・殺しの烙印』の脚本も書いていて、伊香保の旅館で三人で泊まり込んだんだけど、1週間泊まりこみで1行も書かないで帰ってきた(笑)。
調布の旅館で書いていると、朝、鈴木さんが来てチェックをするのでおっかなくて何か書いとかなきゃと書くんだけど、伊香保は誰もチェックする人がいないから、毎晩飲んだり、客が三人しかいないストリップ劇場に行って「あんた達も好きねえ」って言われたりして(笑)。
『(秘)女郎市場』は、(テレビ時代劇の)「大江戸捜査網」のセットをそのまま使ったんですよ。(『(秘)女郎市場』でセットを壊すシーンが多いのは)ちょうど今壊すのにも解体費ってかかるでしょ。神代さんの『赤線玉の井 ぬけられます』のセットも私が『昭和おんなみち 裸性門』で使って壊した。私は壊す係だったんです(笑)。
(『天使のはらわた 赤い教室』は監督デビュー7年で33本目の映画。本数の多さについて)当時、一本撮り終えるとプロデューサーが脚本を持ってきて、撮らないと怒られるんですよ。良い悪いなしで「これ撮れ」って。嫌な脚本が来ると私が直しちゃう。『天使のはらわた 赤い教室』も本当は男の後に女がついていってやり直すというラストだったけど、面白くないから(二人は別れるというシーンに)直しちゃって、(シナリオライターの)石井隆と喧嘩になった。
(蟹江敬三や益富信孝など、日活には当時独特な他にはない強烈な役者が揃っていたことに対して)男も裸になることって結構恥ずかしいことだと思うんです。覚悟を決めてやらなければできないことだと思う。その覚悟が芝居のなかにも出てる、表情に出ているということだと思う。(絡みのシーンの演技指導について)普段みんなやってることだから、ほっとけばやるだろうと(笑)。幼稚園じゃあるまいしそんな説明しないですよ(笑)。
【曾根中生監督について】
80年代後半に消息を絶って以来、一切行方が分からず、ヤクザに海に沈められた…など死亡説がささやかれていた映画監督・曾根中生。昨年8月末、大分県で開催された第36回湯布院映画祭で、公の場に姿を現し話題に!
曾根監督は、当時難関であった助監督試験に合格し日活に入社。鈴木清順監督らの助監督を経て71年からはじまった日活ロマンポルノの一時代を支え、日本映画界に数々の傑作を生み出してきた。現在はヒラメの養殖などを経て(ヒラメさんという愛称で地元で親しまれた)、大分県 で「エマルジョン燃料装置」等の研究を続ける。御歳74歳。
映画として不朽の名作といわれ高い、蟹江敬三出演の『天使のはらわた 赤い教室』や鈴木清順の影響を感じさせる『(秘)女郎市場』に加え、製作当時内容の過激さでお蔵入りし、劇場未公開だった衝撃の問題作にして、なぎら健壱主演の『白昼の女狩り』が28年間の歳月を経て、公開されることも決定している。
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日活創立100周年 特別企画「生きつづけるロマンポルノ」
2012年5月12日よりユーロスーペースほか全国順次ロードショー
©日活
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