'12/5/14
再三指導、改善されず 8項目「不適格」
火災で7人が亡くなった福山市西桜町1丁目のホテルは、現行の建築基準法が定める排煙設備がなく、窓に板をはめ込んだ部屋もあった。室内に充満した煙が、一酸化炭素中毒による犠牲を拡大させた恐れもある。市などは再三、改善を指導。ただ1967年の建築確認時の基準には適合していたため強制力はなく、危険な状況を許す結果につながった。
市によると、建築基準法に基づく最初の査察は1987年9月。天井から80センチ以内に設置を義務付けている窓などの排煙設備は、一つもなかったという。主にカップルが利用。複数の部屋の窓には、音や光を遮るためとみられる板がはまっていた。査察は昨年9月まで4〜8年間隔で計5回あったが、改善されることはなかった。
ホテルは、同法に基づいて広島県が定める防火関連の点検12項目のうち、排煙設備を含む8項目が当初から「不適格」だった。壁や天井の素材は燃えやすく、停電でも自家発電で廊下を照らす非常用照明はなかった。2階建ての木造に4階建ての鉄筋をつなげた構造も、法が定める耐火施設ではなかった。
「もっと強く指導していれば、改善されていたかもしれない」。市の担当者は13日、防火対策の不備が被害拡大を招いた可能性を認めた。
ホテルは60年に木造2階建て部分を建築。鉄筋4階建て部分は建築確認の翌68年に建て増した。ホテルのホームページは「福山で最安値を目指す」とアピールする。経営する楠妙子さん(63)は、報道陣の前に姿を見せないまま。知人を名乗る男性が玄関先で「過呼吸になってしまい、対応できない」と答えるだけだった。
【写真説明】全焼したホテル内部を調べる捜査員(13日午後2時30分、福山市西桜町1丁目)