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消防団員減少加速 被災で域外転居背景 岩手、宮城沿岸自治体

 東日本大震災で被災した岩手、宮城両県の沿岸部の自治体で、消防団員数の減少が加速していることが、河北新報社の調べで分かった。団員の自宅や職場が被災し、地域外へ移ったことなどが背景にある。新規入団者の確保も難しく、地域での消防団機能の先細りが懸念される。

 両県の26市町村の団員は震災直後と比べ計318人(2%)減った=表=。震災後に各市町村が把握した時点と、多くの消防団で人事の入れ替えがあったことし4月1日現在を比べた。
 団員が減ったのは19市町村で、6市町村は微増。宮城県女川町は人数を把握していないため対象から除いた。震災で犠牲になった団員254人の大半は、減少数に含まれていない。
 減員数が最も大きかったのは岩手県大船渡市の63人(5.9%減)。3月末に81人が一挙に退団した。大船渡消防本部は「震災で引退を先延ばししていた団員が退団し、市外への転居者も増えた。働く場もなく、新規入団者で減少幅を補いきれなかった」と説明する。
 岩手県大槌町(9.0%減)や宮城県東松島市(5.2%減)でも減少幅が大きい。両県では震災前の数年間、1%未満の微減で推移しており、震災が退団を加速させたことが浮き彫りになった。
 宮城県気仙沼市や岩手県陸前高田市は人事期が4月末以降のため、今回の集計時点で大きな変動はない。しかし気仙沼市は「団に籍があっても市外に出てしまい、連絡が取れない団員もいる」と明かす。
 震災前は宮城県内で最多の2293人が所属した石巻市は震災被害が大きく、昨年9月にようやく団員の数を把握した。犠牲者を除いて102人減り、ことし3月末までの半年でさらに25人が団を去った。
 石巻市消防団のうち、約220人が所属する牡鹿地区団では昨年10月、被災後初めての消防演習を実施した。演習は、実際に活動できる団員を把握する目安とされる。例年は8割が参加していたが、集まったのは5割程度にとどまった。前牡鹿消防団長で、4月に石巻市消防団長に就任した高橋和俊さん(64)は「多くが町外の仮設住宅に入っている。半分でもいい方だ」と受け止める。
 一方で「団員の減少や今後の高台移転に伴い、分団の再編が必要だ。ただ、復興の道筋が付かない段階で着手すれば、地域外に住む団員が退団するきっかけにもなりかねない」と頭を悩ませる。

◎組織を見直す時期

 <消防団の在り方を検討する総務省消防庁のワーキングチームメンバー、後藤一蔵東北福祉大兼任講師(宮城県美里町)の話> 仮設住宅の入居時期や立地という要素に加え、復興の遅れが消防団員の分散につながっている。数字に出ている退団者は実態よりはるかに少ない。全国的に減員傾向にあった消防団だが、震災で拍車がかかり、在り方を見直す時期に来ている。都市部は消防本部の人員・機能の増強、山間部などは消防団と自主防災組織との連携強化といった方向に改めるべきだ。


2012年05月12日土曜日


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