投資先である福島県いわき市の超硬工具メーカー、タンガロイの新工場完成式典に出席するため、2011年11月21日に初来日した米投資家のウォーレン・バフェット氏。記者会見の後、日経情報ストラテジー誌のインタビューに応じた。
タンガロイの新工場を見学したバフェット氏は「最新の素晴らしい設備を見た」と語り、日本の技術力と運営効率の高さを強調。「オリンパスの不祥事があっても日本への投資意欲を弱めることにはならない。日本企業についていろいろな案件を紹介されており、良い投資先を探したい」と語った。さらに大震災から8カ月が過ぎて、「日本は世界に強さを示した」とし、被災したタンガロイがいち早く工場復旧に成功した例をあげて、日本企業の生産性の高さを称賛した。
一方、貧富格差の拡大についてデモ活動が続く米国について言及、「懸念はあるが、成長は続く」との見方を示した。バフェット氏は「所得に対する税金の割合という意味で、米国の富裕層は優遇されすぎていると思う。富裕層はもっと税金を払うべき」と貧富の格差に心配しながらも、「ただ米国の所得中間層は減ってはいない。米国経済に満足していない人もいるが、私の投資見解を変えるほどではない」と語り、楽観的な考えを強調した。
バフェット氏が最も心配するのは欧州経済だ。2008年のリーマンショックと、現在の欧州危機を比べて、「当時、私は米ゴールドマン・サックスや米GE(ゼネラル・エレクトリック)に大型投資をした。その頃、米国では大統領までも危機を防ぐためにあらゆる手段を惜しまないという態度だった。しかし、今回の欧州ではそれができていない」と欧州各国の政府の対応の遅れを指摘。その上で「それぞれの国が対応して、銀行にもっと資本を注入することが大切だ。私が欧州の銀行に投資することはない」と話し、信用不安を抑えるためには欧州各国の政府が協力して銀行の資本増強を急ぐべきと強調した。
バフェット氏の言葉からは日本経済への期待、米国への注視、欧州への不安がはっきりと読みとれる。
81歳のバフェット氏は21日朝に宿泊先の東京都内のホテルからヘリコプターでいわき市に移動した。夕刻のインタビュー中、バフェット氏は長旅の疲れも見せず、好物のチェリーコークを飲みながら笑顔で語り、日本の技術力が震災復興の大きな力になるとメッセージを送った。
(日経情報ストラテジー 酒井耕一)
[ITpro 2011年11月22日掲載]
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